46 帰国
タオエ皇国皇太子ビクトルが命令を出す。
「ここに、目的は達せられた。ゆえに帰国すべし!」
彼に付き従っていた人物は基本、タオエ皇国に仕えている者たちで構成されている。
中にはごろつきのようなものも混じっていたが、彼らにもタオエ皇国へ到着した暁には恩賞を与えるとビクトルは約束していると姉に話しているのを
「そして、人質を完全に開放せよ!」
事件が解決したということで、上官たちが速やかに部下たちへ命令を出していく。
その命令により少しずつ城の外へと隊列が伸びていく。
城の周りでは双方がにらみ合う状態であったが続々と兵士たちが出ていくが警戒を怠らない。
「では周囲の武装解除を・・・」
そうだなと国王代理が命令書にサインをした。
「完全に兵士たちが国外へ出たら我々の武装解除を行う。その後、この事件に乗じて内乱を企てた者どもをとらえ厳正に処罰を行う。それと同時進行して国境を元に戻す作業に取り掛かるように。」
ディオミディスは長老会のナンバー2にそう告げた。
「立派だよ。代わりに国王をやらないかい?」
冗談めかしてオレスティスが言う。
グリフィナ姫がタオエ皇国へ行くのは兵士たちが帰国してからとなっている。
およそ、10日後、無事全員が帰国したと手紙が届いた。
いよいよ出発の時。
グリフィナがほかの正妃候補者たちに最後の願いを伝えに来たのは出発直前だった。
「ご迷惑をおかけしましたわ。クニグンデのことをどうか。」
「お姉様。」
クニグンデをグリフィナが抱きしめた。
もう、姉妹が顔を合わせることはここではないだろう。
泣いてぐずる妹の肩をしっかりとつかむ。それはまるで幼い妹に言い聞かせるように。
「いつかは一人で生きていかねばなりません。よいですね。」
「皆様。お世話になりました。」
最後にそう伝えて馬車に乗り込んだ。
「姉君は幸せになるのです。さあ。」
笑顔でマデリネ、ヴァシアとネフェリィがうつむいているクニグンデに姉の旅立ちを知らせた。
その場に居合わせた関係者全員でグリフィナ達を見送った。
二人の姉妹は涙を流しながら別れを
グリフィナたちが見えなくなってから女性陣は皆もらい泣きをしていた。
そしてグリフィナが出立してから1時間後、デレシア皇女もバーニア王国へと旅立った。
さすが、タオエ皇国の皇女といった威厳ある旅立ちだった。
二人が旅立ってからアルシノエは気になっていたことを聞いた。
「ですが、リチェンツァ様。皇后になれなかった姫はどうなるのですか?」
そう、尋ねるとあらあらとリチェンツァが嬉しそうに答えてくれた。
「嫁ぎ先はありますよ。」
本来ならばマレアン王国の王子のもとへ嫁ぐことが決まっていたのだ。という。
「双方の本心も憎からず思っているのはだれの目にも明らかだったのですよ。ですけれど。」
3人の王妃はあまり乗り気ではなかったのだという。
大丈夫なのですかとアルシノエが尋ねると問題はないだろうとの返答であった。
「異母兄上がしっかりと説得されると手紙には書いてありましたわ。時間はかかりそうですけれど。」
あの事件以来、異母兄との関係はよくなっているようで時々手紙のやり取りをしているそうだ。
その後、異母姉が無事に本来の嫁ぎ先へと向かったとアルシノエが聞いたのはそれから半年後のことであった。
国の名前があやふやですが、申し訳ないです!




