127 三回戦 対Cクラス
「君達にはスキルランク詐称の疑惑が掛かった」
また来た、Aクラスの水魔法使い。
そろそろ名前を思い出さないとダメかな?
なんか美味しい食べ物っぽい名前だった気がするけど……エクレア的な。
「Cクラスとの試合の前に鑑定させてもらおう」
水魔法使いが持って来たのは、入学試験で使った石版。
レオナさんは元AクラスなのでAランクスキルで問題無いけれど、私とレントちゃんがFランクスキルにしては強すぎるということで疑いを持たれてしまったようだ。
という事で順番に鑑定してもらったけど、当然の如く2人揃ってFランクで表示される。
「なっ……何故だっ!?」
思惑が外れた水魔法使いは驚愕の表情を浮かべている。
「そ、そうか!その魔導具で詐称してるんだなっ!?」
「魔導具はあなたが持って来た布で封印してるでしょ?」
実際は封印されてないけどね。
「しかし、あの強力な攻撃はFランクスキルでは説明がつかない!絶対に詐称している筈だ!」
「そもそも、さっきの試合ではスキルすら使ってないけど?」
「そんな訳ないだろっ!」
レイアさんが使ってた『真実の宝玉』で嘘じゃないって証明したい。
誰か持ってないかなぁ?
「その方のスキルについては私が保証しましょう」
そこへ一人の男性が現れる。
黒髪に聖衣を纏った神職っぽい姿。
どこかで見た事ある人だ……。
「私がその方のスキル付与の儀式を行いました。間違い無くアイナ様はFランクスキルですよ。そして、そちらのレントさんのスキルについてもFランクであると教会に記録されています」
あ、あの時の毛根を甦らせてあげた神官さんだ!
確か名前はライエル神官だったかな?
そして、私の後ろにヴェリー軍曹が現れた。
「救毛……アイナ様のスキルについて疑われる可能性があったので、ハーゲンの連絡網でライエル神官を呼んでおきました」
さすが軍曹殿、冴えてるっ!
ライエル神官が私の方へやってくると、深々と頭を下げた。
「お久しぶりです、アイナ様。この程度では毛根のご恩に報いるには足りませんが、少しでもお力になれたなら幸いです。この次の試合でも、髪の御加護がありますように」
「ありがとう」
いやホントに髪の御加護があったね。
これからも失われた毛根達を救っていくと誓うよ。
もうネタが尽きたのか、水魔法使いはさっさと姿を消していた。
ルールを変更しようとはしてこないだけ、まだマシなのかも知れない。
とにかく、ようやく次の試合を開始出来そうだ。
「先鋒戦はFクラスの棄権とする」
当たり前のように審判が宣言した事により、またもやレオナさんの出番は無し。
勝てるから別にいいんだけど、何か釈然としないよね。
「両クラスの中堅は舞台へ」
私が舞台へ上がると、Cクラスの中堅が急に喚き出す。
「お、おいっ!その重り、偽物だろうっ!?」
あ、重り付けたまま普通に動いちゃった。
でも、確かに100kgにしては軽すぎるような気はしてたんだよね。
「じゃあ、本物かどうか確認してもらえる?」
私は足に付けられた枷を外して、Cクラスの中堅の方へぽいっと放り投げた。
「ふん、そんな軽そうに投げれるんだから偽物げぶっ!」
枷を片手で受け取ろうとしたせいで、取り損なって下敷きになっちゃった。
片足100kgだったから、合わせて200kgがCクラスの中堅の上にのしかかってしまっている。
慌ててどかしてあげたけど、既に白目を剥いて気絶してしまっていた。
しょうが無いなぁ、治療しといてあげよう……。
治療薬(蠢く多足の生物形毒)が口をこじ開けるように入っていくと、観客席から悲鳴が上がった。
そしてすぐにCクラスの中堅が復活する。
「あれ?ここは……」
辺りをキョロキョロ見回して、ようやく状況が飲み込めたらしい。
「こ、こんな重いものをつけて普通に動いていたのか……」
どうやら重りは偽物では無かったらしい。
私は重りを返してもらって装着すると、その場でぴょんぴょんと飛び跳ねてみる。
「私にとってはあんまり重くないんだよねぇ」
Cクラスの中堅は、私の姿を目を見開きながら凝視すると、すぐに棄権を宣言した。
なんで?
そして舞台を下りていくCクラスの中堅に、同クラスの人達が声をかける。
「お、お前体は大丈夫なのか?」
「なんか違和感とかないか?」
「ん?どうしたんだ?戦う前に棄権したんだから、別に何ともないが」
「で、でもお前の体の中に……」
「おい、気付いてないなら知らないままの方がいい」
「そ、そうだな。悪かった、忘れてくれ」
「何だよ?気になるだろ、教えてくれよ」
何やら揉めてるようだけど、あれはただの治療薬だよ。
蠢く多足の生物形毒だけど。
そして、大将戦。
当然の如くレントちゃんの圧勝で、一日目のクラス対抗戦は終了した。
次のBクラスとの試合は明日行われるらしい。
帰り際、Bクラスのリーゼント達がこっちをめっちゃ睨んでいた。
この物語はファンタジーです。
実在する治療薬とは一切関係ありません。




