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【完結】毒針クリティカル  作者: ふぁち
第三章『学園編』
102/258

102 水操作スキル 3

 さて、まずは一番の勘違いを正そう。


「レントちゃんは水が無い場所ではスキルが使えないと思ってるでしょ?」

「はい。水操作スキルなんで当然だと思うんですけど……」

「水はどこにでもあります」

「えっ?どういう事ですか?」


 レントちゃんは目を見開いて、キョトンとしている。

 目に見えないものを観測する術が無い世界では理解出来ないよね。


「お湯を沸かす時に湯気が出るでしょう?」

「出ますね」

「その湯気はどこに行ってると思う?」

「消えちゃいますよね?」

「残念。消えたのではなく、見えないぐらい小さい粒になって、宙を漂ってます」

「ええっ!?そうなんですかっ!?」

「よく見ててね」


 私は水(毒)を霧状にしてどんどん小さい粒状にしていく。

 最終的に完全に空気に溶け込んだ状態になってから、逆再生するかのように集積して水滴に戻す。


「空気に溶けても水蒸気として空中のどこにでもあるの。それを集めれば水が作れるから、レントちゃんのスキルは割とどこででも使えるのよ」

「なるほど。じゃあ、今ここで集めてみれば……」

「ストーップ!!人がいる周りで集めちゃダメっ!!」

「えっ?何でですか?」

「生物は意外なほど空気中の水蒸気に依存してるの。空気の湿り具合を湿度って言うんだけど、湿度が0%になると体の中の水分がどんどん失われていくの。粘膜が乾いて目を開けられなくなり、呼吸する度に水分が失われて苦しくなって、皮膚からもどんどん水分が抜けて干からびて行く。最悪命を落とすから」


 水を操れるという事は湿度も操れるという事。

 砂漠より低い湿度0%の世界を意図的に作り出せる能力はかなり危険なのだ。


「う、嘘ですよね……?それが本当なら私のスキルは簡単に人を……」

「これは本当の事だからね。だから水を集める時はなるべく付近に人が居ないところ、上空の方とかから集めるようにしてね。通常は水蒸気が無くなった場所には自然と周りから水蒸気が分散されて戻っていくんだけど、レントちゃんの場合はスキルでそれすらも止めれちゃうから、空気中の水分を集める時は慎重にね」

「……ちょっと怖くなって来ました」


 レントちゃんが小刻みに震える手で上空から水蒸気を集めると、一滴の水の玉が出来上がった。

 さすがに怖くなって躊躇したからか、上空に変化は見られなかった。


「これで遠距離の水を操作できたらほぼ無敵だと思う。ちなみに、レントちゃんはどれぐらい離れたところの水を操作できるの?」

「たぶん100mぐらい離れたところまでは操作できると思います。いや、魔力増えてる感じがするし、もっと行けるかも?」


 レントちゃんが湖の水を水球にして、どんどん自分から離していく。

 ツーっと滑るように湖の上を走って行った水球は、ほとんど見えないぐらいの距離に行ってもまだ宙に浮いている。

 そして湖の反対側の岸まで行ったあたりで地面に落下した。


「3〜4kmぐらいは行ったね」

「今ので10%ぐらいしか魔力込めて無かったんですけど……。たぶん見えないぐらいの距離でも全力で魔力込めたら操れちゃいそうです……」


 うん、レントちゃんマジヤヴァいね。

 普通にこの王都ぐらいなら一人で滅ぼせちゃうかも?

 契約魔術使っておいて良かったよ。


「じゃあ次に、レントちゃんのスキルでどこまで水を操れるか検証してみようか」

「は、はい……なんか良く知っておかないと色々ヤバそうですもんね」


 よしよし、自分のスキルの危険性をちゃんと理解出来てるのは偉いぞ〜。


「私が出してるこの水は操れる?」

「う〜ん、何故か無理です。干渉しようとするとはじかれてる感覚があります」


 水(毒)は私がスキルで直接生成してるものだから、所有権の強さ的に干渉出来ないみたいだね。


「じゃあつぎは水魔法を撃ってみるから、それを操ってみて」


 私は魔素(毒)で水魔法の魔法陣を描いて魔法を放つ。

 魔法陣から生成された瞬間は私に所有権があったみたいだけど、魔法陣から少し離れたところで直ぐにレントちゃんに操作されてしまった。

 これって、水魔法使いにとってレントちゃんは天敵って事だよね。

 魔法を使った瞬間から水を奪われるとか、局所的に無敵だわ。


「次は水ではなく液体に干渉できるかやってみるよ」

「水じゃない液体ですか?」

「ちょっと待ってね」


 私は手首を切って血を滴らせ、毒で作った瓶に入れる。


「きゃあっ!何をしてるんですかアイナさんっ!?」

「大丈夫だよ。すぐ治療するから」


 治療薬(毒)ですぐに傷口を塞ぐ。

 この程度の事、レントちゃん以外は誰も驚いてないよ……九曜は気絶したままだけど。


「じゃあこの血を操ってみて」

「うわ……ちょっと嫌ですけど、やってみます……」


 うんうん唸りながらやってるけど、何故か血は操れなかった。


「なんで血は操れないんだろうね?」

「だって血は水じゃないですから……」

「え?血には水分が含まれてるから水の部分は操れるんじゃないの?」

「え?」


 あれ、これひょっとしてレントちゃんのイメージの問題じゃないの?

 色々話を聞いてみると、どうやらこの世界では水分を含んでいても、透明じゃないものは水ではないという認識らしい。

 泥水すらも水とは違う別の液体だと思ってたみたい。

 確かに水を含まない液体も存在するけど、油とか液体金属以外の液体はほぼ水分を含んでるんじゃないかな?

 とりあえず私は水分子から説明してあげた。

 たぶんレントちゃんのイメージ力が上がれば、分子レベルの水も操れると思うんだよね。

 既に水蒸気を集める事も出来るわけだし。

 そして案の定……、


「わあっ、血を操れてる……」


 フワフワと宙に浮く私の血。

 正確には血の中の水分を操ってるんだけどね。

 でも、さすがにレントちゃんも、直接体内の血までは操れなかった。

 これは私のスキルでも言える事だけど、人の体内には気や魔力のようなものが巡っているから、スキルで干渉し難いみたいだ。

 まぁそれを操れちゃったらかなりヤバい事になるから、それはそれで良かったと思うけどね。

 さて、水分を含んだものを操れるようになった事だし、もっとヤヴァい必殺技教えちゃうぞー!!

この物語はファンタジーです。

実在する水及び治療薬とは一切関係ありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう、魔法なんてどの属性でもやばいよね、って話好きです。いつも楽しく読んでます、がんばってください。 [一言] 難しいことはわかんないですが、質量保存の法則ではないです、実在するのと関…
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