宇宙の旅
そう、僕が死んだ日。
僕の葬儀のあと、疲れて眠り込んだSの意識に、僕は話しかけた。
夢のなかで目を覚ましたSは、僕を見てびっくりしていた。
H、生きていたのか。
いや、僕は死んだよ。
そうか……
Sは僕の死を悲しみながらも、再会を喜んでくれた。
肉体の死後も、人の意識は在りつづけるんだな。
そうらしい。それがいいことなのか悪いことなのかはわからないが。
Sは、笑った。
僕は、君が在りつづけてくれてうれしいよ。とても。君と会えなくなったら、とてもとても……寂しい。
僕は、感謝して笑った。
ありがとう、S。
Sの死後も、僕たちの交流はつづいた。
生きている間のSとの交流もいつも心安く楽しいものだったが、お互いが意識体となってからの交流もまた楽しいものだった。
ほかの友人とはうまくコンタクトできない。
それはSと僕の意識の波長が似ていて、互いの交流を妨げるものがないということかも知れなかった。
僕はSとだけ交流ができれば、大方満足していた。
意識体となった僕たちは、ありとあらゆる場所へと旅した。
極北のオーロラは壮観だったが、地上の光景はすぐに飽いてしまった。
僕たちは、宇宙空間へとくり出した。
宇宙は刺激的で、常に想像を絶するものだった。
アンタレスを見に行ったとき、その異様な巨大さに恐怖を覚え、それを伝えるとSに笑われてしまった。
星が誕生するところを二人で見たこともあった。
互いの姿は見えなかったが、Sの存在を確かにすぐそばに感じていた。
新しい星の放つ光は強力だった。
それは命というものの力強さだった。
「きれいだな」
Sが言った。
「ああ」
怖ろしいほどの光の爆発だったが、確かにそれは美しかった。