表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
125/258

125 一回戦 対Eクラス

 ミミィが何かやらかさないかちょっと心配。

 キャサリン姉達も私がやらかしそうな時、こんな気持ちだったのかな?

 今後は自重しよう……と思ったけどたぶん無理かな。

 やられたらやり返しちゃうもの。


 そういえば観戦客の貴族達の中に、例の侯爵はいるのかな?

 ルールーを奴隷として使っていた侯爵。

 彼女を奴隷から解放した事で私を狙っていると思うんだけど、私が王国に入ってからも特に動きは無いのよね。

 獣王国付近を彷徨うろついてた私を見つけたぐらいだし、たぶん私の所在も掴んでるだろうに。

 やっぱり勇者の庇護下にあるってのが効いてるのかな?

 でも悪巧みする人ってそういうのも何とかしようと動くイメージだったけど、逆にそれで手を引くような狡猾な人物なら、尚のこと警戒しないといけない気がする。

 あと、貴族と言えば公爵家のリーゼントもあれ以来絡んで来ないし。

 私の伯父の伯爵や、九曜達を奴隷にしていた伯爵も含めて、ホントこの国にはろくな貴族がいないね。

 そんな奴らが観戦する中での試合はちょっと憂鬱だなぁ……。

 まぁいざとなったら殲滅するだけだけど。


「勝者Fクラスっ!!」


 なんてアレコレ考えてたら、いつの間にかレオナさんの試合が終わってた。

 Eクラスがどんなスキルを使うのか見たかったのに……。


「次、両クラスの中堅は舞台へ」


 試合は3対3の星取り戦形式なので、各先鋒同士、中堅同士、大将同士が戦う。

 そして次は中堅である私の番だ。


「アイナ様、ほどほどに……」

「ちょっとぉ、今から戦う人に掛ける言葉じゃないよね?」

「Eクラス相手に全力でやったらイジメですよ」


 レオナさんの激励(?)は何とも釈然としない。

 もちろん端から全力でやるつもりなんて無いよ。

 変に目立って王族や貴族に目を付けられたくないからね。

 私が舞台に上がると、対戦相手のEクラスの選手が苦々しくこちらを睨んできた。


「元Aクラスの生徒を使って一勝したぐらいでいい気になるなよ。残りはEクラスが二勝して終わりだ」


 私がほーんって感じで聞いてたら、対戦相手のこめかみに青筋が浮かぶ。

 そして試合開始の合図と同時に、怒りにまかせて魔法を発動してきた。


「石礫を食らえっ!!」


 土属性の石を生成して飛ばす魔法。

 3つの石礫が真っ直ぐ飛んでくるだけ。

 え?それだけ?

 私は3つとも軽く避けた。


「なっ!?避けたっ!?」


 Fクラスってそんなにも舐められてるの?

 真っ直ぐ飛んでくるだけの石なんて、スキルを使わなくても躱せるでしょうに。

 先日のAクラスの水魔法使いも単純な魔法を避けたら驚いてたっけ。

 今回の石礫は、あの水魔法使いの水玉より遅いので、何の問題も無く避けれた。


「これぐらい避けれるでしょ?」


 私は全く同じ魔法を発動して、石礫を対戦相手に向けて飛ばした。

 全部当たった……。

 なんでやねん。


「気絶している……勝者Fクラスっ!!」


 寸分違わず同じ魔法を使ったのに、自分の魔法を避けれないって事?


「アイナ様、魔法使いは肉体的に弱いので、クラス対抗戦ではほぼ先手必勝の戦いになります。戦場では前衛で盾になるスキル持ちがいて安全に魔法を撃てるので、そもそも身体能力を鍛えるという発想が無いんですよ」


 私は基本ソロだから格闘込みの魔法の使い方してたけど、普通はそうじゃないのか。

 Aクラスの水魔法使いも避けられると思ってなかったから、反撃されてびっくりしたのね。

 避けられたくないなら範囲攻撃しなきゃダメよ。

 まぁ、範囲攻撃しても私には効かないけど……。


 何にしても、とりあえず一回戦突破だね!

 と思いきや……


「Aクラスからの助っ人なんて反則だっ!!」


 Eクラスの大将が騒ぎ出した。

 それに呼応するように、DクラスやCクラスの人達も騒ぎ出す。

 Bクラス以上は様子見しているようだ。

 Cクラスには貴族も多少含まれているため、観戦席の保護者らしき人達まで騒ぎ出した。


「じゃあ、先鋒は負けた事にして大将戦でいいよ」


 私が言うと、呆気にとられた顔をするEクラスの大将。

 そして、次の瞬間にはニヤリといやらしい笑顔を見せた。

 まるでもう勝ったかのような表情だ。

 レントちゃんがビクついてるのは大勢の人の前に出るのに緊張してるだけだと思うよ?


「よ、よろしくお願いします……」


 レントちゃんが舞台に上がり自身無さげに挨拶をすると、相手は更に喜色を浮かべる。

 そして試合が開始されると、Eクラスの大将が手に持つ武器を高く掲げた。

 刃を潰してある剣だが、当たればそれなりに痛い——レベルが低い人の場合だけど。

 一足飛びにレントちゃんとの距離を詰めて剣を振り下ろすが、


「ひゃっ!」


 怖がって出したレントちゃんの腕に簡単に弾き返されてしまう。


「はぁっ!?」


 その後、何度も剣を叩きつけるが、全くダメージを与えられない。

 そりゃあ無理よ。

 ただ叩きつけてるだけの鉄の棒で魔王にダメージ与えられる訳ないでしょ。

 特に痛みも無い事に安心したレントちゃんが、上空の水分を集めて圧縮した水球を作り出す。

 その水球の一部が開放されると、Eクラスの大将の足に向かって水のレーザーが打ち出された。


「ぐああっ!!」


 一瞬で足を打ち抜かれて、その場に膝をつく。

 しかしレントちゃんのレーザーはその後もEクラスの大将の手足を打ち抜き続ける。

 そのままダメージが蓄積され続けて、ついには動かなくなってしまった。


「し、勝者Fクラス!!」


 私達が一回戦突破を反論しようがない形で決定したが、場内には歓声など一切無く、只々静寂に包まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ