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序~はじまりはじまり~
昔々、人間と鬼、そして妖怪が住まう世がありました。
鬼は人間を喰らい、人間は鬼を斬り捨て、そして妖怪は、鬼と共に人間を襲う者、人間と暮らす者、或いはどちらにもつかず、隠れすむ者など、中立の立場におりました。
これは、そんな世界の、ある一人の鬼と、その仲間たちの物語です…。
黒鬼が目を覚ますと、そこは暗い牢獄でした。
「あれ…どうして僕は、こんなところに?」
黒鬼は、何故自分がここにいるのか、それどころか自分は誰なのか、何も思い出せませんでした。
「おーい」
しかし返事はありません。それどころか人の気配すらありません。
「腹…へった」
暗闇、孤独、そして空腹。黒鬼にはそのどれもが耐え難いものでした。
「よし、死のう」
「それはまだ早いぞ」
不意に誰かの声が聞こえ、黒鬼は驚きながらも、声の主に問いました。
「だ…誰だ?」
すると声の主は抜刀し、一閃。
その瞬間、黒鬼の前の鉄格子は、いとも容易く切り割かれてしまいました。
「君を、ここから連れ出す」