47 王妃選出
その後、長老会会長アーノルドが関係者を全員呼び出し申し渡しが行われることになった。
「二人王妃候補が減ったので功績のあった者、一人増やすことにした。」
大方誰が王妃候補者になるのかはわかっていたが、誰もひそひそと話すことなく申し渡しを静かに聞いている。
「アンゲラ・コーミラを再選出することに決まった。」
その後、国王が解放されたことによってボンボン条の解除が言い渡された。
それからオレスティスが無事に事件が終わったことを告げ皆に謝罪した。
アーノルドがそれでは王妃選出を行いますというとさすがにざわめきだした。
アルシノエの見立てではアンゲラが選ばれることはないだろうなとは思っていた。
「では、王妃をお呼びください。陛下。」
今までの行動などを踏まえ様々議論をしてきた中で決まったことだとオレスティスは経緯を説明した。
「ということで、リチェンツァ姫。君を王妃として選任する。」
「ま。順当だな。」
こっそりとディオミディスは隣にいたアルシノエに耳打ちするように言った。
それに続くようにユーペ公爵夫人。
「一番功績があった人物・・・ねぇ。」
悔しそうなアンゲラ。彼女は国王への愛はほかの女性よりも強い。
そんな中でほかの側室や王妃をいじめやしないかとアルシノエは不安な顔をした。
「周りの目は厳しいですしね。」
ニーナは自慢の噂などの情報を駆使し笑っている。
「オレスティスは全員を正室側室関係なく平等に扱うさ。やつはそういう男だ。まぁ、嫉妬深い場合は反省として離宮に軟禁されるだろうが。」
そういうしきたりでね。とディオミディスは苦い顔をする。
「そのまま後宮に戻れない場合や処刑される場合もあるからな。特に世継ぎとなる王子に危害を加えたり…」
その話はあとでお聞きしますわとアルシノエは式典に集中する。
アルシノエたち女性陣は王妃に選出されたリチェンツァに祝いの言葉を伝えに行っている。
そのすきに退出しようとするオレスティスを捕まえた。
「で、いつなんだ?」
「準備が整い次第かな?あとで、詳しく話すから。」
そうか。いやそれではないと呟く。
「では失礼する。」
そういって出ていこうとするオレスティス。
「おい、オレスティス。約束はどうした?」
「ん?」
「事件を順を追って説明してもらおう!」
「あーそっちね。なら今から話そうか。君の婚約者様も一緒にね。執務室へ来ると良い。」
これは、説明するつもりはなかったなとオレスティスに疑いの目を向ける。
騒ぎが落ち着いてから自室へ戻ろうとしたアルシノエを連れて事件の間ディオミディスが執務をとっていた部屋へと向かう。
「ここからは3人だけで。いいね。」
とオレスティスはそれぞれの付き人に告げ部屋には3人だけになった。
簡単にあらましを伝えた。
ナウサ王国のグリフィナでなくバーニア王家の姫を妻にと勝手に決められたのは2年ほど前。
それから各方面からどうにかならないかと相談を持ち掛けられこの計画を練って実行したこと。
もちろん、長老会もこの計画を知っていたこと。
そして、アルシノエの相談事を追っていくと反乱者にたどり着いたことも。
「では、あの件はここまでの大事件になってしまったのですか?」
「未然には防げたと思うが。」
「だから、当事者にも伝えろよ!」
でもね、ディオミディス。とオレスティスは反論した。
「話さないほうがいいこともあるだろう?この話が漏れてしまっては尻尾をつかめない。」
「確実に捕まえるまでは泳がせておく、か。」
「悪人は捕まえられるのでしたら良いのですわ。お母様にも”悪人に利用されそうになってしまいそうになりましたが未然に防げました”と報告しますけれど。」
「こちらとしても文書で通知するよ。罪人を捕まえたら、ね。」
「2つの事件を無事に解決できてよかったですわ。」
そうだよねとオレスティスにっこり。
「彼らがこの期に乗じて内乱を起こそうとしてくれて。」
「それを起こさせるためにこれを計画したのではないかと俺は。」
ばれちゃしょうがないと言った。
「丁度よかったんだよね。その話をわざとリークさせて騒動を起こさせる。上出来!」
「やっぱり。」
「でもね、これはここだけの話。誰にも話してはいけない話。」
「はい。」
「もちろんだ。」
この話を二人はその後、口外せず墓場まで持って行った。
「ボンボン条を発動させディオミディスには国王の溜まった仕事と事件の陣頭指揮を、アルシノエ嬢は人質になってくれた。君たちにはそれなりの礼をしなくてはいけない。気長に待っていてほしい。」
と言いオレスティスは約束して話はお開きになった。
帰り際長老会の一人がオレスティスに耳打ちをした。
それを聞くとオレスティスは部屋を出ようとする二人にうれしそうな顔で結婚式は半年後だそうだ、と告げた。




