011 閃紅姫
『琥珀ダンジョン』99階層——100階に降りる階段の手前で部隊は止まる。
「この階段は降りてしばらくすると消えてしまう。100階に一度降りたら120階まで行ってボスを倒さないと脱出できなくなるのよ?本当に進むの?」
閃紅姫と呼ばれる紅髪の女性レイアは、副団長に問いかける。
「ここまでの階層にジオ様はいませんでした。いるとしたらもっと下の階という事ですよね」
「ええ。だからここで引き返しましょう」
「ダメです」
心底嫌そうに顔を顰める閃紅姫。
「100階って広大なマップなのに亀一匹しかいないボス部屋だよ?亀の足が遅すぎてエンカウントするまでが大変なんだよ?」
「人数が多いので手分けすれば大丈夫です」
「亀ってめっちゃ甲羅硬くて倒すの大変なんだよ?」
「あなたの速さなら頭を引っ込める前に倒せるでしょう?いいからさっさと行け!」
もう行く事は決定していると、副団長は強引に団長である閃紅姫を連れて階段を降りた。
数十人いる団員達が手分けして100階層のボスである亀を探す。
数時間はかかると思われた探査はものの数分で終わった。
「亀が見つかった!?」
運良く階段のすぐ近くに頭と手足しっぽが切断された亀が見つかった。
おそらくジオが倒したものだろう。
念のため亀を見つけた後も捜索を続けたが、ジオに至る痕跡は見つからなかった。
そして101階へ降りる階段を見つける。
「先に行ったと思う?」
「ボスを倒したなら進んだのではないでしょうか」
「まぁどっちみち120階まで行かないとダンジョンから出れないから行くしかないよね」
幸い101階以降はビッグターキーが大量にいたので食料には困らなかった。
そのまま120階まで降りると、ダンジョンボスであるアースドラゴンが骨だけになって横たわっていた。
「ここのダンジョンボスってボーンドラゴンだっけ?」
「いえ……アースドラゴンだったはずです」
「ってことはこれ、倒して食ったね……」
「ですね……」
一同はがっくりと肩を落として、転移装置を使って地上に戻った。
ダンジョンを出る時、冒険者ギルドの職員が一同を見つけて申し訳なさそうに告げた。
「あ、レイア様……ジオ様は数日前に何事も無かったかのように帰還されましたよ」
閃紅姫は静かにキレた。




