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黒い鬼の詩  作者: ちゃぺ&しろ
3/10

序~鬼の音~

 「す…素武多様がやられた!?」

 「こいつ…化け物だ…!」


 自分たちの主があっさり倒されてしまい、部下の兵士たちは皆取り乱してしまいました。

 刀の男は、その隙を見逃す筈もなく、次々と残党たちを斬り伏せていきました。


 「うがああああ‼」

 「ひぃぃぃ!!!」

 「た…助け……ぐはっ」


 ほんの十数秒で、皆殺しでした。


 「さて…終わったぞ……」

 

 振り向いて、黒鬼へと近づく刀の男。その姿は、鬼よりも鬼らしく見えました。


 「あ…あなたは一体……」


 動けないまま、黒鬼は尋ねました。


 「俺は…」


 と、刀の男が答えようとしたところで、


 「ぶひぃ~っ、ぶひぃ~っ……」


 豚…ではなく、素武多が立ち上がりました。


 「何だ、まだ生きていたか」


 お腹の脂肪が幸いしたのか、血を流し続けながらもまだ、素武多はまだ息がありました。


 「ぶはぁっ!……き、貴様、何者……」


 素武多は吐血しながら、刀の男に問いました。


 「俺は……只の人間だ」


 素武多の方ではなく、黒鬼に向けて、刀の男は答えました。


 「う…嘘を吐くなっ!わざわざ鬼一匹を助けるのに、これだけの事をするなど……貴様も鬼だろう!!」


 素武多は息も絶え絶えに、刀の男に言いました。しかし……


 「黙れ」


 「ぶがっ」


 黒鬼が瞬きする間に、素武多の首が宙を舞いました。

 ごとり、と生首が落ち、素武多の体は倒れ、今度こそ絶命しました。


 (は…早い…。全く見えなかった……)


 すると刀の男は、素武多の首を拾い上げ、黒鬼の前へと投げつけました。


 「な…何をするんです?」


 転がった素武多の首は、まさに豚の生首そのもので、黒鬼は思わず後退りしました。


 「何って…食べないのか」


 「えっ」


 「腹…減っているんだろう。それとも、腕の方が良かったか?」


 (食べる…?何を言っているんだ、この人は)


 刀の男の言うことが何一つ理解できず、黒鬼は男に聞きました。


 「あの……、そろそろ教えてくれませんか?あなたが何者なのか、そして僕が何者なのかを」


 その問いに、少しの間沈黙した後、刀の男は答えました。


 「俺は…桃太郎という。さっきも言ったが人間だ。そして君は……黒鬼。"黒"と呼ばれている……鬼だ」



 鬼。


 (そういえば、この豚も、鬼がどうとか言っていたような…)


 黒鬼の黒は、何故か急に素武多が美味しそうに見えました。


 「やはり、自分が鬼という事も忘れていたか…」


 桃太郎が言うと、今度は素武多の切り落とされた右腕を拾い、黒に差し出しました。


 「ちなみにこいつは、豚の姿をした妖怪に見えるが人間だ……旨そうだろう」


 黒は、ついに空腹に耐えかね、差し出された腕に喰らいつきました。

 そして、人間の肉を味わったとき、思い出しました。


 (そうだ…僕は、鬼だった…。人間を食べる、鬼だったんだ……)


 



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