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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
113/258

113 白いドラゴン

「これなら行けるっ!!」


 暴走しなかったらしいタケル君は、意気揚々と白いドラゴンに向かっていった。

 でも私が視た限りじゃ、あの白いドラゴンの方が強いと思う。


「おいアイナ、あの白い奴、100年前に見たことあるぞ。当時は龍の女王として君臨してたはずだ。でもあいつ龍王の指輪をしてないから、今は龍族の王じゃないかも知れんが」


 龍族の王……闇王とか獣王のたぐいかな?

 100年前でも龍族の王だった程の龍だとすると、タケル君が危ないかも。

 私は透明な塊(毒)を生成し、タケル君の援護として白いドラゴンにぶつけてみた。

 しかし、かなり鱗が硬いようで、気を逸らす事すら出来ている気がしない。

 鱗を溶かせるレベルの溶解液(毒)をぶつけようとしてみたが、難なく躱されただけだった。

 さすがに簡単には隙を作らせてくれないか……。

 相手が空中にいるって、けっこうやり難いんだなぁ。

 タケル君も果敢にブレスを吐いたりしてるけど、白いドラゴンもブレスを吐いて相殺されてしまっている。

 タケル君は背中に翼が生えてるけど飛べないようで、地上からしか攻撃出来なくてかなり分が悪いようだ。


「ねぇ、ぼっちさんの知り合いなら、襲ってこないように説得できないの?」

「あいつ操られてるっぽいから無理だな。自我が残ってるような戦い方じゃない」

『自我は残ってますよ』


 突然頭の中に、それだけでも綺麗と分かる女性らしき声が響いた。


「だ、誰?」

『私ですよ』

「だから誰よ!?」

『目の前で戦ってる白いドラゴンです』

「自我残ってるなら襲ってこないでよ……」

『自我は残ってるんですけど、体の自由は奪われてるんですよねぇ。あと、龍王に気付かれないように自我が残ってないように振る舞ってるもんで。てへ』


 てへって、今正にタケル君と壮絶な戦闘の最中とは思えない呑気ぶり。

 ホントにあの白いドラゴンが話しかけてきてるの?


「おい、ヴァイス。久しぶりだな」

『おや、やはりその気配は“のけものの槍”でしたか』

「ふん。その名はもう捨てた」

『え?名前変わったんですか?ちょっと鑑定……ぶふぅっ!“ぼっちさん”って!きゃははははっ!!おもろー!!』

「ちっ!俺の名前とかどうでもいいんだよ!なんで俺達に襲いかかってきた?」

『現龍王に操られているんですよ。それで龍王とのパスを断ち切れる少女がいたので、念話で話しかけてみました』

「パスを断ち切れる少女って、私?」

『そうですよ。以前そこの赤いドラゴンが暴走して襲って来たでしょ?あれは龍王に操られていたんですよ。龍王はこの世界のドラゴン全てを支配下におけますから。でもあなたが赤いドラゴンを倒した後で回復してあげた時、何らかの力が働いて龍王とのパスが切れたんです。おかげで彼は今、暴走する事無く龍化できているという訳です』


 そっか、さっきタケル君が暴走がどうこう言ってたのはそういう訳ね。

 そして私の毒には、龍王とのパスを切る力があると……。


『どうか私と龍王とのパスを断ち切って欲しいのです。龍王はそれを警戒しているため、単独で強い龍をあなたの前には寄越さないと思います。今回はたまたま正体不明の存在がこの湖に居た淡水龍を倒したので、調査の為に私を派遣したのです。今後こんなチャンスは二度と無いと思うので、なんとかこの機会にお願いしたいのです』


 なるほどね。

 事情は分かったけど、毒を打ち込める距離まで肉薄するには、素の私じゃちょっと無理だ。

 ぼっちさんに乗って特攻しても、返り討ちにあうのがオチだと思うし。

 やるとしたら大猿化しないとなんだよね……。


「『パスを断ち切る回復』をする為には、あなたを一度無力化しないとダメだと思う。つまりかなり本気で戦う事になるだろうから、最悪の場合……」

『覚悟はしています。あなたに命を預けます』

「わかったよ」


 白いドラゴンに吹き飛ばされて、タケル君が木々をなぎ倒して転がって行く。

 ようやく止まったところへ、私は素早く近づいた。


「あ、あいつは予想以上に強い……逃げるんだっ……」


 タケル君がこちらを心配してくれてるけど、残念ながら逃げる事は出来ないんだよ。


「ごめんね」


 私はタケル君に強力な睡眠剤(毒)を注入した。


「え?何が……」


 タケル君が眠りにつくと、徐々にドラゴンの姿から人の姿へと戻っていった。

 次にレオナさんとレントちゃんにも同様に近づき、睡眠剤(毒)を注入する。

 2人とも、何が起きたのか分からない顔のまま、静かに夢の世界へ移行した。


「九曜、叢雲。みんなをお願い。私はあの白いドラゴンと戦うから」

「お嬢、あんなのに勝てるのか?姉君を呼んで来た方がよくないか?」

「今やらないとダメなんだよ。大丈夫、奥の手使うから」


 私は毒針から、青く輝く光の玉を生成して宙に浮かべる。

 本来であれば闇夜の中でしかその色を発しないが、私がつくるファンタジー発光に不可能は無い。

 これこそが私の奥の手、『擬似ぎじ月(毒)』だ!

この物語はファンタジーです。

実在する透明な塊及び溶解液及び睡眠剤及び擬似月とは一切関係ありません。

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