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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第四章『円卓編』
150/258

150 異空間収納

 気絶している王子と兵士達は、マル婆が変な魔導具を使って拘束してくれた。

 魔力の線が意思を持つように動き、自動的に兵士を拘束していく。

 何その魔導具、ちょっと欲しいんだけど。

 さすが勇者ともなると有用な魔導具を持ってるんだなぁ……。


「ソフィア王女、こいつらどうしよっか?」

「そうですね……ちょっと扱いに困りますね。お兄様が動いたという事は、国がそう決定してしまったという事でしょうし。彼らを裁く事は出来ないどころか、こちらが悪とされるでしょう」

「だよねぇ……貴族全部潰すしか無いかなぁ」

「それはおやめください。国が滅びます」

「滅んだ方がいいぐらい終わってるって事よ?」

「はぁ……ですよねぇ」


 はっきり言えばこのバカ王子よりソフィア王女が王となるべきだと思う。

 でも頭だけすげ替えても、政治を構成する貴族達がそのままじゃ国は立て直せない。

 私としては正直この国がどうなってもいいんだけど、ソフィア王女を見捨てられないぐらいには仲良くなってしまったからほっとけない。

 それに、王国の貴族は私としても潰しておきたいし——となると、帝国、教皇国、王国と戦う事になるのか。

 どう考えても無理なんですけどぉ!

 それに、拠点も問題あるよね。

 この家を拠点にすると王国の刺客が出入りし放題だし、そもそもこの国の貴族は他国と繋がってるみたいだから帝国や教皇国の刺客もフリーパスよ。

 王女と聖女と勇者(タケル君)を匿うには危険過ぎる。


「引っ越すしか無いかぁ……」


 突然の私の呟きに皆が反応する。


「主殿、そうする場合は姉君達へ連絡せんとじゃぞ」


 確かにキャサリン姉とリスイ姉に連絡を入れたいけど……、


「カク爺とマル婆はキャサリン姉達と連絡取れるの?」

「今は無理じゃな。とある島にいる事は分かってるが、普通は入る事すら難しい場所じゃ。魔導具ですら連絡出来ん」


 じゃあ書き置きでもしておく?

 いや、侵入者に私の形跡を見せたくないし、連絡は諦めるしかないか……。

 そもそも私達はどこへ行けばいいんだろう?

 獣人国か闇王国が妥当だと思うけど、人族もいるとあまり歓迎されなさそうだし。

 他に宛てなんてないから今は無理を承知でもこの2人に頼むしかない。


「カク爺、マル婆。困ってる人が複数人いるんだけど、勇者としてどこか匿う場所提供してよ」

「……はぁ。都合良く勇者を使う奴なんてお前ぐらいのもんじゃぞ」

「まったくじゃ。まぁ宛てが無い訳でもないがの」


 よし!言ってみるもんだ!

 下手に自分の力だけで何とかしないで、周りに頼るという事も大事だね。


「じゃあ荷物を纏めてみんなで引っ越しだ。ソフィア王女も一緒だよ」

「わ、私もですか!?」

「そりゃそうよ。この国に留まってても、教皇国に差し出されちゃうだけでしょ」

「そうですね。今は私の力ではどうにもできないし……分かりました」


 そこへ深刻な顔をしたタケル君が口を挟んだ。


「僕と聖女様を国へ帰せば事態は収束するんじゃないんですか?」

「……残念ながら、それじゃ解決しないよ」

「何でですか?」

「帝国と教皇国の目的があなた達じゃないから。厳しい言い方になっちゃうけど、あなた達はただの手段として使われただけ。仮に2人を国に帰しても、次の手札が切られるだけだと思うよ」


 タケル君は唖然としてたけど、聖女の方はその辺よく分かってるみたいで大人しかった。

 申し訳ないが今は身を潜めてもらうしか無い。

 彼らの出番は最後の最後になると思うから……。


 みんなが荷物を纏めていると、マル婆が一箇所に荷物を纏めろと言って来た。


「みんなの荷物を一箇所に纏めて、何をするの?」

「収納魔導具に纏めて放り込んでおくんじゃ」

「収納魔導具っ!?」


 それ!めっちゃ欲すいやつっ!!

 マル婆が左手の指輪を荷物に向かって翳すと、光に包まれた荷物が吸い込まれるように指輪の中へ入っていった。


「ま、マル婆……それいくらで売ってるの?」

「さぁのう?これ、自分で作ったんじゃし」

「作れる……だと!?」


 このファンタジー世界に於いて最も欲した能力である『異空間収納』が使える魔導具を、作れるぅ!?


「作ってくださいっ!!」

「えぇけど、材料は自分で取って来てもらうよ」


 やった!遂に私の手に異空間収納が!


「私でも集めるのに3年はかかったがのぅ」


 ……先は長そうだ。

 そして何故かマル婆は拘束した兵士達を外の庭の方へ移し始める。


「何するの?兵士達なんてここに残して行けばいいでしょ?」

「兵士達はそうじゃが、この家は持って行きたいじゃろう?」


 そう言ってマル婆が家に向かって魔導具の指輪を翳すと、光に包まれた家が指輪の中に吸い込まれた。

 地下の訓練場も一緒に吸い込まれたようで、ぽっかりと地面に穴が開いてしまっている。


「マジ……?」


 なんちゅう収納容量よ……。

 何年かかってでも材料集めるから、絶対に作ってもらおうっと!

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