行き着くところまで
僕の終焉はどこだろう。
僕はもう十分に存在した。
しかし、まだ旅はつづくらしい。
人生は思い通りにいったことなどおよそなく、予想外のことばかりだった。
予想外の対応に追われつづけるのが人生なのだと言えなくもないだろう。
そこには常に努力することが求められる。
努力は疲れるが、努力しないことは能力及び己の全体のレベルが上がらないことになる。
登山と似たようなもので、努力の先には新たな光景が広がる。次なる次元と出会える。
僕は自分の努力に、人生に大方満足していた。
だから死ぬことも怖くなかったし、不本意でもなかった。
しかし、死後も意識がつづいたことは予想外だった。
しかし、つづいてしまったものは仕方ない。
この存在がついに終わるまで、行き着くところまで行くしかない。
Sと交流ができることは大きな幸いだった。
僕は、鮮烈な宇宙を堪能すると、白銀の砂時計のような銀河を通り抜け、次なる銀河を目指した。
銀河から銀河へ移動するとき、三半規管が狂うような強烈なめまいを感じた。
白銀の視界世界は歪んで見えながらも、どこか安息を感じた。
僕は、その間にSに交信した。
「S……聴こえるかい? 君に是非見せたい美しい銀河を発見したよ。太陽方向から冥王星に向かって、十光年ほど先の位置だ。想像も追いつかないほど色彩豊かで美しい宇宙だったよ。いま、僕はそこを抜けて次の宇宙に向かっている。すごいめまいを感じている。いろいろなものを通過中なんだろうな。S、聴こえているかい?」
ややあって、Sの返信があった。
「ずいぶん遠くに行ったんだな。きれいな宇宙の位置、了解した。是非訪問してみるよ。めまい、大丈夫か? もしかしたらすごく変わった場所に行こうとしているのかも知れないな。くれぐれも気をつけて」
「ああ、ありがとう。たぶん大丈夫だと思うが、気をつけるよ」
幻惑的なめまいはまだつづいていた。
Sの言う通り、いままでと全くちがった予想もつかないような場所に行こうとしているのかも知れない。