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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
111/258

111 移動手段

「し、知ってたし……」

「目を逸らさずに言ってもらえませんか?」


 確かに、あの異常な程の強さなら勇者と言われても不思議じゃないけどね。

 国の揉め事に干渉できないって言ってたのも、その辺が関係してるのかな?

 そっか、勇者かぁ……。

 まぁ勇者だから何?って感じだけど。


「その話は置いといて」

「置いとくんですかっ!?世間では勇者の弟子になりたい人が数多くいるのに、それと気づかずに勇者の弟子になってる人がいるなんて知れたら大変な事になりますよ!」

「そんな事言われてもねぇ。出会ったのだってたまたまだし。姉に色々教えてもらってた程度の認識で、弟子なんて感覚も無いよ」

「うわぁ……それ絶対に人前で言っちゃダメですよ。勇者の弟子はただでさえ嫉妬の的ですから」


 レオナさんも最初はめっちゃ嫉妬してたもんね。

 これは益々キャサリン姉の庇護下にいると世間に知られる訳にはいかないなぁ。

 王女が公爵家に抗議しなかったのは正解だったのかも?


「そういえばアイナ様はレイアに会ったのなら、もう一人の勇者様にも会ってますよね?」

「え?もう一人の勇者?」

「レイアの師匠のジオ様も勇者ですよ?」

「マジで……?」


 ジっちゃんも強いとは思ってたけど、まさかあんなお爺ちゃんなのに勇者だったの?

 まぁ勇者も歳は取るか……。

 意外と身の回りに勇者がいっぱいいて、まるで勇者のバーゲンセールだ。

 まさか、魔王もいたりしないよね?

 魔王はレントちゃんだけで充分だよ。


「そんな事より、今はクラス対抗戦のためのレベル上げでしょ」

「そんな事って……まぁいいですけど」

「この辺って強い魔物いるかな?」

「王都周辺は日々冒険者が魔物狩りをしているので、ダンジョンほど強い魔物はいないと思います。ダンジョンでは一定時間が経過するとリポップするので強い魔物が常にいますけど、地上では一度狩った魔物は復活しませんから。後は学園の裏山を越えた奥の方であれば、ダンジョンほどではないですが強い魔物が出る事もあります」


 学園の裏山の奥って言うと、先日レントちゃんと行った湖の方か。


「じゃあ、そこへ行こう」


 もちろん空を飛んで行った方が早いので、ぼっちさんを白い円柱に変えて上に乗る。


「なぁ、俺の事移動手段だと思ってねぇ?俺武器なんだけど……」

「武器に乗って移動するのってかっこいいよね」

「ユユ姫のと違って心が籠もってねぇの丸分かりなんだよ。どうみても今はただの円柱で武器の形じゃねーし」

「飛べないぼっちさんはただのぼっちさんだよ?」

「おい、ぶき・・からぶた・・になってんじゃねーかっ!!」


 ギャーギャー喚くぼっちさんに皆が群がって来た。


「アイナ様、何ですかこれは?」

「え?今この円柱喋ったように聞こえたんだけど?」

「喋ってるのはアイナさんの腹話術ですよ。あとこれは空飛ぶ円柱で、私は最初に乗った時漏らしそうになりました」


 レントちゃんの空飛ぶ発言で、レオナさんとタケル君がちょっと引いてる。

 だが乗車拒否など許さない。

 無理矢理乗せてから、落ちないように(逃げられないように)足をロックしてやった。


「じゃあ、裏山の奥の湖まで行っくよー!」

「いやああああっ!!下ろしてええええっ!!」

「うわあっ!?航空力学とかはっ!?何で飛んでるのこれっ!?」


 泣き叫びながらもがくレオナさんと、魔法がある世界で力学とか言い出してるタケル君。

 2人を無視して、私は先端に腕を組んで直立した(様式美)。

 そして不必要な程に空高く、白い円柱は舞い上がった。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 学園の裏山をはるか天空から悠々と越えると、木々に囲まれた澄んだ湖が見えてきた。

 今日は天気がいいので、水面が空の青を映し出してとても綺麗だ。

 そして湖の畔に着陸すると、レオナさんがその綺麗な湖に盛大に嘔吐した。


「オロロロロロロ」


 乗り物酔いする体質だったか……。

 小魚達が一斉に寄って来てるけど、それは餌じゃないよ。

 湖の水を汚すのは忍びないので、レントちゃんに湖の水ごと陸に上げてもらって土の中に埋めた。

 レントちゃんはめっちゃ嫌そうな顔してたけど、自分で直接触れてる訳じゃないし大丈夫でしょ。


 さて、レベル上げ用の魔物を探そうかと思ったところで、先日同様に湖の中に巨大な何かのクリティカルポイントが視えた。

 またうなぎだといいな。

 先日はうなぎを倒してレントちゃんが一気にレベルアップしたし、今回も同程度の強さの魔物なら、レオナさんのレベルアップも期待できると思う。

 それに何と言ってもうなぎ美味しい!

 これを逃す手はないよね。


「レントちゃん、昨日やったみたいに、また湖のこの辺を割ってくれない?」

「わ、分かりました」


 レントちゃんはタケル君の前で妙に張り切っているようだ。

 必要以上に魔力を込めて、盛大に湖を割った。

 昨日は普通に水が左右に避けただけだったのに、今回は水が上に持ち上がって両脇に津波のような演出まで加わっていた。

 魔力の無駄遣いとしか思えないけど、レントちゃんのドヤ顔が可愛かったので許そう。


「う、嘘だろ……モー○かよ?」


 タケル君が目を見開いて驚いている。

 そしてうなぎを期待していた私は、そこに現れた姿に息を呑む。

 割れた湖の底に鎮座していたのは、うなぎではなく白い鱗に覆われた爬虫類のような姿。

 あれに似たものを以前に見た事がある。


「ドラゴンっ!!」


 うなぎより美味な食材の出現で、私は歓喜に打ち震えた。

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