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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
108/258

108 仲裁

 タケル君が剣を構えると、モヒカン達も同様に剣を構える。

 黄色いモヒカンが上段に剣を振り上げて、飛び上がりながらタケル君に襲いかかった。

 うわぁ、空中から襲いかかるとか、絶対ダメなやつじゃん。

 私は空中に足場を作れるから立体機動で動けるけど、そうじゃないと格好の的だよ。

 しかも上段だから、横に躱して簡単に仕留め……なんでタケル君はそのまま受け止めたの?

 後ろの青いモヒカンが追撃かけると思ったのかな?

 私はクリティカルポイントが視えるから青いモヒカンが連携する気が無いのは分かってたけど、タケル君は気付けなかったから一応警戒したのか。


「くっ!」

「女の前で格好つけたのに、その程度の腕かぁ!?」


 黄色いモヒカンが挑発すると、タケル君は身体強化を使って剣をはじき返した。

 うーん、その程度の相手に身体強化はやりすぎかなぁ?

 タケル君、剣の基礎は分かってるみたいだけど、どうにも実戦経験が足りないような動き方をする。

 身体強化に頼りすぎてて、以前の私みたいな戦い方だ。

 気や魔力が圧倒的に相手より強いならいいけど、武を極めた感じの人には通じなくなっちゃうぞ。

 私はレイアさんと模擬戦した時にそれを痛感した。

 早めに教えてあげないと、ちょっと危険かもね。


 案の定、様子見していた青いモヒカンが参戦したら、タケル君は身体強化しているのに捌ききれなくなってきた。

 モヒカンズはチンピラみたいなのに意外と百戦錬磨のようで、連携がうまく取れている。

 しょうがないので、ちょっと手助けしてあげようか。

 見えない毒で少し動きを鈍らせて、見えない壁で時々攻撃をいなしてタケル君が捌きやすいように誘導する。

 一見手出ししてないように見えてる筈だけど、ある程度の強さの人にはバレてるかな。


「お嬢、男を見せてる奴の手助けはあんまり良くねーぞ」


 九曜が言う事も分からなくはないけど、自分から前に出て負けちゃったら格好悪すぎるじゃない?

 私は何を言われようと、レントちゃんが失望しないように偶像アイドルを作り上げるよ。

 まぁ、さすがに止めの格好いいとこまでは演出しないけど。

 あくまでも補助だけね。

 そして、ようやく形勢逆転してタケル君が攻勢に転じようとした時、


「お前らっ!何をやっとるかぁっ!!」


 残念ながら仲裁が入ってしまった。

 ギルド職員がギルドマスターを呼んで来たようだ。

 ちなみにこういう時に周りの冒険者は仲裁に入ったりしない。

 下手に手を出して、ギルドからのペナルティを食らいたくないからだ。

 そのためどれほどの手練れであろうと、今回のようにギルド側が仲裁できる人を呼んでくるのをただ待っている。


「ギルド内での抜刀は厳罰だぞ!」

「先に武器を抜いたのはあっちのモヒカン達です」


 私がこの冒険者ギルドのギルマスに進言すると、ギルマスは目を見開いて顔を引き攣らせた。


「お、お前か……まったく。拳聖と魔操から言われてはいるが、なるべく自重してくれんか?」

「私、今日は何も手出ししてないよ?」

「んぅ?ホントか?」

「そもそもその赤いモヒカンが私の連れを蹴ろうとして勝手に骨折して、その仲間が剣を抜いて襲いかかってきたから彼が迎撃しただけ。こちらには一切の非も無いよ」

「おい、現場を見てた奴いるか?」


 ギルマスが周囲の冒険者に確認をとったところ、私の供述に嘘が無いという事で、モヒカン達だけ罰を受ける事になった。

 骨折した赤いモヒカンは、回復薬(エイリアン形毒)が患部を食い破ってるかのように治療してあげたら、泡吹いて倒れてしまった。

 周りの人達もドン引きしてたけど、悪人を普通に治してあげるわけないじゃん。


「ところで、お前は何しに来たんだ?」

「この子の冒険者登録をしに来ただけだったんだけど……」

「お前はトラブルメーカーのようだから、何かある時はまず俺に声をかけろ」

「Cランク冒険者ごときがギルマスに声かけてもいいの?」

「お前はバックがバックだから、特別だ」


 その特別、決して優遇ではないよね。

 でも面倒だから、次回からはそうしよう。

 その後、なんとか無事レントちゃんの冒険者登録は済んだ。

 レントちゃんのスキルがFランクだったせいで、また絡まれそうになったけど、終始ギルマスが側にいてくれたので何事も無かった。

 私も二つ名がつくぐらい有名になったら、絡まれなくなるのかなぁ?


 冒険者ギルドを出てから、レントちゃんがちらちらとタケル君を気にしている。

 それとは逆にレオナさんは何の興味も無いようだった。


「レオナさんはタケル君と前は同じクラスだったよね?」

「はぁ。でも勇者殿とは特に接点も無かったので、彼については何も知りませんよ」


 いや、今めっちゃ重要な情報をくれたから。

 やっぱりタケル君が勇者だったんじゃん……。

 そして魔王レントちゃんが勇者タケル君に好意を持ち始めている。

 これ何てラノベ?

 これからダンジョンに入るのに、こんな浮ついた感じでいいのかなぁ?


 冒険者ギルドを出て暫く歩くと、先程のダンジョンの入り口が見えてきた。

 今度こそ全員が冒険者登録してあるから、ダンジョンに入れる筈よね。

 ……なんて思ったのがフラグだったようだ。

 ダンジョン入り口の受付には、大人の男性がAクラスの腕章を付けた人達を引き連れて受付をしていた。

 これはまた一悶着ありそうだなと思った矢先、そのうちの一人がこちらへ振り返った。


「おやぁ?Fクラス落ちしたレオナちゃんじゃないかぁ」


 本日二度目の絡まれ事案発生。

 いや、エンデさんに絡まれたのを含めたら三度目だったわ……。

この物語はファンタジーです。

実在する回復薬とは一切関係ありません。

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