142 特異点
薄暗い部屋の中に一つだけ置かれた玉座。
そこに座する女性こそが夜行の王なのかな?
そして隣に佇む不気味な笑みを浮かべた老婆。
どちらかと言えばこっちの方がヤバそうな感じがするんだよね。
「あら、いらっしゃ〜い」
「ヒッヒッヒッ。言った通り来おったじゃろう?破滅をもたらす特異点が」
2人共流路はそれほど強い訳でもなさそうなのに、妙な威圧感を持っている。
特殊なスキルでも持ってるのか、余裕の表情は取り繕ったものじゃないように見える。
師匠とミミィがいても、何故か確実に勝てるとは言えない気がするよ。
さすが王国に巣くう闇を束ねる者だね。
「それで、今日は何の用?本当に破滅をもたらしに来たのかしら、特異点ちゃん?」
「特異点って私の事?」
「ヒッヒッヒッ。世の理すら破壊できる者を特異点と呼ばずして何とする」
この老婆、私のスキルについて知ってる!?
どこから漏れたのかな?
一番可能性があるのは、ルールーを奴隷解放した時か。
って事は侯爵の関係者かも?
「ヒッヒッ。侯爵からは依頼を受けて占ってやっただけじゃ」
か、考えを読まれたっ!?
読心系のスキル……。
「読心系のスキルじゃなくて、お前さんが顔に出すぎるだけじゃよ。まぁ読心も出来ん訳じゃないがのぉ。ヒッヒッヒッ」
怖いんですけど、この妖怪老婆。
いや、もう一人の女性の方も異様な雰囲気で何か怖い。
あの師匠とミミィですらも不用意に踏み込まないし。
「とりあえず完全に殲滅する前に聞いておきたい事があるの。勇者と聖女を狙ったのは、誰の差し金?」
「それを知ったところでどうするの?」
「私の友人に仇なす者は、もちろん殲滅するよ」
「いくら特異点ちゃんでもそれは無理じゃないかしら……?」
「何故?」
「じゃあ逆に聞くわね。たかが友人の為に国と戦える?」
うーん、予想はしてたけどホントに国が相手かぁ……。
もっとも国全体を相手取る必要は無いんだけどね。
「頭だけ叩けば国相手でも何とかなるでしょ」
「くくく、面白いお嬢ちゃんだねぇ。部下に欲しいぐらいだよ」
さて、聞きたい事は聞けたし、この人達もお縄についてもらおうかな。
と思ったけど、女性はニヤリと笑みを深める。
「勇者と聖女、どうやら仕留めきれなかったみたいねぇ」
ちょっとちょっと、この人も読心できちゃうの?
「友人を失った人の眼じゃないからね。簡単に解毒出来ない特殊な毒だったんだけど、さすが特異点ちゃんといったとこかしら。あの毒を無効化されるんじゃ、お手上げね」
「ヒッヒッヒッ。敵に回した時点でこちらの負けよの。さて、儂の占いでもここらが引き際と出ておるぞ」
「じゃあ、そろそろお暇しようかしら」
「逃がす訳ないでしょ!」
地面を蹴って距離を詰めようとしたけど、途中見えない壁に阻まれる。
その壁は、どれだけ気を込めて殴っても、まるで全て無効化されているかのようにビクともしない。
「じゃあね、また会いましょう。次会った時に、その壁を壊せるようになってたら相手してあげるわ」
「ヒッヒッヒッ。次に会った時はお前さんの運命を占ってやろうぞ」
あの2人の余裕はこの見えない壁があるからか……。
師匠とミミィがかなり力を込めて殴ってるけど、まるで壊れる気配も無い。
なんらかのスキルなのか、それとも魔導具によるものなのか、全力で無いにしても師匠達の力ですら破れない壁って何よ?
何にせよ、防弾ガラスの向こう側でヘラヘラしてるあの笑顔は気に食わないなぁ。
私は持てる限りの魔力を注ぎ、ファンタジー破壊毒を生成して透明な壁に打ち込んだ。
伝説の武器であるぼっちさんですら刺さらない壁だが、毒が掛かった場所からガラスにヒビが入るように亀裂が広がっていく。
「え、うそ……」
「ヒッ。これが特異点の力かぇ……」
余裕ぶった笑顔を引き攣らせてやった。
しかし、結局壁が崩れる事は無く、その向こう側にいる2人は転移の魔導具で逃げてしまった。
それと同時に、初めから何も無かったかのように、透明な壁も跡形も無く消えた。
たぶん、どちらかのスキルで生成されたものなのだろう。
自由にあの無敵の壁が出せるとしたら、今まで会った中で最も手強いかも知れない。
ひょっとしたら、勇者であるキャサリン姉やリスイ姉でも苦戦するんじゃないかな?
敵の首領には逃げられちゃったけど、勇者と聖女を狙った背後はおおよそはっきりした。
帝国と教皇国——。
それって、私の力でどうにかできるものかなぁ?
この物語はファンタジーです。
実在するファンタジー破壊毒とは一切関係ありません。
ここまでで第三章『学園編』終了となります。
引き続き第四章『円卓編』をお楽しみください。
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