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模倣犯と殺人犯の対決



蹴破られた扉を見て私はほんの少し迷う。ローゼンはここにいるように言ったけれど、私にもすべきことがある。私は、ふらつく足を前に進め、家の中へと入った。


既に、ローゼンと殺人犯の決着は付いていた。その展開の速さに私は目を見開く。殺人犯の左肘に片足を乗せ、右肩に深々と剣を突き刺したローゼンは、肩で息をしながら男を床に磔にしていた。殺人犯の両足の腱は切られているのかもがく事しか出来ないようだった。

悲鳴が口の中で溶ける。私は血に塗れた殺人犯と、それを為したローゼンを見つめる。家の中に入ってきた私に気付いたローゼンは殺人犯から目を逸らさぬまま鋭く叫ぶ。



「シェリルちゃんっ!?なんで来てっ?」


「いい、から。私のことは気にしないで。そのまま、その男を無力化してて」



その惨状、血の匂い、頭がクラクラする。けれど、これは、私が願って、ローゼンがしてくれたことだ。それよりも、私がすべきことは別にある。


切れ味の良さそうな大きなナイフが転がっている玄関を通り過ぎると、そのまま広いリビングに続いており、扉に近い場所でローゼンは殺人犯を引き倒している。そして、更にその奥に視線を向けると、両腕を縛られたまま、天井から伸びたロープで宙に吊るされているノネットがいた。猿轡をされ、涙を流しているその瞳に光を見て私は叫んだ。



「ノネット!ノネット!!」



ノネットの元へ転びながら走り寄る。すぐさまノネットの口にかまされた布を解く。ノネットは泣きながら私の名を何度も呼んだ。私は背伸びをして、ノネットの腕を縛るロープをローゼンに渡された短剣で切りつけ慎重に外していく。あらかたロープを解くと同時にノネットの体に傷がないか目を走らせた。明らかに切れたり流血しているところはなさそうだと判断しほんの少し安堵する。そして、ようやく地面に足を付けたノネットを、私は支えようとしたものの支えきれずそのまま共に床に倒れ込んだ。倒れ込んでから、ノネットの顔を間近で確認した私は、赤く殴られたような痕のついたノネットの頬に気を失いそうになった。しかし、幼子のように私に抱きついて涙を流すノネットの声に私はなんとか意識を手放さずに済む。そして、その頭に背に腕を回し、穏やかに大丈夫だと繰り返した。



「しぇ、りるちゃん、しぇりるちゃんっ!」


「大丈夫よ。もう、大丈夫。私だけを見て。あなたのことは私が守るから」



柔らかなその体を優しく撫でさすりながら私も泣いていた。暖かな大切な熱を感じることができる、それは人が生きている証。私が決して、失いたくなかったもの。


けれど、そんな私たちの感情を踏みにじるかのように、この世で最も薄汚い絶叫がこだました。



「おれの、俺のノネットに触るなあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


「黙れ」


「グッヴゥヴッァア゛!!!」



ローゼンは冷たい声と共に肩に突き刺さした剣を捻ったらしい。男が激しい呻き声を上げた。けれど、それ以降も男は喚くのをやめなかった。

私は必死にノネットの両耳を塞ぐしか出来なかった。

何度も、何度も、ローゼンに痛めつけられても、黙るように怒鳴られ脅されても、その男は決して口を閉じようとしなかった。何度か、骨が砕けるような音がしたけれど、それでも、男は黙ろうとしなかった。



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