49 国王と大公の結婚
国王の挙式日前日。
晴れの舞台に向けての最終調整に余念がない。
もちろん、ミューイ王国一の貴族大公家も結婚式に向けて忙しく動き回っていた。
そんな中、国王は大公を自分の執務室へ呼びつけた。
セニア卿ほか取り巻き達を従えて来たが、セニア卿とディオミディスの二人で執務室に入ると、開口一番にある事実を告げた。
「早速だが、無理だ。」
「で?今とてつもなく忙しいのだが?」
「結婚許可がどんなに早く出してもアルシノエが規定の年齢に達していない・・・」
無理もない話である。アルシノエを大公妃としたはいいものの出会った当時13歳。それから1年と少し経ったものの未だ14歳。
元々、大公は大公妃を選出して1年は素質などを見極めるため結婚をすることができないしきたりであった。
その上にミューイ王国では15歳にならないと結婚ができない。
無論、側室(基本ミューイ王国では国王と大公にしか認められていないが、大公には正妃が亡くなって新しい妃を入れることが難しい場合などの条件がある。)も15にならないと閨を共にできない。
「そこを特例で操作してもさぁ。示しがつかないでしょ?」
「そこで提案なんだが、明日使うハーミルシュ神殿を特別に使用する許可を与えようと思う。」
「国王以外の結婚式を行えない・・・あの?」
国王は一人の王妃を決めたらそこで結婚式を行う。
側室とは非公式で契約書に書き記すのみであるのだが、さすがに王妃ともなると周囲へのお披露目と権威を示す必要性がある。
建国以来ハーミルシュ神殿を使えるのは法律により国王のみであった。
そこを法改正してディオミディスとアルシノエの時だけ特例法を発布して挙式することを認めることで長老会との話はおおむね決まったとの事後報告であった。
「そう。代理としてディオミディスは政務を行っていたから。資格はあるでしょ?」
言い訳と言われれば苦しいが大義名分は充分だろうとニヤニヤしている。
そうだ、この際だ。と事件の前にセニア卿とみていた領土地図を持ってこさせた。
「それとこれなんだが。」
地図を見せる。
すると、オレスティスはすぐに仕事モードに頭を切り替えた。
「なるほど。管理がこれではしにくいと。そうだな。」
セニア卿とディオミディスの話を最後まで聞いてよし、根回しはするから配置換えをする!と決めた。
「はい。長老会にも伝えてきます。」
「うむ。では。早速宜しく頼む!」
とセニア卿は執務室を出て行った。
確実にセニア卿が離れてからもう一つ大事な話をした。
「それと、大公としての仕事。あれはこちらの義務だ。返して貰おう。」
あの件の事もあるしと釘を刺した。
「よかろう。というか長老会が決めたことだが。」
「そのことついてはこちら側に隠し事をされていた件を盾に言い含めることにしよう。」
アルシノエとディオミディスの挙式はオレスティスの伝えた通りと決まった。
それから1ヶ月後、ディオミディス達の言い分が通り配置換え、本来大公としての仕事を取り戻す事ができた。
大公家、悲願であったディオミディスは取り戻すことができたのであった。
それから、アルシノエにも大公妃として魔法の授業から解放されたと思っていたがいろいろと勉強をすることとなったのはまた別の話。
幸にして学ぶことの意欲、好奇心はあったのでさほど苦で無かったのは救いであった。
オレスティスとリチェンツァの結婚式には国内外から沢山の参列者があり大変賑わった。結婚式はしきたり通り終えるまで1週間行われた。
国中が国王の結婚を祝福した1週間となった。
それから1年ほど後。
アルシノエが15歳になった翌月大公と結婚した。
「我らも参列する」
と、オレスティスとリチェンツァ夫妻と側室達、長老会の主だった面々も参列した。
懐かしい声がして振り向いた。そこには幼い我が子を抱いたタレイアとニーナがいた。
「「「アルシノエ様!」」」」
「タレイア様?!ニーナ様も!」
「お幸せそうですわねぇ。」
すでに結婚し母となった友人タレイアも夫と共に参列してくれたのだ。
ニーナはまだ独り身で、ディオミディスとの密約もありさほど時間もかからずに結婚できるのでは?と
「私見つけましたの。」
「お兄様?!」
ニーナの視線の先にはアルシノエの次兄 がアルシノエの元へやって来ているのが見えた。後ろには長兄ミハリスがいた。
ニーナはまぁ!と乙女モード全開。
「陛下の挙式の時にお見かけして。」
それからずっと探していたそうだ。
ミハリスはあの事件のとき、オレスティスに報告しに行った際ニーナとアルシノエに挨拶をしていたりして知っていたのだが、エフシミオスの仕事は一種の暗部なのでそうそう見かけないのだろうとアルシノエは推察した。
「アルシノエの兄君。当人にも話をつけるのが先だ!」
「次兄に当たりますの。あ、のっ!?」
ねぇ、お兄様とアルシノエがニーナに言うがアルシノエとタレイア達そっちのけで追いかけっこが始まってしまった。
よく知らない女性に追いかけられて思わず走り出すアルシノエの次兄エフシミオス。
長兄ミハリスに目も暮れず追いかけられている。
「「大丈夫ですよね?」」
アルシノエと長兄ミハリスはひぃひぃ言いながらニーナの追尾を逃れようとする次兄を助けることにした。
結婚式に差し障りがあるのを危惧したのだ。
「正式なお話をしてから」
という事で話を先延ばしする事に成功した。
そんなこともあったが、国王の時ほどでは無かったとは言え盛大に挙式がおこなわれた。
アルシノエは無事にディオミディスと婚姻を結び、晴れて大公妃となった。




