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25 公立資料館

ねぇねぇとナーリィスこと、ユーペ公爵夫人がアルシノエに好奇心ありげに聞いてきた。

「公立資料館ってどんなところなの?」

「そうですね。この国の多くの名門貴族の宝物のレプリカと説明書きが乗っていてそれと魔晶球に関する物が割合として多かったです。」

アルシノエの説明を興味なさそうに聞くユーペ公爵夫人。

「つまらないわね。」

「しかも、公園だった土地を売却してしまいまして今では細い路地を抜けなくてはいけない隠れた穴場となっております。」

ミハリスの説明にも興味がないようだ。

「じいさまのコレクションルーム別館と言えば早い。だろうな。」

「あー。お父様の。でもあれ、大公家領にもあったわね。」

「友好関係にかつてあった領地にもあったような。じいさまだけではなく大公家歴代のコレクションがかなりあったよな。」

セニア卿に大公が話を振る。

「そう。他にも宝石なども所蔵されていたかと。ただ、時機などによっては展示物も変えるでしょうし。」

「いきたいわー」

急に興味を持った変わり身の早さに大公が眉をひそめる。

「宝石が好きなのはナーリィス家の血が騒ぐのか?」

「ナーリィス。この国でも有数の商会だな。」

「へぇ。」

「本名出すといけないなと思って。ごめんなさいね。」

「ミハリス兄様。」

「お受けすることにしたと伝えよう。細かい話はまた。」

「では、1ヶ月後にホワムのワーリンガ家の屋敷まで我々が参りましょう。」

「アルシノエ、アーノルド様にお礼を伝え、先に帰る。」

まぁ、お待ちになってとユーペ公爵夫人が引き留めた。


アルシノエ達が部屋へ戻った会長室にはアーノルドが一人。

そこへまたロベルトがやってきた。

「ほう。よく、タイミングを計れと。」

「悪い、悪い。うん、やっぱりな。」

「お前には無理だったな。」

「あぁ。最初から無理だろうなとは感づいていたよ。守役として一緒だった公爵夫人がいち早く見つけてた。女性ってそういうところが鋭いよな。」

ロベルトは感心したように首を振る。

「あー。これは・・・」

「だいぶんの貴族が荷担しているようだ。」

「裏がありそうだな。」

報告書をちらりと見たロベルトが部屋の片隅にいた妙齢の女性に声をかけた。

「ま、このくらい調べるのは簡単だよな。ニーナ。」

「はい。リュコス家がしっかりとお調べしますわ。」

「君には感謝しているよ。ニーナ君。」

「面白いものを見させていただきましたわ。まだ、面白いことが見つかりそうですわ。」

リュコス家は元々国王の命の元々諜報活動を秘密裏にしてきた家柄であったからか、ニーナも噂や情報収集にかなり詳しかった。

そんなニーナの話をアーノルドは思い出し、彼女にも声をかけ、アルシノエの隣の部屋になるようにしたりした。2つめの課題の後彼女は自主辞退をして去ったのはアーノルドとしては意外だった。

理由は、もっと私兵について調べたいからだと良い、その後は一度王宮を後にし、秘密裏に長老会の部屋の空き部屋に彼女の居場所を作った。

そのほかは彼女が時々持ってくる情報に耳を傾けたり事実を調べたりをアーノルドはしていた。

ある時、アーノルドはニーナにアルシノエについて聞いてみたことがあった。

「もっと早くにお知り合いになりとうございましたわ。これからも仲良くしたいですわ。」

ニーナはアルシノエに対してかなり好印象を持ったらしくやりとりを続けていた。

侍女の一人からなにやら情報がもたらされたようだ。

「ワーリンガ家のミハリス様とおっしゃる方が今からお見えだそうです。あ、あとアルシノエ様、お受けになったと。まぁ、良かったわ。」

「えぇ。わかっています。あら、王様にもお声掛けをしましょう。」

ニーナはあら喜ばしいことだわとうきうきしながらそっと長老会会長の部屋を後にした。


ユーペ公爵夫人はミハリスと大公の顔をかわるがわる見ている。

同じ男性なのにずいぶんと違うのねぇと楽しそうだ。

「女の子に見えなくもないわね。うーん、王様と大して年齢かわらないのに。」

「え・・・」

「こう見えて彼24ですよ。」

セニア卿がアルシノエに耳打ちする。

「ミハリス兄様より年上なの?そんな・・・」

「え??叔母さん俺よりも若いだろう。」

「もう、やだぁ!」

ユーペ公爵夫人は年上の大公に恥ずかしそうな顔をしてばんばんと背中をたたいた。

ミハリスがお前達が後で来ることも伝えると部屋を先に出た。

「これでいいのか?」

「はい。」

一呼吸置いてアルシノエは頷いた。


大公とアルシノエはそろって長老会の部屋へと戻ってきた。

伝達者が会長室よりもそちらがよいと伝えてきたからだ。

ユーペ公爵夫人は疲れたとアルシノエの部屋でくつろぐといって残った。

アーノルドと王様が長老会の部屋で待っていたのに驚いた。

「と言うことになりまし・・・え?」

簡単に報告をしていると大公は王様の元へつかつかと歩いていった。

王様も出迎えるように立ち上がる。

「ウェルトナー家の息のかかったご令嬢を選ぶとはな。」

「いいえ。大公家として最良のご令嬢を選び出したまでです。」

「残念だな。他の候補者とも仲が良かったのに。」

悲しそうな顔の中に優しい笑みを浮かべつつアルシノエを見つめていた。

申し訳なさそうなアルシノエに気にするなと王様はアルシノエを気遣う。

王様もアルシノエの気持ちについて少し報告を受けていたのでこれで良かったのだと王様も快く彼らの判断を受け入れることとなった。

アルシノエ、ちょっといいかい?とアーノルドがアルシノエを呼ぶ。

「アーノルド様、今回の件ありがとうございました。」

「アルシノエ、良く耐え良く楽しんだな。わかるぞ。顔にそう書いておる。例の件はな。うん、そうだろうと思ったよ。」

「アーノルド様。これでよろしいのですか。」

あぁ。充分だと笑う。

アルシノエの顔をまじまじと見つめ、アーノルドは何か大事なことを忘れていたようなとそばにいた長老会のメンバーになにか伝え、或る書類を持ってきた。

そうだ、そうだと言いにくそうにアルシノエに問う。

「おや、アルシノエ。今いくつだったかな?」

「あと数日で14ですけれど???」

3人の男達がアルシノエを見た。

誰の目にもわかる驚きと落胆の顔だ。

「な・・・なにが。いけませんか?」

どきりとしたアルシノエは肩をすくめた。

セニア卿がふむ、これはなんともと言いつつ説明をはじめた。

「手続きは早くても1年後ですな。許可が下りるまでにおよそ半年から1年。承認はすぐ下りるでしょうが。」

「あ・・・うん。」

何となく言いたいことがアルシノエにもわかった。

「その間に大公妃としての教育と魔法の基礎、応用を師を付けて学ばせる時間は十分にあるだろう。」

「そうですね。貴族の結婚には国王の許可と長老会の承認が義務づけられています。その手続きをするためには双方が満15を超えていなくてはならない。婚約はこの法の適応外なのでそこは進められてもよろしいかと。」

「じいさまにそうつたえろ。」

「はい。」

セニア卿が失礼しましたと長老会の部屋を後にした。


ともかく、アルシノエ達は報告を終え部屋へと戻りユーペ公爵夫人を送った後少し二人だけの時間をつってもらった。

「あの魔法は独学だろう?だからうまく魔力をコントロールできずふらつくんだ。」

「はい・・・兄様達に勝ちたくてお父様の蔵書から出来そうなものをいくつか実践してみました。でも、兄様達どんな魔法を繰り出しても跳ね返してしまうのだもの。」

そんなに背伸びをする必要もないとアルシノエの頭を撫でた。


約束の日。

アルシノエは大公とその取り巻き達と一緒にホワムにある公立資料館を訪れていた。

すでに、女伯爵ヘルミオネとの話も終わり、心おきなく楽しみたいと大公は心躍る。

前評判通り、大通りから一本道に入った先に公立資料館の大きな建物があった。

もちろん、細いみちなので皆馬車から降りて歩いて向かう。

かつての公園は公立資料館よりも少し低いアパートのような建物にかわって面影もなく、そこにあった記念碑はその建物の片隅で雑木林と藪の中に消えてしまいその姿すら見えなかった。

「いやー。こんなところになっちまって。」

少々訛りがきつい騎士がいつもの商売道具の剣ではなくなたを振り回し藪を切り開きながら碑文のある場所を目指す。

雑木林となった先に記念碑らしき大きな石が苔むしてたたずんでいた。

セニア卿が碑文を読む。

「一つ。ここに友好の証として資料館を建てることとする。一つ。ここは、中立派の領地なのでどんなじぶつが来ても拒むことはない。一つ。この資料館の入館料は無料とする。あとはまぁありきたりな条文だな。」

記念碑を後にして一行は公立資料館の中へと進む。

アルシノエはかなり通い詰めていてなんなく入ることが出来たが、他の大公一行は手続きなどでかなりの時間を要した。

「アルシノエ、案内してくれるかな?」

もちろんですわと資料館内を案内する。

一通り案内を終えると広々とした部屋に一行を連れて行った。

「ここが学習スペースで・・・やっぱり誰もいないのです。あまりホワムの街でも知られて無くて。」

「静かに過ごすならここがよいでしょう。」

「アルシノエ、月に一度ここであおう。」

「えー。」

不満顔のアルシノエに大公は言い聞かせるように顔を近づけてきた。

「アルシノエ、君にはまだ学ぶ方が大事だ。大公である俺も仕事で頻繁には行けないが月に一度くらいはなぁ。」

大公は乳母を見た。

仕方がございませんねぇとスケジュール係にこの件を伝えた。

「わかりましたわ。」

「よし、聞き分けの良い子だ。」

愛らしく若い未来の大公妃の肩を優しく抱いた。

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