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6 茶会の初開催

リューナン姉妹の指摘通りこの手の話には疎いためアルシノエは先にレース編みをすることにした。

レース編みは普通数人で話ながらするのが一般的だ。

「話ながらするとデザインを盗まれる危険がありませんか?」

「そうね。一人でちまちまするわ。さぁ、原画を描きましょう。」

ざっくりとパターンをいくつか書きそれをどうつなげるか頭を悩ませる。

「大きさから言えば、根を詰めれば5日程度でできあがりますか?」

窓を開けると、若葉の良いにおいが部屋の中へ充満していく。

このまま眠ってしまいたくなるが、そんな時間はない。

国王側から用意された守役、ナーリィスが訊ねる。

机にはいつの間にか数枷の生糸シルクの束が置かれていた。

「材料は支給されるのね。」

レース編み用の編み針を持ってこさせ試しに編み始める。

昔、まだアルシノエが5つくらいの時。

母ヘルミオネに手ほどきを受けながら編み物をしていたことを思い出す。

父に代わり領主の仕事をしながらであったので最初の1段目を編み終えると仕事へと戻ってしまった。

残りは侍女達にあれこれ教えてもらいながらどうにか完成させお披露目すると母が良くできたわねとほめてくれた。

その言葉をきっかけにアルシノエは一人でこつこつと練習し、本に載っているものであれば自力でいろいろな編み方で編めるようになっていた。

「余りこっていたら間に合わないし、かといって質素すぎるのは失礼でしょう?」

うんうんとあーでもない、こーでもないと試行錯誤をしているとき予想外の所から声をかけられた。

「凝るなら中心部を華やかにすべきだな。」

隣には守役、フェノロサ達と同じ立派な制服を着た青年が勝手に座っていた。

別のご令嬢の守役だろうか。

目をぱちくりしているアルシノエは隣の青年に問いかけた。

「あなたは?」

「あぁ、俺?隣のリュコス家の守役、ギザーロ。明日から茶会があるとニーナ様からの伝言でね。ちょっと寄らせてもらった。」

「毎日お茶会も開かれるそうですよ。」

「えー。」

お茶会、それは参加者同士の情報交換の場。

言葉巧みにお茶とお菓子を楽しみながら相手の弱みを握ったり、噂を確かめたりするものすごく気を遣う時間だ。

アルシノエにとって舞踏会や夜会のようにダンスを踊ることが無いのが救いだ。

「部屋番号通りにホストを務めるのがしきたり。君は、最終まで残ったらホストになるかもな。」

ホストにでもなれば茶会の運営をして参加者をもてなさなくてはならない。

お茶の種類、お菓子、場所などなどを粗相がないように進めなくてはならない。

「絶対話してはいけないわ。どんな詩を作ったとか。盗用されてしまうから。えぇ、とりとめのない事だけ。」

はっとして隣を見る。

「それと、貴方。私のデザインをニーナ様に漏らさないでくださいませんこと?」

「もちろん。我々、守役は課題についての手助けは一切行わない決まりだからな。」

「良かった。安心して進められるわ。」

「まぁ、第一の課題は大丈夫だろう。」

勝手な憶測をしてギザーロは出て行った。


その後、茶会と聞いて急いで3人の侍女達が茶会についての情報などをいろいろと入手してきた。

「いろいろ話を聞いてきたんですけど、全員で50人余り。遠くは北部バーニア国のお姫様までいらっしゃるそうです。年齢も10歳から30歳まで幅広く応じていらっしゃるそうです。」

年齢差20歳。

だいたい20歳前後と相場が決まっていそうな気がしたアルシノエ。

アルシノエが好きな小説などでもだいたいそのくらいの娘が側室などになっているものが多かった。

「幅、広すぎない?」

「年若いご令嬢は教育を施してからの側室と言うことでしょうね。」

アルシノエの疑問にフェノロサが答えてくれた。

あーあといいながら肩を落とした。

「そういう方針なのね。」

「あと、今回の課題で半分くらい落とされるそうです。」

「まぁ。では気合いを入れて作りましょう。」

アルシノエは再びレースを編み始めた。

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