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模倣犯の覚悟



「さっき、家の中からノネットが襲われてるような声が聞こえたの。もう、騎士団を待ってる余裕はない。私たちで家の中に入って、あの男を止めるしかない。ローゼンには、あの男を無力化してほしい」



言葉で言うのは簡単だ。願うのも。けれど実際にはそれがどれほど危険で難しいことか、想像しないわけじゃない。けれど、今はこれが最善なのだ。私では、あの男を無力化するなんて不可能だ。時間稼ぎくらいは出来るけれど、それだけではノネットを助けられるかわからない。



「こんなこと、あなたに願うのは間違ってるってわかってる。だから、今からでも、嫌なら嫌と言って。ただ、その剣を貸してもらえれば」



私は再びローゼンの腰元に下げられた剣に手を伸ばす。そんな私の手をローゼンはぎゅっと両手で掴んだ。大きなローゼンの手は私の片手をいとも容易く包み込んでしまった。驚いてローゼンの顔を見上げる。ローゼンは、涙に濡れた眼差しで首を横に振った。



「ダメだよ。俺は、もう、とっくの昔に、シェリルちゃんに命をかけてる。君を守るために俺の剣はあるんだよ」



ローゼンは私の手を握ったまま、まるで祈るように私を見つめる。その覚悟の強さに、私は全身の毛が逆立つのを感じた。

ローゼンは、今まで、どれほどの覚悟で、日々を過ごしていたのだろう。私が何事もなかったと、言い切ったあの日々を、ローゼンはそれを守るために、ずっと私のために、命をかけてくれて、いた?



「シェリルちゃんの大切なものは、俺が守るから。だから、シェリルちゃんはここで待ってて。大丈夫。俺、強いんだよぉ」



私の手からローゼンの両手が離れた。あまりにあっさりとしたその動作に私は咄嗟に何と言えば良いかわからなかった。

けれど、私の体は当然とばかりにローゼンの体に近付く。頭上から大きく息を飲む音が聞こえた。


うんと背伸びをして熱いローゼンの首に両腕を伸ばしその体を下へと引き寄せる。

そして降りてきたその耳に唇をつけて、私は囁く(鼓舞する)



「模倣犯が、本物を、喰らってやりましょう」


「うん。シェリルちゃん」



それは、絶大な効果でもってローゼンの闘志を滾らせる。私が首から両腕を離すと、ローゼンは瞳を爛々と輝かせていた。そして、コクリと頷いて、真っ赤な顔のまま、ノネットの家の扉を勢いよく蹴破って中に入って行った。





あぁ、ローゼン、お願い。ノネットを助けて。



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