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27 行き先不明

もうすぐ公立資料館の学習スペースで大公との月1回の特別な日が近づいてきたある日。

きっと、今回も来ないだろうなとアルシノエが不満そうに魔法の講義を受けていたとき、にわかに騒々しくなった。

セニア卿とその供回りがアルシノエの部屋へと押しかけたのだ。

セニア卿がアルシノエのそばにいた侍女達に命じた。

「着替え、ドレス貴重品を持て!!」

「い・・・いまから、え?」

「何事ですか?」

「ディノス師、貴方もです。」

「幸いにして荷物はこの鞄一つで充分です。」

ディノスの落ち着き払った様子でアルシノエの支度が調うまで待機していた。

ドレスに貴重品、靴等を大急ぎで馬車へ詰め込みせき立てられるように玄関へと行く。

既に母と次兄や執事達が馬車の前にそろっていた。

「では。」

「はい。お願いします。」

「元気でな。」

「へ?」

次兄のいつにない真顔の様子にただごとではないことを察した。

まさかこれが今生の別れになるかも知れないとは想像だにしていなかった。

アルシノエとリューナン姉妹、ディノス、そしてセニア卿をのせた馬車が走り出した。

アルシノエは行き先を知らない。

「書、ボンボン条176項によりお迎えに参りました。」

アルシノエは何それおいしの?といった顔をして不思議そうにその会話を聞いている。

ディノスは難しい顔をして黙ってしまった。

「うむ。」

「緊急事態ですので、急ぎます。」

御者にスピードアップを要請し、いつもの1.5倍の早さでとある場所へと着いた。

そこは、王宮であった。

アルシノエが見間違うことはない。

かつてそこに2ヶ月余り王妃選びの場として滞在をしていたのだから。

玄関ホールでアルシノエ達は降りた。

そこには一人の青年がアルシノエ達の到着をあたりをうろうろしながら待っていた。

「アルシノエ様!」

「あ、貴方はっ!」

「お待ちください。」

「急ぎます。」

セニア卿は先へと行くがフェノロサの問いに答えなくてはならない。

アルシノエが口を開こうとしたらマイアが代わりに答えた。

「アニタ・・・さん。ですが、行方がわからなくなりまして。」

急にフェノロサの顔色が悪くなった。

セニカ教の取り巻き達がアルシノエを急かす。

「手紙の返事を待っていたのですが。」

「は?」

「あ、いえ。」

「いかなくては・・・」

「あの、どうして行方がわからないのかだけ。お願いします。」

「アニタの父君、バンクシャー道場と言う道場を王都でしていたという話を聞いたことがあるかしら?」

「はい。」

「今では一番弟子にそこの道場を譲りホワム近郊の実家近くに新しく道場を構えているの。最近、ピューカ州とナウム州、アンアレム州、ゴーデル州の間にある深い森あそこで謎の集団が近隣の村や町を襲っているので立ち退かせて欲しいと依頼が来て一門総出で取りかかることになったの。」

でもね、とアルシノエが続ける。

「アニタだけが帰ってこなかった。子供たち5人くらいが敵に捕まったから代わりに捕まったのではないかという話があるの。」

「詳細はわかりますか?」

アルシノエ、リューナン姉妹ディノスがそろえ手首を横に振る。

「わかりません。近況の情報も一門の指示ですからと。それきりです。」

「ここ1年あまりにわたって変な集団がうろうろしているのはこちらにも話が伝わっています。」

「面白いことに人を傷つけず金目の物にも目もくれず食料だけを奪っていく何とも奇妙な集団です。」

「なぜ、アニタ殿を?」

アルシノエは静かに答えた。

「わかりません。きっとひどいことには…と思いたいですわ。」

アルシノエ達が来ないので先へ進んでいたセニア卿が戻ってきた。

アルシノエ達がセニア卿と共に王宮の中へと入っていった。

アルシノエ達はセニア卿の取り巻き達に強制的に或る部屋へと連れて行かれた。

「では、ご案内しましょう。」

すれ違いざまに少し休息を取るべきだわとフェノロサに声をかけたがどこかに意識が飛んでしまったようで返事がない。

身動き一つしないフェノロサだけが玄関ホールに取り残されていた。

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