137 襲撃者の狙い
怪しい集団が観戦席から飛び降りて、一斉に動き始める。
初めは王族を狙った襲撃だと思ってたけど、どうも違うみたい。
何人かは、試合が終わって気絶しているAクラスの代表者達やレントちゃんを攫おうとしているようだった。
一応まだ王女が狙われる可能性もあるので、そこから離れられない私は、ファン○ルを生成してレントちゃんを抱えようとしている人を撃ち抜いた。
「ぐあっ!?」
ついでにAクラスの代表達を攫おうとしている人達も撃ち抜いていく。
「ぎゃっ!」
「ぐおっ!」
「ぐえっ!」
人攫いに割り振られている奴らは下っ端のようで、私の遠隔攻撃だけで簡単に制圧出来た。
しかし、それ以外の何人かは手練れがいるらしく、ファン○ルから射出される毒レーザーを躱しながら、私の方へ攻撃を仕掛けてくる者までいる。
避けると王女に攻撃が当たってしまうので、毒で盾を生成して弾いていく。
肝心の王女の護衛であるエンデさんは何か右往左往してるだけで、状況も良く分かってないみたいだから頼りにならないし。
まぁ王女の護衛には影から守ってる人達もいるから大丈夫だと思うけどね。
王太子の取り巻きもギャーギャー騒いでいるけど、一応あちらにも影の護衛がいるはず。
いるよね?
あの取り巻きだけじゃ王族の護衛としては心許なさ過ぎるよ……。
そして直ぐにあちこちから、戦闘らしき喧騒が聞こえ始める。
襲撃者達を相手に戦ってる人が何人かいる。
九曜と叢雲は、私が安全であると確認したようで、とりあえず様子を見てるみたいだ。
誰が敵か解らない状態で不用意に動くと、味方であるはずの人から攻撃を受けかねないからね。
襲撃者を見分けられる人は、たぶん私と王族の護衛ぐらいだと思うんだけど、学園の教師達が無駄に騒ぎ出したみたいで場は混沌とし始めていた。
なんとか早めにあの手練れ達を無力化したいけど……。
と思ってたら、手練れ達が急激に動きを変えて、一定の方向へ走り出した。
その先にいるのは……、
「あいつらが狙ってるのってまさか」
牽制する為に毒レーザーを連続で射出するが、何かのスキルに弾かれてしまって止めれない。
狙われているであろう人の前に盾を生成したが、その盾が瞬時に掻き消された。
敵の中にジャミング出来る奴がいる!?
「やばっ!」
私は即座に飛び出したが、凶刃は既に2人の人物の腹部を刺し貫いてしまっていた。
間に合わなかった!
せめて追撃はさせまいと襲撃者に蹴りを食らわせようとするが、大きく飛んで躱されてしまう。
その襲撃者達は何故かそのまま逃げようとはせずに、刺し貫いた人物の状態を観察するように離れたところからじっとこちらを睨んでいた。
「アイナ、毒だ。しかもかなりやべぇタイプの」
ぼっちさんが魔力で何か解析したらしい。
奴ら、毒による経過を見ているのか。
毒針使いの私の前で毒とは、やってくれるね。
私は直ぐに解毒に取り掛かる。
貫かれた腹部はすぐに塞がり、それを見た襲撃者達は少し狼狽えたようだった。
しかし、2人の体の色は青く変色して行き、終には心拍も呼吸も止まってしまう。
「勇者と聖女は討ち取った!撤収する!!」
襲撃者達は、私が動けなくしておいた者も連れて、全員が撤収作業に入ったようだ。
そして、その声を聞いた人達が俄に騒ぎ始める。
「勇者様と聖女様が!?」
「何が起こっている!?早く勇者様と聖女様の安否を確認しろ!」
「襲撃者を逃がすなっ!!」
周囲はまだ煙幕に包まれているので、はっきりと状況は飲み込めていないようだ。
私は九曜と叢雲に妖術の念話で指示を出す。
『隠密の術で聖女と勇者の体を家に運んでおいて。急いでね。10分経つと蘇生しちゃうから』
そして私は一旦王女の元に戻ると、現在の状況を説明した。
「勇者と聖女が毒でやられたみたい」
「ええっ!?それは本当ですか……?」
「おい貴様、適当な事をぬかすなっ!!」
王女に説明したら、護衛のエンデさんが噛みついてくる。
何も出来ずに右往左往してたのに、こういう時は強気なんだね……。
「たぶん最初から2人を狙ってたんじゃないかな。あと、あわよくば決勝を戦った優秀な生徒の拉致も考えてたと思う。何か心当たりある?」
「分かりません……。ただ、勇者様と聖女様を狙ったという事は、国家間の政治的な狙いがあるように思います」
「うわぁ、だとするとキャサリン姉とリスイ姉の助力は期待出来ないね。もちろん私にも手に余る案件だわ……」
「それにしても、あれだけの数の間者が国内に潜入しているなんて……警備を見直さないと」
間者かぁ……。
果たして外部からの潜入かなぁ?
「ソフィア王女、後で私の家に来れる?」
「……分かりました。早急に騒動を片付けて伺います」
なんか王女の護衛のエンデさんがずっと睨んでたのが怖いんですけど。
この物語はファンタジーです。
実在するファン○ルとは一切関係ありません。




