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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
106/258

106 スキルの派生

 話が終わったので裏山へ行こうとしたが、昨日助けた少年に呼び止められる。


「昨日は助けてくれてありがとう」

「お礼は昨日も言われたし、もう気にしないで」


 それを言うためだけに王女と話してる間も待ってたの?

 そんなに何度もお礼を言わなくてもいいのに。


「あら?タケル様とアイナさんはお知り合いだったのですか?」

「昨日例のダンジョンで魔物にやられそうになってたところを助けたの」

「あ、あんまりやられてた事を広めないで……」


 王女が彼を『タケル』と呼んだ事でようやく名前を知った程度の関係だったりするけどね。

 金属スライムにやられていた事が、タケル君は恥ずかしいようだ。

 あれはスキルの相性の問題もあるから、しょうがないと思うんだけど。

 それにしても、『タケル』かぁ……九曜達の例もあるからそうとは限らないけど、どうにも響きが前世の世界っぽいんだよね。

 もしそうだとしたら、彼が帝国の勇者で決まりだろう。

 あまり関わらないでおくのが正解だね。


「じゃあ、私は行くね」

「ちょ、ちょっと待って!実はお願いがあるんだっ!」


 うーん、嫌な予感しかしないけど、聞かないとずっと纏わり付かれそう……。


「お願いって?」

「僕に稽古をつけてほしいんだ!」


 うわぁ……やっぱり面倒事かぁ。


「分かりました。じゃあ放課後に裏山に来てください」

「あ、ありがとう!じゃあ放課後にっ!」


 ちょっと待って……今、私喋ってないけど?

 犯人は分かってるけどねぇ……。

 タケル君は嬉しそうに、王女は訝しみながら、エンデさんはめっちゃ睨みながら教室に帰っていった。


「ぼっちさん、声真似したでしょ?」

「俺の声は声帯じゃなくて魔法で音波作ってるだけだからな。同じ周波数にすれば簡単に声真似も出来るぜ。そもそもお前、断ろうとしてただろ?同郷かも知れないんだから助けてやれよ」

「助けたいのは山々だけど、クラス対抗戦じゃ別のクラスになっちゃうから、敵を鍛える事になっちゃうじゃん」

「数日鍛えたぐらいでそんなに変わらんだろ?」

「レントちゃんは昨日一日で魔王になりましたけど?」

「そういえばそうだったな……」


 まぁ気や魔力を開放しなければ問題無いか。

 武術の手解きぐらいはしてあげよう。




☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆




 本日の行軍訓練も無事に終了した。

 今日は私とレオナさんだけでなく、レントちゃんも全く疲れを見せずにピンピンしていた。


「アイナさん、私レベルアップしたせいか、何も負荷を感じなかったんですけど……?」


 そりゃそうよ。

 レントちゃんは巨大うなぎ倒してかなりレベルアップしたんだから、山を練り歩くだけの訓練ではそりゃ物足りないだろう。


「あと、レベルアップしたせいかは分かりませんけど、目を閉じても水が視えるようになったんです。何を言ってるのか分からないと思いますけど、私も何が起こってるのか分からないんです」


 どこのス○ンド使いに襲われたのよ?

 でも私だけは言ってる事が分かるのよね。

 私が流路を視れるのと同じように、レントちゃんも水の流れが直接脳で視れるようになったんだと思う。


「それはスキルの派生能力だね。練度を上げると、その流れ方から相手の動きを予測したりできるようになって便利だよ」

「スキルの派生能力……そんなのがあるんですね」


 私とレントちゃんが話していると、レオナさんが興味深そうにこちらを覗っていた。


「スキルの派生とは高レベルの達人だけがたどり着く領域ですよね?」

「レベル上げるだけでいいんだし、別に達人じゃなくても出来るようになると思うけど」

「そのレベルを上げるのが難しいんですが……」

「パワーレベリングじゃダメなの?」

「自力でレベリングしないと開眼しないと言われています」


 私は最初パワーレベリングしてたけどね。

 レントちゃんは自力でうなぎ倒したから開眼したのか。

 私の場合、クリティカルポイントは最初から見えてたんだけど、あれは毒針スキルの基礎能力の一つだ。

 それだけでも充分に凄い能力だとは思うけど、流路が視えるようになったのがスキルの派生にあたる。

 流路は毒を流す路で、どの路に沿って毒を流したら効果的かを教えてくれてるんだと思う。

 獣人国の付近で熊とか猪とか狩ってたら、初めに気の流路が見えるようになった。

 遺伝子操作でヴァンパイアになったら、今度は魔力の流路も見えるようになった。

 妖力の流路も遺伝子操作で見えるようになった。

 つまり、遺伝子操作すれば誰もが達人に……。


「おいアイナ、それはやめとけ。危険過ぎるから」

「またアイナさんの近くから男の人の声が……」

「アイナ様、今の声は……?」


 おっと、ついにぼっちさんの秘密を明らかにする時が来たか……。


「実はこの武器が喋ってるのよ」

「そいうのはいいですから」

「ちゃんと本当の事を言っていただけますか?」


 2人とも全く信じてくれなかったでござる……。

 着地点は腹話術だった。

 今後も腹話術で押し通します。


「とりあえず、レオナさんもスキルの派生能力に開眼しないと、閃紅姫レイアさんには勝てないと思うよ」

「……かなり魔力が増えたのに、それでも勝てないと思いますか?」

「うん。レイアさんは先読みが凄いから、力任せじゃ勝つのはかなり難しい。最低でも同格ぐらいの先読みが出来る必要があるし、その為には相手の体の動きを感知できる能力が必須だと思う」


 スキルの派生に開眼するにはレベル上げが必要なんだよね。

 無意味と思ってたレベルにも一応意味は有ったって事かな?

 でも、レベル上げってどこでしたらいいの?


「レオナさん、レベル上げってどこでしたらいいと思う?」

「一般的にはダンジョンですね。王都にもいくつかダンジョンがあるので、学園生も皆そこでレベル上げしていると思います」

「Fクラスは裏山なのに?」

「Fクラスのスキルでは、普通はダンジョンで戦えませんから……」


 なるほど。

 ダンジョンって、転移装置で飛ばされた時しか入った事無かったな。

 よし、クラス対抗戦に向けてダンジョンでレベル上げしよう!

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