128 襲撃
何か嫌な予感がしたので、今日はレントちゃんとレオナさんを家に招いた。
部屋はいっぱいあるので一日泊まるぐらいは問題無い。
レントちゃんは寮生活なので、今日の活躍を面白く思わない人から攻撃される可能性もあるからね。
まぁ今のレントちゃんに勝てる人があの寮にいるとは思えないけど。
寮生はほとんどが平民で、貴族がいても貧乏な下級貴族だけなので、強いスキルを持っている事はほぼ無いから。
それでも、今夜は一人にするのはヤバいような気がしたし、レオナさんも狙われる可能性があると思う。
まぁ一番狙われそうなのは私なんだけど……。
でも、この屋敷の防衛設備なら余程の事が無い限り安全だとキャサリン姉は言ってたし、そもそも今ここにいる連中が束になったら、私でも勝つのは難しい。
元龍の女王、その配下、闇の王改め漆黒の王、妖術を使う東方出身の達人達。
戦闘出来ないのはユユちゃんぐらいだ。
そもそも勇者の家なんだから、不用意に侵入を試みようとすら思わない筈よね。
よほどの馬鹿でも無い限り……これフラグ?
「ふわぁ!アイナさんってお貴族様だったんですか!?」
「平民だけど?」
「平民はこんなお家に住めませんよ。大店の商人でもここまでの屋敷に住んでる人は居ないと思います」
「まぁ、元は貴族の家だったらしいからね。そもそもここを買ったのは私じゃなくて姉だから」
この家の家主は勇者であるキャサリン姉とリスイ姉だからね。
貴族の財力すら凌ぐお金を持ってるんじゃないかな?
夕食を終えて部屋でまったりしていると、屋敷の防衛網を掻い潜って侵入してきたクリティカルポイントが複数視え始めた。
防衛システムを機能させずに侵入するとか、結構な手練れだなぁ……。
私は予め家中の人全員と妖術の『伝心』を繋いである。
『敵が防衛システムを突破して来たよ。家の中で戦闘になるとキャサリン姉に怒られそうだから、玄関に集合ね』
『分かりました』
私達は部屋を出て、急いで玄関へ集まる。
外のクリティカルポイント達も玄関の前に集まって来た。
玄関の扉を開けると、外には黒ずくめのローブを纏った怪しい集団が居た。
「ええと、どちら様でしょうか?もう夜なんで明日にして貰えると嬉しいんですが」
私の問いかけに対して、口を開く者は居ない。
深く被ったフードに仮面のような物で顔を隠しているので表情は見えない。
何かじっとこちらを観察しているようだ。
と、不意に先頭にいる人が刃物のようなものを私目がけて投げてきた。
私はそれをぼっちさんで弾く。
「まぁ、武器で攻撃を弾く事もあると思う。でも、ちゃんと攻撃にも使ってくれよな」
ぼっちさん、それこの状況で言うこと?
その攻撃を皮切りに黒ずくめ達が一斉に動き出した。
主な狙いは私みたいだけど、レントちゃんやレオナさんにも攻撃が向かっている。
つまり、クラス対抗戦の代表者を狙っているという事だ。
襲撃日からしても、それしかあり得ないんだけどね……。
BクラスかAクラスの関係者、あるいはクラス対抗戦に関して何か利益を得ている者とか?
後者だとするとしっぽを掴むのは難しいかも知れない。
戦闘ははっきり言って一方的だった。
ヴァイスさんとヤスガイアさんのドラゴン2人は、人化していても外皮が頑丈なようで、そもそも攻撃が効かない。
某配水管工が無敵状態になっている様に、体当たりするだけで相手を蹴散らしていく。
そしてミミィが暗闇に乗じて、霧状になりながら次々に敵を無力化していく。
九曜達は妖術で攪乱しながら、連携して敵を倒していく。
私とレントちゃんとレオナさんは、分散しないように一箇所に固まって迎撃している。
主にレントちゃんが。
大半が水レーザーで打ち抜かれる中、それを勘で避けている者もいるので、やはりそれなりに手練れのようだ。
まぁ避けた先で私のファン○ルが打ち抜いちゃうんですけどね。
総勢30人以上はいたであろう黒ずくめ達も、どんどん数を減らしていく。
それに焦ったのか、一人が何かスキルを使って私達へ向けて特攻してきた。
レーザーを受けても止まらずに、捨て身で突っ込んでくる。
その黒ずくめの懐から見た事のある魔導具が取り出され、それが私達の方へと放り投げられた。
以前私を金属スライムのダンジョンへと転移させたあの魔導具だ。
あれを持ってるって事は、黒幕は金髪リーゼントか……。
私は一枚の布を取り出して、それで転移の魔導具を包み込んだ。
すると、魔導具は発動する事なく光を弱めてそのまま沈黙した。
「なっ!?魔導具が発動しないだとっ!?」
さっき水魔法使いが私の魔導具に巻き付けた封印布をパク……借りておいて良かった。
私の魔導具は封じれなかったけど、この転移魔導具はちゃんと起動停止してくれたし。
ありがとう水魔法使い。
名前はそのうち覚えられるといいな。
「さて、あなたの雇い主は誰なのか吐いてもらおうかな?」
「ふん、私の雇い主が公爵家のリーゼルト様だという事を言う訳が無いだろう。はっ……!?」
ちなみに私がファン○ルにしていた毒はファンタジー自白剤(毒)だから、攻撃を食らったら本人の意思に関係無く喋っちゃうよ。
しかも饒舌になってしまう副作用付き。
「くっ、我々が王国の闇組織『夜行』だと知られる前に退散せねば。はっ……!?」
へー、そんな組織が王国にあるんだね。
あの転移魔導具みたいなヤバいものを用意したのも、その組織かな?
「その組織の本部はどこにあるの?」
「組織の本部が貴族街の中心にある事を知られては拙い。はっ……!?」
うわぁ、普通そういう組織ってスラムとかに拠点を構えない?
完全に貴族が糸を引いてるじゃん。
この王国ヤバいね……。
さすがにこれ以上情報を漏らせないと思ったのか、動けなくなった黒ずくめ達はその場で自爆して跡形も無く吹き飛び、動ける者はそれに紛れて逃げてしまった。
私の平穏な生活の為に、クラス対抗戦が終わったら潰しに行こうっと。
この物語はファンタジーです。
実在するファン○ル及び自白剤とは一切関係ありません。




