123 弱点
驚愕した顔のままフリーズしてしまったレオナさんは、再起動するまでほっとこう。
それよりも、
「ミミィ、無闇にその辺の人をヴァンパイア化しちゃダメでしょ。討伐されちゃうよ?」
「いやな、いつもは絡んでくる奴なんぞ魅了すれば大人しくなるんじゃが、あの変な髪型の奴らは何故か魅了が効かなかったんでな。面倒だから眷属にしてしまおうかと……」
「面倒で眷属にしちゃダメでしょーが……」
それにしても、ヴァンパイアロードであるミミィの魅了が効かないって、あのモヒカンズの三人って実は凄いの?
レントちゃんとミミィの防御反射で骨折してるぐらいカルシウム不足みたいだけど……。
「そもそも何でミミィは冒険者ギルドにいたの?見た目弱そうだから絡まれちゃうでしょうに」
「見た目弱そうはお前もじゃろ。妾は冒険者として金を稼ぎながらあちこち放浪してたんじゃ」
『この地を守る義務がある』とか言ってたのに、闇王じゃなくなったから放浪出来るようになったのかな?
私達が話していると、ヴァイスさんが近寄って来た。
「ミミィって、闇王のミミィ?久しいわね」
「うん?お前見た事あるな。確かヴァ……ヴァルスだったか?」
「何よその光属性魔法っぽい名前は」
「ああ、ヴァイブだったか」
「そんな振動しそうな名前じゃない。ヴァイスよ」
「ああ、そうじゃ。なんで龍の女王がここにおる?」
「私はもう龍の女王じゃないわ。龍王の座を乗っ取られたのあなたも知ってるでしょうに」
「そういえば前の円卓で変な奴が来てたな。あれ龍王じゃったのか」
さすがミミィ、適当に生きてるね……私も人の事言えないけど。
円卓って何なのかな?
ミミィとヴァイスさんの会話を聞いていると、レオナさんが復活して来た。
「龍の女王……闇王……そしてアイナ様がヴァンパイア……どこからツッコんだらいいんですか?」
「ボケじゃないからツッコまなくていいよ」
「ボケじゃないなら尚更ちゃんと説明して欲しいんですけどぉ?」
どう説明したらいいのかな?
「ヴァイスさんは先日湖にいた白いドラゴンで、私が龍王の支配から解放したの。そんでミミィは私をヴァンパイアにしようと噛みついて来た人で、私はそれに抵抗してヴァンパイアになったの」
「……全く意味が分かりません」
まぁ無理に理解しなくていいと思うんだけどね。
あ、そうだ。
レオナさんをパワーアップする手段があるじゃん。
「レオナさんもヴァンパイアにならない?」
「なるわけないでしょうが!」
「えー、ヴァンパイアになったら魔力もアップするし寿命も延びるし、良い事だらけじゃん」
「そうじゃぞ。めっちゃ強くなるし、巨大化もできる。それにヴァンパイア仲間が増えるのは良い事だ」
「絶対嫌です」
ミミィも勧めてくれたけど、レオナさんは頑として首を縦に振らなかった。
やっぱり普通は別の種族になるのって抵抗あるのか。
私は最初から獣人の遺伝子を持ってたっぽいからか、あんまり忌避感無かったけどね。
「レオナさんはヴァンパイアの何が嫌なの?」
「だって、夜しか活動出来なくなるし」
「私とミミィは昼でも活動してるけど?」
「そ、そうでした……。じゃあ十字架とかニンニクとかの弱点が」
「そんな弱点あった?」
「無いのぅ」
「な、無いんだ……。あっ!あと白髪とか見た目が変わっちゃうし」
「髪は色変えれるから。ほら、黒髪」
「い、色が変わった……。え?って事は別にヴァンパイアになってもいいのかな……?」
「人族の娘さん、騙されちゃだめよ。ヴァンパイアになったら普通に討伐対象になるからね」
「確かにっ!」
ヴァイスさんの言う通り、ヴァンパイアだってバレたら討伐されちゃうよね普通。
私はキャサリン姉達に見逃してもらってるから大丈夫だけど。
「と、とにかくヴァンパイアにはなりませんからねっ!!」
そりゃそうよね。
しょうがない、レオナさんのパワーアップは諦めるか……。
「アイナ様、そろそろ夕食にしようと思うのですが」
ヴァイスさんの一声で話し合いは終了した。
と、そこでミミィが私の袖をクイクイと引っ張る。
「アイナ、妾今無一文じゃから泊めてくれ」
「前にミミィの館に泊めて貰ったし、もちろんいいよ。部屋いっぱい余ってるから、何なら住んじゃう?」
「いいのか?」
「うん。但し、家の人達の血を吸っちゃダメだからね」
「わかっとるわい。これで屋根があるところで寝れるぅ!」
「そういえば冒険者ギルドで床に突っ伏したりしてたし、寝る前にちゃんとお風呂は入ってね」
「ヴァンパイアは水が苦手なんじゃが……」
「弱点あったんかい!」
この物語はファンタジーです。
実在するヴァンパイアとは一切関係ありません。




