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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
103/258

103 水操作スキル 4

「レントちゃん、水を操作できるって事は水の温度も操作できるよね?」

「え?出来るんですか?」


 自分のスキルなのに分かってなかったのね……。

 いや、分子運動とか知らないと気付かないかも知れないけど。


「さっき教えた水分子に運動エネルギーを与えると温度が上がるのよ。普通は熱する事で水分子が運動するんだけど、レントちゃんはスキルで直接それができちゃうはず。逆に水分子を動けないように結合しちゃえば氷になるし」

「なるほど」


 レントちゃんが湖の水から水球を作って、その中で分子運動を活性化していくと、ボコボコと沸騰しはじめた。

 そして今度は分子運動を止めると、急激に凍り付く。


「凄いです……熱湯を相手にぶつけるだけでも結構ダメージ与えられますよね」

「いやいや、レントちゃんのスキルの真骨頂は氷の方だよ」

「え?でも氷にしてぶつけても、水をぶつける速度と変わらないですよ?そりゃ固い方がダメージ大きそうですけど、簡単に避けられちゃうと思うし……」

「いやいや、直接ぶつけるんじゃないよ」

「周囲の水蒸気を凍らせて気温を下げるんですか?それこそダメージ少ないですよ?」

「おしいっ!じゃあ、雲って何で出来てると思う?」

「雲?空にある雲は……雲で出来てる?」

「雲はね、水蒸気が冷えて小さい水滴が集まって出来てるんだよ」


 私は水(毒)を霧状にして冷やし、雲っぽくしてみせる。


「へぇ〜。じゃあ、私のスキルで雲も操れちゃうって事ですか?」

「たぶん上空にある雲はかなり高いところにあるから、スキルの操作範囲から外れちゃうと思うよ。でも水を操れるって事は自分で雲を作れるって事。今私がやったみたいにね」

「なるほど。……って、雲なんて作ってどうするんですか?」

「作るのは普通の白い雲じゃなくて、黒くてピカピカ光る雲」

「黒くてピカピカ光る雲?」

「そう、雷雲だよ」


 私の場合は直接電荷(毒)を作れるから、雷発生させる為にわざわざ雲を作る必要無いんだけど、レントちゃんに説明する為に雷雲を再現してみせた。


「空気中には水蒸気と同じように目に見えないほこりなんかが漂ってるの。それを水滴に絡めて集めて雲を作る。そして、その雲の中で適当に氷の粒を作って動かすと……」


 黒い雲の中でバチバチと静電気が発生して、次第にゴロゴロと雷のような音が鳴り出す。

 通常では再現しにくい物理現象でも、スキルで簡単にできちゃうのは楽しいね。


「そして、電荷が飽和したら地面に向かって雷が落ちる」


 ピシャっと地面に向けて雷が落ちた。

 私の場合は湿度を操れないので、電荷(毒)でズルしてちょっと方向を調整したけど。


「周囲に雷が落ちないように湿度の断層を作ってやれば、レントちゃんもある程度雷を操れると思うよ」

「……これ、どうやって威力とか調整するんですか?」

「雲の大きさで調整かな?まぁかなり小さくしてもそれなりに殺傷力あるから、確実に命を絶ってもいい相手にしか使っちゃダメだね」

「当たり前ですよ、こんな危ないのっ!」

「まぁ、急にドラゴンとかが襲ってきたら全力で使った方がいいと思うけど」

「そんなシチュエーション普通無いですから……」


 あれ?私ドラゴンに襲われた事あるけど?あれ〜?


「じゃあ実践いってみよ〜!」

「え?確実に命を絶ってもいい相手なんていないですよっ!?」


 さっきから湖の中央付近に、蛇みたいなどでかい魔物がいるんだよね。


「レントちゃん、湖の水を左右に割って、あの辺の底を顕わにしてもらえる?」

「湖の水全部ですか?それはさすがに魔力が足りないと思うんですけど……」

「湖全体を一度に操らないで、割った側面だけ固定すれば魔力を節約して湖を割れるでしょ?」

「あぁ、それならいけそうです」


 レントちゃんが湖を割ると底が顕わになり、そこでは逃げ遅れた小魚達がバタバタと暴れていた。

 そしてそのずっと先の奥で、長い体を横たわらせてこちらを睨む魔物が一匹。

 体長10mはあろうかという巨大な体をうねらせて、こちらに向かってこようとしていた。

 しかし、水中ではなくなってしまったために、思うように進めないでいるようだ。


「えっ!?ド、ドラゴンっ!?」

「うなぎね」

「うなぎだな」

「うなぎか、美味そうじゃのう」


 ドラゴンだと思ってるのはレントちゃんだけ。

 うなぎ見た事無いの?王国ではうなぎ食べる文化が無いのかな?

 ぼっちさんは当然知ってるとして、叢雲むらくもも知ってるみたいだ。


「あれめっちゃ美味しいから、雷雲で攻撃して」

「は、はいっ!!」


 うなぎをドラゴンだと勘違いしているレントちゃんは、湖の水を使って、持ちうる限りの魔力を注いだ雷雲を生成した。

 うなぎの周囲に落ちた雷によって、湖全体が目映い光に包まれ、山の方にまで轟音が響き渡る。

 この湖の主であろううなぎは、避ける術も無く、また濡れた体で完全に感電してしまって、あっけなくその生涯を終えたようだ。

 そこでレントちゃんの魔力が尽きたのか、割れていた湖も元に戻り始める。


「レントちゃんの全力の雷、マジ凄まじい威力なんだけど……。あれ、私でも止められなくない?いや、ぼっちさんを避雷針にすればいけるか……」

「おいやめろっ!!」

この物語はファンタジーです。

実在する水及び電荷とは一切関係ありません。

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