136 王族
試合が終わったので、とりあえずレオナさんの元へと駆けつけ治療する。
「あれ?試合は……?」
「終わったよ」
「も、申し訳ございません。私が油断したばかりに……」
「一応言っておくけど、勝ったからね」
「え?一人で三人倒したって事ですか?」
「そだよ」
「……まぁ、アイナ様なら出来なくはないですよね」
勝ったのに、なんでそんな微妙な顔してんの?
私一人の力じゃなくて、レオナさんが魔剣を折ってくれたりしたし、チームの勝利だと思うんだけど。
とりあえず、レオナさんは特に怪我もしてないので大丈夫そうだ。
私は次に、レントちゃんを回復させに向かった。
気を失ったままビクビクと痙攣し続けるレントちゃん。
私が契約魔術を毒で破壊しようとしたら、観戦席にいる九曜に預けておいた『性剣ぼっちさん』が勢いよく私の元へ飛んで来た。
あんまり目立つ行動はして欲しくないんだけどなぁ。
「アイナ、お前契約魔術を破壊しようとしてただろ」
「だって、そうしないとレントちゃんがずっと激痛に見舞われるじゃない」
「『契約不履行』の状態異常を『契約履行』にすればいいだけだぞ」
「あぁ、契約不履行って状態異常なんだ。でも私の毒で治したら10分で元に戻っちゃうでしょ」
「違う違う。お前が契約者なんだから、契約のスタンプを押した場所に手を当てて、状態を『契約履行』に戻すように念じるだけでいいはずだ」
へぇ、そうなんだ。
契約魔術はぼっちさんを契約魔術のスタンプにして行ったから、その辺のセキュリティを調整しておいてくれたみたいだ。
言われた通りに『契約履行』になるように念じたら、レントちゃんの痙攣が収まった。
なるべくなら契約はそのままにしておきたかったから、助かったよ。
偉い偉いとぼっちさんを撫でていたら、見た事の無い男の人が近づいて来た。
「やあ、君の活躍は観戦席から見させてもらったよ」
「……はぁ、どうも」
妙に雅びな服装で、どこかで見た事のあるような顔立ちの金髪金眼の青年が話しかけて来た。
その整った顔立ちはどことなくソフィア王女に似ていて、嫌な予感が私の中で駆け巡る。
「私はこの国の王太子、第一王子のエドワルド・メルヴェリアだ。君には私の側近になる栄誉を与えよう」
「嫌ですけど?」
やっぱり王族だったか。
ソフィア王女と違って、こっちは厄介な臭いしかしない。
いや、ソフィア王女もそこそこ厄介だったかな?
学園に通う羽目になったのもソフィア王女のせいだったし。
まぁ今となっては、それなりに学園を楽しんでるからいいんだけどね。
でもこの王子みたいにボンボンっぽさが漂ってる人って、取り巻きとかも面倒な奴が居そうだし、なるべくお近づきになりたくない。
案の定、王子の後ろから現れたインテリ眼鏡を掛けた男が、私に対して怒りを顕わにする。
「貴様、平民の分際で王太子殿下に無礼であるぞ!!」
言い方からして、明らかに貴族らしい男。
ほんとこの国の貴族って嫌いだわぁ。
まぁ、面倒事は望むところじゃないので、言い直しておきますか。
「失礼致しました。卑賤の身には余る程の光栄ですので、辞退させていただきます」
「王太子殿下のご厚意を断る気かっ!?」
拒否権無いんかい。
王族が強権発動するんなら、勇者の庇護下にある特権を使おうかとも思ったけど、今キャサリン姉達は留守にしてるんだよね。
私自身が徹底抗戦するしかないか……。
なんとなくいつか王族とも揉める気がしてたけど、遂に王国と戦う時が来てしまったようだ。
レントちゃんの稲妻で殲滅してもらおうっと。
そう思っていたら、
「エドワルドお兄様、アイナ様に不躾な真似はおやめください」
「む?ソフィア……」
ソフィア王女が来て王子に抗議してくれた。
いや、王子がこの場に来る前に止めてほしかったよ。
そして王子を止めに来た王女の護衛——緑髪のエンデさんにめっちゃ睨まれる。
レオナさんの替わりに新しく王女の護衛になったエンデさんは、何故か私をとても嫌っている。
余計な敵がこの場に増えてるんですけどぉ?
そもそも何で王族がこの闘技場に降りて来てんのよ?と思ったら、クラス対抗戦が終わったので表彰式を行う為に、学園や国のお偉いさん方が何人か降りて来るらしい。
私は別に表彰とか興味無いから帰りたいんだけど……。
即興で貴賓席みたいなものが作られて、そこには王国の賓客である聖女と勇者であるタケル君の姿もあった。
表彰台みたいな物も組まれている中、王女が王子に抗議していると、
「おいアイナ、何か不穏な動きをしてる輩がいるから気をつけろ」
ぼっちさんが何かの気配を感じ取ったらしい。
確かに言われてみれば、おかしな動きをしているクリティカルポイントがいくつか観戦席の方に視えた。
試合が終わって帰ろうとしている訳でもないのに席を立って、下の闘技場を囲むように動いてる。
王族の護衛——にしては、何か妙な殺気を放っている気がするし……。
逆か?王族を狙ってる?
王族には影から守っている護衛がいるから大丈夫だとは思うけど、念のため私はソフィア王女を守るような立ち位置に移動した。
「アイナ様、どうされました?」
王女がそう言った瞬間、各所で爆発音が鳴り、周囲に煙幕のようなものが立ち込めた。




