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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
114/258

114 自由

 この世界の月は、中心部は白いが、周りが仄かに青く発光しているように見える。

 ひょっとしたら前世の月とは違い、月面に大気が存在しているのかも知れない。

 そして、何故か私はあの青い光が視界に入ると、心臓の鼓動が早まって体に変化が現れ始める。

 白銀の体毛に覆われて、体が急激に巨大化していく。

 顔も凹凸が顕著になり、猿の顔へと変貌する。

 本来満月が出ている時しかできない『大猿化』を、毒針で『擬似月』を作りだす事で何時でも出来るようになった。

 だが、服が破けてスッポンポンになる問題が解決出来ていない。

 一応体の各所に伸びる素材で針を格納してるから、元に戻った時に服を生成すればいいだけなんだけど、次に睡眠をとる前にちゃんとした服を調達しないとなのよね。

 ミミィが着ていた巨大化に追従して伸びる服が欲しいんだけどなぁ……。

 とりあえず、武器問題だけは解決している。

 以前は巨大化したら針が持てなくなるから、近くにある尖った木なんかで代用していた。

 しかし今は、ぼっちさんが大猿のサイズに合わせて巨大毒針になってくれるから、大猿になっても問題無く毒針が使えるのだ。


「おいアイナ、あいつ逃げようとしてるぞ」

『早く私を捕まえてください。龍王があなたの存在に気付いたので、私を撤退させようとしています』


 さすがに大猿になっても、飛んで逃げられたら追いつけないもんね。

 私はしゃがみ込むと、両足に目一杯気を集中させる。

 極限まで高まった気を解き放ち、全力でドラゴンに向かってジャンプした。

 逃げようと身を翻していた白いドラゴンに激突し、そのままドラゴンの翼をわしづかみにする。

 そして、力まかせにその翼を引き千切った。


「ギャオオオオオオオッ!!」

『痛ああああああああっ!!』


 態々わざわざ念話で痛みの情報を送って来ないでよ。

 覚悟したとか言ってたのに、めっちゃ痛がってるし。


『痛いものは痛いんですよ。もう少しお手柔らかに……』


 そっかぁ、痛いのかぁ。


「だが断る」

『ええっ!?非道いっ!!』


 だって手加減したら勝てそうにないもん。

 おっと、鎌首もたげてドラゴンブレスの体勢に入ってるね。

 ブレス対策には可燃性ガス(猛毒)。

 ガスの塊を高速でドラゴンの口に向かって飛ばすと、ドラゴンがブレスを吐いたと同時に大爆発が起きた。

 かなりの衝撃波が周辺の環境を破壊していく。

 ドラゴンの顔面は吹き飛んでいなかったが、かなりのダメージを受けたのかフラフラとしている。

 そこへ追撃して、気を込めた拳を打ち込む。


「グギャアッ!!」

『痛いいぃっ!!』


 私は八の字を描くように体を振って、その勢いを利用しつつ左右から拳を打ち込んでいった。

 その度に白いドラゴンの顔は跳ね上がって、頑強な鱗も徐々に破壊されていく。


「ギャウッ!!グギャアッ!!」

『いだっ!!いだいぃっ!!』


 だからいちいち念話送ってくるなってば。

 最後に毒針の先に麻痺毒を生成して、白いドラゴンの逆鱗に打ち込んだ。


「グギャアオオオオッ……!!」


 事切れたように、白いドラゴンは力なくその場に突っ伏した。


『ちょっとぉっ!!早く回復してぇっ!!心臓まで麻痺しちゃううううっ!!』


 あれ?やばっ!魔力込めすぎた……!?

 ドラゴンは毒耐性強そうだから、加減が分からなくて超強力な麻痺毒にしちゃったのよね。

 急いで回復しなきゃ!

 目一杯に魔力を注いだ回復薬(毒)を、同じように逆鱗に打ち込む。


『あばばばばばばっ……』


 ん?間違えちゃったかな……?

 白いドラゴンは、悪霊が取り憑いた人のようにのたうち回ってる……。

 一番効くクリティカルポイントが逆鱗だったんで、そこに打ち込んだんだけど?


『こんなに酷い苦痛を味わう事になるなんて聞いて無いぃ……』

「はいはい。それで、パスは切れたの?」


 もぞりと起き上がる白いドラゴン。

 念のため警戒は解かないで、拳に気を込めたままだ。


『パス……切れてる……!?やった、自由になった!私、自由になったああああぁっ!!』


 どうやら無事ミッションコンプリートしたみたいだ。

 しかし、同時に美味な食材を失ってしまった事になる……。


『なんか悪寒がするんですけどぉ……?』

この物語はファンタジーです。

実在する可燃性ガス及び麻痺毒及び回復薬とは一切関係ありません。

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