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懐古の怪談

作者: 瀬川なつこ

目くるめく、昭和ロマネスクの標本箱。

貴方も目撃するのだ。

その、寂し気な風の音のような、古き、涼しき風の感覚を…

奈落の底。

鬼と閻魔が宵祭りで、金魚すくいにりんご飴を舐めて踊っている。

彼岸桜が散りながら、その下で、小鬼が、やっぱり舞っている。

私はもがれた角の欠片を探して、片腕を亡くしたまま、切なく泣いている。

鬼やらいがやってきて、お前も殺さんとならん、と影法師の私に云うのだ。


息を止めて、水槽に沈む。

あぶくのような泡沫を見つめる。

人魚の怪奇。

道の向こうの竹藪の向こうで、狐の青年が、にやにやしながら、此方を見て餌を屠ろうとしている。

彼は影法師。

ひんやりと冷たい空気が、庭に撒かれた沢山の蛍石を綺羅と照らします。

綺羅の世界。

不思議な久遠。

見知らぬ旅路。


夢のような、夏の世界を生きている。

宿場町。

此処は腐った標本箱の中。

懐かしひ想い出のセピア色。

琥珀色の蝶を標本箱の中から取り出したら、灰の様にさらさらと風に崩れていった。

風の通り道。

竹藪を抜けたところに、月に帰れなくて水浴びをしている真昼の月姫がいるよ。

入道雲は誘っている。


昭和の君。

床屋のサインポール、知らない町に行きたいと唄う歌謡曲。

危ない薬を使っている工場。

工場からは汚染された排水が流れて美しい五枚葉の三つ葉のクローバーが沢山とれました。

あの電柱の影をご覧。

赤い目の鬼が此方を見て一緒に遊びたそうにしているよ。

ビー玉、けん玉。竹馬。

懐かしい、君…


首のない兵隊さんが、砂浜で、舟虫に食われている。

月は夜輝き、闇の魔物が襲ってきます。

兵隊さんの幽霊の行進。

田園では、電柱の警官が夜通し警戒している。

庚申の日になって、虫たちが神無月の夜、出雲の國へ、三本足の鴉の後をゾロゾロ追って飛んでいきます。

ここは宵の國。

死出の近い世。

想い出は、懐かしい懐古の昔。

教えてくれる。昔の世界が、鬼や、影法師の闇を、ひだまりの中の景色の様に…

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