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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
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107 冒険者登録

 レオナさんの案内でダンジョンに行く途中、タケル君に出くわしてしまった。

 私がした約束じゃないから、すっかり忘れてたよ。


「……えっと、今からダンジョンに行くんだけど、タケル君も一緒に行く?」

「ダンジョンって……昨日のとこじゃないよね?」

「たぶん違うダンジョン」

「じゃあ、行きます!」


 昨日のとこはトラウマになってるのかな?

 物理も魔法も聞きにくい魔物とか、そりゃ普通は戦いたくないよね。

 私にとっては相性良すぎてただの雑魚だけど……。


 ダンジョンは何故か王都の中にあるらしい。

 都市の中にダンジョンの入り口がある場合は、スタンピード等に備えて冒険者ギルドが厳重に管理しているとのこと。

 そういえば、最初に飛ばされたダンジョンも入り口で冒険者カードを確認されたっけ。

 おかげで偽装に手を染める結果になってしまったけど、ちゃんと管理しないと危険だからしょうがないか。

 私達はいくつかあるダンジョンの中で、王都内では最高難易度のダンジョンを選択した。


「ここはBランクのダンジョンで、学園生でも一部の者しか挑戦できないところですよ?」


 レオナさんが心配そうに聞いてくるけど、学園生が挑戦できる程度なら大丈夫じゃないかな?

 入り口の受付のところに行くと、冒険者カードの提示を求められる。


「このダンジョンは最低でもCランク以上の人がパーティに居ないと入れません」

「私がCランクだから大丈夫だね」

「ではカードを拝見します。……スキルがFランクなのにCランク?」


 受付の人の視線が胡乱げになってしまった。

 私の後ろの護衛である九曜と叢雲を見て、「お前ら保護者じゃねーの?」って視線を投げかけている。

 残念ながら、九曜と叢雲は奴隷から解放した後で冒険者登録したばかりだから、現在Fランクなのである。

 大人がいるのに私が冒険者カードを提示したから、尚のこと不信に思ってるのかもね。

 まぁいつもの事なんだけど、このままだと入れて貰えないから、ちょっと困るなぁ。

 と、そこでタケル君が私のカードと同じ緑色の冒険者カードを出した。


「僕もCランクです。これじゃダメですか?」

「スキルAランク!?は、はい。問題ありません」


 ここでもスキルのランクで差別されちゃうのか……。

 たぶん私の方は貴族がお金の力でパワーレベリングしたと思われたんだろうなぁ。

 貴族の道楽で危険なAランクダンジョンに入られて何かあったら責任問題になるし、ギルドとしてもあんまり入れたく無かったのだろう。


「一応そちらの方々も冒険者カードも確認させてください」

「おう」

「承知」

「はい」

「えっ?わ、私は冒険者登録してないんですけど……」


 九曜と叢雲はFランクのカードを出し、レオナさんはDランクのカードを出したのだが、どうやらレントちゃんは冒険者登録がまだだったみたいだ。

 まぁ先日までは冒険者になろうとすら思って無かっただろうし。


「パーティにCランクの人がいても、冒険者登録していない方は入れません。入退場の管理が出来ませんので、冒険者登録してきてください」

「は、はい……」


 誰が入ったか分からないと救助も出せないから、その為に冒険者登録は必須らしい。

 そりゃそうよね。

 仕方が無いので、先にレントちゃんの冒険者登録を済ませる事にした。


 冒険者ギルドは多くの冒険者でかなり混雑していた。

 この冒険者ギルドには、以前にキャサリン姉とリスイ姉と共に来た事がある。

 あの時も絡まれたけど、今日ももちろん絡まれた。


「なんだぁ?ここはガキの遊び場じゃねーんだぞ!」


 前回絡まれた人とは違う、赤いモヒカンでいかにも「ヒャッハー!」とか言ってそうな人に絡まれる。

 今回はレントちゃんが妙にビクビクしてるから、余計に絡まれ易かったのかも知れない。

 王都は人が多いから、前回の騒動を知らない人もいるんだろうね。

 それにしても、スキルがある世界なんだから、見た目で絡んじゃダメだと思わないのかな?


「ガキは家に帰れ!」


 赤いモヒカンがレントちゃんに蹴りを入れた。

 それを、レベルが上がって頑強になったレントちゃんの体がはじき返す。

 ボキリという嫌な音がして、モヒカンの足が脛付近で真っ二つに折れた。


「ぎゃあああああっ!?あ、足があああああぁっ!!」


 以前の金髪リーゼントに蹴られた時とは違い、レントちゃんにはかすり傷すら付かなかった。

 もう私が反撃してあげる必要すらないとは、ちょっと寂しいかも……。


「えっ?わ、私何もしてないですよ?」

「無自覚魔王……」

「ちょっ、アイナさん!魔王とか言うの止めてくださいぃっ!」


 一連のやり取りを見ていた周囲の冒険者達もちょっと引いていた。

 気持ちは分かる。

 そして前回同様、赤いモヒカンの仲間みたいなのが現れた。

 黄色いモヒカンと青いモヒカン——って、信号か?


「てめぇっ!うちの兄貴に何しやがった!?」

「ただで帰れると思うなよぉっ!!」


 うーん、定番中の定番みたいな台詞だね……。

 もっと捻ろうよ。

 そして黄色いモヒカンと青いモヒカンは腰の鞘から剣を抜いた。

 突然ギルド内は騒然となり、ギルド職員も喧噪の中で慌ただしく動きだす。

 さすがに武器を抜いたら見過ごせないよ。

 しょうがない、ここは私が一酸化炭素(猛毒)で動きを封じようか——と思ったところで、一人の少年が私達の前に躍り出た。

 正義感に溢れる目をしたタケル君だ。


「やめろっ!僕が相手になるっ!!」


 か、かっこいい……。

 現実リアルでこんなに格好良く助けに入る人なんているんだねぇ。

 あ、レントちゃんの目がハートになってるんだけど……。

この物語はファンタジーです。

実在する一酸化炭素とは一切関係ありません。

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