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9 茶会の後始末

王宮に来て3日目、いつもの平静を取り戻しアルシノエは順調に編んでいく。

前日の茶会の一件よりアルシノエはご令嬢方に知られる存在になってしまった。

そのほとんどはアウラ寄りの悪い印象であったが。

それでもアルシノエに親しくしてくれる友が出来た。

茶会の時助け船を出したニーナ・リュコス子爵令嬢、クレイル伯爵令嬢、高級家具で財を成した商家の娘 タルシア・ノージャ、候補者の中で一番北のバーニア王国のリチェンツァ王女、等々多数の同年代のご令嬢方である。

あの一件以降アルシノエはアウラの姿を見ていない。

噂によると謹慎させられているという。

要因となったであろうアルシノエの心中は複雑だ。

そんな情報を持ってきたのはニーナの守役の一人ギザーロが場所の提供を条件に勝手にやってきた。

「ニーナ様の癇癪が収まらない。とばっちりはご免だ。」

「そんなにひどい方なのですか?」

「普段は思慮深い方だ。毎度、癇癪の理由は侍女殿にもわからんそうだ。ニーナ様は情報通だ。仲良くするのはためになるぞ。」

こつこつと歩いていく音を聞きギザーロはやれやれと言いながら出て行った。

そんな毎日を送っていたアルシノエにやっかいな客が来たのは王宮に来て8日目の夕暮れのことである。

レース編みを一時止めて詩を考えていたとき、ノックもアポイントもなしに扉がどーんと全開にされた。

初日に思いっきり茶器を壊しアルシノエに熱々のお茶をぶちかましたご令嬢が侍女と守役を引き連れて訪ねてきた。

起ったような泣いたような真っ赤な顔をしていた。

「先日は・・・」

深々と頭を下げた。どうやらそれをしに来たようである。

アルキュオネは二人にお茶と菓子を出す。

アニタ特製の菓子だ。

「せめて、お着替えをなされば?」

口元を扇子で隠すアウラに言われ、早々に帰って欲しいと思うアルシノエではあったが確かに今のアルシノエの服装は失礼に当たるのですぐさま夕食の時に着ていく服に着替え、応対することにした。

プライベートで自由な時なのでアルシノエは人前に出るような姿をしていない。

直前でも良いから一言来ることを聞いていればもっと、掃除もしたし髪も綺麗に結い上げる時間もあっただろうに、とアニタは侍女達をにらみつけた。

着替え終わり菓子をほおばるアウラの姿は子供らしい愛らしい様子を見せていた。

アルシノエも着席すると食べるのを止めアルシノエの手を握る。

「やけどや切り傷などはありませんわね。私が来るとわかっていらっしゃったはずですのに、そのお姿はいただけませんわ。」

「たいしたこともありませんでしたわ。」

すまして答える。

ここで文句を言えば角が立つし、後々面倒だからだ。

「何をされているのでしょうか?」

机の上のレースを勝手に持ってくるアウラ。

それを一切とがめないアウラの侍女達。

これはまた、困ったご令嬢だなとアルシノエは見ている。

「ここをどうしようかと考えていたのですわ。」

編み途中のレースに出来た絡まった部分をさす。

興味深げに聞いてきたのでつい詳しく説明をしてあげた。

礼も言わずそそくさとアウラ達は出て行った。

茶や茶菓子を片付けるマイアはあきれ顔だ。

「懇切丁寧に教えて良いのですか?」

あぁ、これね。とアルシノエは編む手を止める。

「試作品よ。こういうときでないと上質な絹糸なんてさわれもしないでしょう?」

にっこりと笑う。

アニタはそのような時間的余裕は無いはずだと焦る。

その様子を見てもアルシノエは笑っている。

「提出用はどうされたのですか?」

「ほぼできあがっているから。でも、詩が出来なくて困っているの。一緒に提出でしょう?」

「そうみたいです。」

「間に合うかしら?」

「まだどの候補者も提出されていらっしゃらないそうですよ。詩の長さは自由だそうですから短くてもよろしいかと。」

「それだと、レース編みとのバランスが良くないわ。」

「難しいですわね。」

他人事のようにナーリィスはほほえむ。

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