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45 つきそい

リチェンツァとアルシノエは侍女たちを連れて城の一番広い会議室まで来た。

「ここからはわたくしと二人だけで進みますわ。」

そこには、デレシアとクニグンデ姫が先に用意された椅子に座っていた。

「何を?」

「ただ居てくだされば問題有りません。」

デレシアが会釈をしてどうぞこちらへと促した。

「私も見届け人として同席しなくてはならないのです。」

「はい?」

「交渉の場で何かしらが有れば・・・私たち死んでしまいますの。」

「いや。えい、いえ???どういう。何の冗談ですの?」

「そういうしきたりなのですの。困ったことに、 でしてね。」

「国王代理の婚約者ということで、ですか?」

「もちろんですわ。」

じろりとにらまれた二人は小声で話すことにした。

この人物は最悪4人を処刑するためのであるとリチェンツァから後から聞かされたアルシノエは明らかに動揺した。

クニグンデも場の雰囲気と処刑の言葉に顔面真っ白になって震えていた。

「気をしっかり持ってくださいね。」

デレシアが二人の背中を優しくなでる。

こ、こんなところで死にたくない!

どのくらい時間がたっただろうか、アルシノエの意識が飛んでいたらしくデレシアとリチェンツァが声をかけ続けていた。

「アルシノエ様、アルシノエ様。」

「あ、の??」

アルシノエはデレシアとリチェンツァが立っていたので思わず自分も立ち上がった。

「クニグンデ様も大変なことになっていますわ。」

見るとクニグンデは失神していた。

「クニグンデ様!お気を確かに!!」

「はっ!あの・・・??」

クニグンデはあたりを見渡す。

座っていた3人が席を外して立っていたのだ。

「充分ですわ。」

「お二人は平気なのですか?」

わたくしは以前経験しているのですわ。あの時は訳も分からず座っていました。誰にも処刑だのという言葉を教えてはくれませんでした。後から聞いたら教えてくれましたけれど。」

「そう、我が一家のもめごとが飛び火してね。でも、すぐに解決したのよね。」

はぁ・・・???

「交渉の場にいなくてはいけない当事者達が居なくても死、交渉決裂しても死。ですの。かつて、多数の死者を出したとか。」

笑顔のリチェンツァからそんな話が出てきてアルシノエは笑い事ではないと涙を浮かべた。

「やめてください・・・」

「どのくらい時間がたっていましたの?3時間ほどたったような感覚なのですけれど。」

クニグンデがあわあわと焦っている。

リチェンツァもデレシアも答えなかったので死刑執行人が答えた。

「1時間もたってないですが?!」

クニグンデが泣きそうな声で尋ねた。

「もう、終わりましたの?」

「もとからこうなることを水面下で決めていたようですしね。」

デレシアは死刑執行人に礼儀正しく別れの挨拶をする。

リチェンツァ、アルシノエ、クニグンデが後に続いた。

「はい。交渉の山は終わりましたわ。これで私たちも解放です。」

にっこりと一仕事終えたといわんばかりのリチェンツァがアルシノエの手を引いて会場をを後にした。

クニグンデはデレシアに背中を支えられて退出した。

退出後、次の間で待機していたリューナン姉妹はアルシノエを抱きしめていた。

リチェンツァの侍女たちも涙を流す者、ご無事で…と主の無事を喜ぶものとでにぎやかだった。


国王の執務室。未だ正式解放されていない国王に代わり大公ディオミディスが座って執務をしている。

「結果。グリフィナ姫がタオエ皇国へ嫁ぎ、デレシア皇女がバーニア王国へ嫁ぐことが決まった。

なお、皇女がバーニア家へ嫁ぐことにより正室1人側室は設けることができない法律がすでにバーニア王家にはあるためもし子供が生まれなければ親類から姫を嫁がせること。また、この事件で迷惑をこうむった国々にはタオエ皇国からそれぞれの国々に100万コーダンを支払う。」

ちなみに100万コーダンはおよそ10億円程度である。

速報を聞きよくやるよなぁと敵ながらあっぱれといったように会議を終えたオレスティスに賛辞を述べた。

ミューイ王国側は場所の提供と議長としてセニア卿が出席したくらいである。


このことはすぐに城内に広まった。

話し合いの結果、グリフィナをタオエ皇国の皇太子の妃に据えバーニア王家の姫との婚姻を次代にすることで決着がつき、人質達の正式な解放宣言が採択された。

また、デレシアがバーニア王太子との結婚が取り決められた。

それを知ったアルシノエは不思議そうな顔をした。

「次代ですか?」

「ご説明しましょう。お嬢さん。」

この事件の発端となったタオエ皇国の皇太子ビクトルが優しげに説明し始めた。事が自分の思う通りに進んでご満悦のようだ。

一連の事件を企てたビクトルが嬉しそうに説明をしてくれた。

「周辺の国々の姫君を何代かにかけて娶るという風習がありまして、ナウサ王国とバーニア王国のどちらかとなりました。ところが、我が母は独断でバーニア王国の姫をと決めてしまうという事態が起こった。本来ならば次期皇帝の意見が反映されるはずだった。」

「ですから、異母兄あにの姫がグリフィナ様のご子息の妃となることがここで決まったと言うことですわ。」

補足をする形でリチェンツァが口をはさんだ。


とにかく、この会議の円満解決により一連の事件は大方解決した。

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