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黒い鬼の詩  作者: ちゃぺ&しろ
4/10

序~鬼の色~

 黒が素武多の腕を食べ終えると、なんとか普通に歩けるようになりました。


 「思い出しました…全部ではないですが、自分が鬼だということは、はっきりと…」


 「そうか…ならばその角も、早く隠した方が良い」


 「角…?」


 すると桃太郎は、刀に付いた血を拭き取り、鏡のように黒の姿を映しました。


 そこに映っていたのは、少し長く、所々つんつん跳ねた黒髪。まだあどけない、少年のような顔立ちの男でした。

 しかし普通の少年と違い、頭の両側には、上の方へと反り曲がった、禍々しい角がありました。


 「う…うわぁっ!!」


 黒は自分自身の奇妙な姿に、思わず声を上げました。


 「どうした。角の隠し方も思い出せぬか。腹が満たされたなら、簡単だろう」


 「いえ…隠し方以前に、自分に角があったことも忘れていたので…」


 「そのまま外へ出たら目立つ。角を消したいと念じるだけでいい、早くしろ」


 桃太郎に言われて、黒は力一杯念じましたが、どうしても角は消えてくれませんでした。


 「駄目です…」


 「そうか…ならば、切り落とす」


 「へっ?」


 すると桃太郎は、一瞬で両方の角を切ってしまいました。


 「あ…あれ?」


 やはり黒には、桃太郎の動きが全く見えませんでした。


 「服もぼろぼろだな…仕方ない、これでも着てろ」


 桃太郎は、自身が羽織っていた毛皮の外套を黒に被せました。


 「あ…どうも…」


 「さあ行くぞ…と、その前に後始末が残っているな…」


 桃太郎は、周りに転がった死体の山を見て言いました。


 「後始末って…?」


 黒は嫌な予感がして、聞き返しました。


 そして桃太郎の持っていた刀を見てみると、なんと突然、刀が燃え上がったのです。


 「ちょ…ちょっと待っ……!?」


 嫌な予感は、的中しました。


 「神業・火叢之輪太刀(ほむらのわだち)!!!」


 刀が振り下ろされると、爆発と共に、辺りを炎の壁が囲みました。


 「ひょえぇぇぇ‼」


 黒が悲鳴を上げますが、桃太郎は刀を仕舞うと、すたすたと出口へ歩いていきました。


 「置いていくぞ」


 「ま…待ってくださ~い!!」


 黒は熱さに耐えながら、炎の向こう側へ消えてしまった桃太郎を追いかけました。




 「ぜえ…ぜえ……、も…桃太郎さん…?」


 「桃太郎でいい。何だ、黒」


 外へ出ると、黒が息を切らしながら、桃太郎に言いました。


 「や…やり過ぎですって!これ、どうするんですか!?」


 黒が指差した先では、小ぶりの城のような建物が、めらめらと燃えていました。


 「あぁ、少し激しいな……」


 無表情で燃えさかる城を見つめる桃太郎でした。


 それを見て黒は、「て…天然だ…」と呟きました。


 「誰が天然だ……すぐに消す」


 桃太郎にはしっかり聞こえていました。

 そして桃太郎の刀が、今度は水を纏っていきました。


 「神業・細雨降(さざめふらし)!!」


 桃太郎が刀を振り上げると、空が光りました。

 すると雨が、…凄まじい雨が、突如として降り注ぎました。


 「うぎょあぁぁぁ!!目が、目がぁ~っ!」


 黒は、目も開けられない程の雨に、のたうち回りましたが、桃太郎は平然としていました。


 何秒かして雨は止み、城は焼け跡となりました。そして…


 「ごば、ごばばばば……」


 「どうした、黒」


 目を回して倒れている黒に、不思議そうに問う桃太郎。


 (やっぱり天然だ……)


 と、黒は心の声で突っ込むのでした。


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