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生きる。  作者: 泉 紅湊
8/8

家族

「なぁ〜〜んか楽しいことでもねぇかな」


帰りの道中ユウトは両腕を頭で組みながらそんなことを言い出した。


「そんな簡単にホイホイと楽しいことが起きるかよ」


人生なんて8割苦しいことでせいぜい2割楽しいことがあればいい方だろ


貴人がそう言おうと思ったが途中で口をつむんだ。


それを言うには内容があまりに暗いかと思ったためだった。


またそんな悲観的な自分を他人に見抜かれるのが嫌だったためだった。


「つれないねぇ」


とユウトは不満げな返答を返してきた。


一年ユウトとは一緒に過ごしている。世間一般的には友人になるのかもしれないが、貴人自信、ユウトに対しそこまで自分の本心を打ち明けられる関係かと言われるとそうでもなかった。


中学時代、貴人には仲の良かった親友と思っていたやつがいた。


ある時何の気のない会話の流れから気になっている人がクラスにいないのかと言う話になった。


貴人は誰にも言うなよと話しその子の名前を話した。



それから数日後その彼女が貴人に対しての対応が普段と違いソワソワしているのと若干距離を置かれている気がしたのだった。


距離を置かれたこといつもと様子がおかしいことに対し不安を覚えた貴人はその親友に相談をし親身に話しを聞いていてくれたのだったが


クラスメートの男子と会話をしている際、親友だと思っていたやつがあろうことかクラスの男子に貴人が気になっている人を話しそれを聞きつけた女子がその子に話してしまうということがあったと聞いたのだった。


それは貴人の思春期の心を引き裂くには十分すぎる出来事であった。


しかもその恋は成就することはなく、更に親友に裏切られた悲しみから貴人は人間不信になってしまっている節があった。


他人を信用し自分の大切なことが他人に嘲笑られる。他人に安易に本音を迂闊に話さないこれは貴人にとって一種の処世術のようなものであった。


また貴人には家族もあったが、最近祖父が亡くなったため諸事情で祖母が同居することになり最初は祖母と一緒に生活することを楽しんでいたのだが


日が経つことに祖母の母に対する悪口を貴人は聞かされやれ味噌汁の味が薄いだの掃除の後


埃が残っているだのいわゆる小言であった。


貴人も最初は、はいはいと聞いていたが次第に母に対し財布を隠すことや洗濯したものを外に放り出して再度洗濯し直


さないといけない様にするなど母に対し意地悪な行動を取り始め、母も薄々祖母から悪口や意地悪をされていることき


気付き次第に以前の母と比べやつれている様に見えるようになった。


父もその雰囲気を気付き、祖母に注意したものの母が全て悪いと泣き喚き手が付けられないことがあってからは父もなす術なしというところであった。



貴人はそんな祖母を身近で見ながらよく他人の世話になっている分際で、そんな我が物顔ができたものだと以前は好


きであった祖母に対し、嫌悪感を抱くと共に身内でもこんなことがあるなら他人と仲良くなることなど到底できる気がしなかった。

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