115 眼福
白いドラゴンは私に向かって頭を垂れる。
『解放していただき、ありがとうございました。このご恩は必ずお返し致します』
龍王の支配から完全に脱したので、もうこちらを襲う気はなさそうだ。
安全を確認したので、私は擬似月を消して元に戻る。
もちろん服は即座に生成した。
「そういえばトカゲの尻尾って、切ってもまた生えてくるよね?」
『それが何か……?』
「ちょっと聞いてみただけ」
『……食べようとしてるでしょ?』
「さて皆を起こして帰るとしますか。結局レベルアップできなかったなぁ」
『話を逸らさないでぇっ!!ご恩は返すけど、食べられるのは嫌あああああぁっ!!』
話せるドラゴンを食べるのはちょっと抵抗あるので、野生のドラゴンで養殖できるかなって思っただけだよ。
いや、ホントに。
「それで、ドラゴンさん……えっとヴァイスさんだっけ?これからどうするの?」
『出来る事なら現龍王を討伐して、全てのドラゴンを支配から解き放ちたいですが、私一人では不可能でしょう。ひとまず身を潜めて機を窺います』
「そんな大きな体で身を潜めるって大変じゃない?あ、でも湖の中とかに棲めるんなら大丈夫か。○ッシーみたいだね」
『○ッシーが何なのか分からないですが、体の大きさは変えられますよ?』
そう言ってヴァイスさんは体中を発光させて、みるみる小さくなっていった。
そしてそこに現れたのは白髪で驚く程に肌も白い全裸の美女……服を着ろっ!
「眼福」
「眼福」
九曜と叢雲に、即座に聖属性の光○ルスを放ったのは言うまでも無い。
おや?ぼっちさんも前世男だったのに反応しなかったのは何で?
「俺は無機物だからな。女の裸なんて見てもなんも感じ無いわ」
そうなんだ。
無機物って大変そう……。
「何を言ってるの『のけものの槍』——じゃなかった『ぼっちさん』。あなた100年前、おっ○いパブで女の胸に自ら挟まれに行ってたじゃない」
「ぼっちさん……」
「ち、違うっ!無機物になっても前世の性欲みたいなものが甦るかなって思って試してただけだっ!!」
「武器名を『性剣ぼっちさん』に改名します」
「ま、待てアイナっ!!ぎゃああああああっ!!ステータスの名称が更新されたあああああっ!!」
ひとまずヴァイスさんには私の毒で作った服を着せてあげた。
あとは順次睡眠状態と○ルス状態から回復させていく。
「あ、あれ?ドラゴンは?」
「この人が倒してくれたよ」
タケル君が寝ぼけてるかのように聞いてきたので、ヴァイスさんが倒した事にしておいた。
実際はドラゴン本人だけど……。
私の大猿化を知られる訳にはいかないからね。
「ヴァイスさん、行く宛てが無いならウチに来る?人型なら家に入れるだろうし、部屋もいっぱい余ってるから。しかも勇者の保護付き」
「ゆ、勇者と同居されているんですか!?」
「まぁ姉みたいなもんかな」
「アイナ様はいったい何者なんですか……」
私の立ち位置って何者なんだろうね?
レオナさんに言わせると、一応勇者の弟子らしいけど。
とりあえずめっちゃ拗ねてるぼっちさんを宥めて、なんとか無事帰路につくことが出来た。
ヴァイスさんはぼっちさんに乗って、落っこちそうになる程めっちゃはしゃいでた。
自分でも空飛べるのに、なんでそんなにテンション上がってんだか……。
レオナさん達と別れて家に戻ると、何故か再びキャサリン姉がこめかみに青筋を浮かべて仁王立ちしていた。
「アイナちゃ〜ん?なんか学園の裏山の方で大きな爆発音があったらしいんだけど、もちろん知ってるわよねぇ?」
ドラゴンブレスを相殺した時のガス爆発ですね、分かります。
「ご、ごめんなさい〜」
その後ヴァイスさんを連れて来た事も含めて、またまたたっぷりとお説教をいただきました。
勇者の事とか聞きたかったのに……。
この物語はファンタジーです。
実在する○ッシー及び○ルスとは一切関係ありません。




