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24 長老会の会長

アルシノエは長老会会長自らがアルシノエの結果について説明するのだろうと推測していた。

長老会の部屋には誰一人として人がおらず静まりかえっていた。

長老会のメンバーがいつも数人いる部屋を通り過ぎ部屋の奥のドアを開け歩いていく。

伝達者は長老会の会長の部屋までアルシノエ達がついて行ってるか時々振り返りながら進む。

アルシノエがドアをたたき中からお入りなさいと声がかかってからドアを開けた。そこには見覚えのある人物がソファに座っていた。

「あ、アーノルド様??」

「結果は?」

「残念ながら最終課題で。」

「残念?」

「おかしい。最終では誰も落ちはしないはずだ。まぁ、特別守役がついた候補者は別だが。」

ふうむとアニタが持っていた合格者一覧の紙を見て指示を出す。

「これは、誰が。」

「副会長が直々に。」

「書き直せ。」

「はい??あーそうですね。」

伝達者は合格者一覧の紙を持って部屋を出ていった。

「あの、訂正って・・・」

「すぐにわかる。さて・・・」

残されたアルシノエにソファに座るよう促す。

「聞きたいことがあるだろう?」

「あの借用書がどうなったのか、それをお聞きしたいのです。」

「それはな・・・サインの偽造が判明して高利貸しどもに借用書を書かせた人物を吐かせることから。あとはそう時間と労力をかけずにずるずると、な。」

「偽造?」

「ミハリスから聞いていないようだな。」

「借金自体が無くなる可能性があるとしか。その前にサインの偽造をどうやって見破ったのですか?」

「自宅に自身のサイン入りの書類をそのままにしておくわけがないか。アレクセイの書類はサインが終われば自動的に長老会へと運ばれる魔法を施してあったし。」

「ピューカにあるワーリンガ家の屋敷にはほとんどいなくて。仕事が忙しいからって。帰ってきたら自分の開発した品々を大量に持って帰ってきては物にあふれた部屋がいくつも出来ていたことを思い出します。」

「おまえの父親が連帯保証人になっていたものは詐欺によって貴族達が私兵を集める資金になっていた。それも、ワーリンガ家が中立派なのをいいことに国王派、大公派それぞれから。誰一人としてアレクセイが。おかしな話だ。日付を見る限り、アレクセイが倒れて数日の間に行われていたことも判明した。意識のないアレクセイにサインなぞ書けるわけがない。」

「え。お父様、倒れて・・・」

「2ヶ月ほど意識のないまま・・・ヘルミオネやミハリスがアルシノエに語らなかったのであろう。」

アルシノエは家族から知らされていない事実を聞いてショックを受けた。

もし、一度見舞いにいけていればと後悔と差美紗からアルシノエの瞳が潤み顔を下に向ける。

落ち込むアルシノエにアニタが優しく語りかける。

「その頃、ヘルミオネ様もミハリス様もお忙しくて会いに行くことが出来なかったのです。知らされたのも亡くなられてからでしたし。」

「そうか。」

こほんと本題に戻すアーノルド。

「その上、利子も法外。借金先ともグルだな。恨みでもあったんだろうか破産させて一家離散でももくろんでいたか。よって、おまえ達に払う義務も何もない。」

「では・・・私がこの王妃選びに参加させたかったのはなぜですか?」

伝達者が書き直した合格者一覧を持ってきてアーノルドに確認を依頼した。

「会長、これでよろしいでしょうか。」

「よろしい。これを候補者全員に渡せ。」

「では。」

既に人数分有るのかアーノルドにも見せた最新版の合格者一覧をアルシノエに渡した。

それをみて口をぱくぱくさせる。

アルシノエの侍女達もその紙を見て目を疑った。

「あ・・・なにこれ。」

アルシノエの名前が大公妃として選出されたと別枠に書かれていた。

「どうゆう・・・??」

「長老会を通さず本人の口から言いたかったのだろうと。おや、いらっしゃったようだ。」

伝達者が大公様のおなりですといってドアを開け放つ。

「選んだご本人に登場していただこう。」

思わず、アルシノエはソファから立ち上がり大公を迎える。

どんな人物なのかよくわからなかったがとにかくあってみなければと背筋を伸ばして入室を待った。

外に複数の取り巻き達と供回りの中央から大公とおぼしき青年が一人、入ってきた。

「やあ。元気そうだね。」

「はい?どなたですか?」

「最初にあったときもそんなことを言われたな。」

その声は毎日のように聞いていたギザーロであった。

仮面と衣装それから整髪料などで全くの別人になりすましていたのだ。

してやられたとアルシノエは嬉しそうなアーノルドとほほえみかける大公をかわるがわる見た。

「いくつか理由があるが、自分の力だけであの魔晶球を偽物だと言って報告させたこと。あのまま偽物を渡していれば外交問題だった。とでも言っておこうか。本来ならば事実が判明すれば戦争ものだった。今回は国内の内乱の要因となりうる重大な事象になりうることは想像通りだ。」

「だけですか?他にも指摘された方もいらっしゃったそうですけれど。」

正直に本心をアーノルド達の前で打ち明ける事は出来ない。

「詳しい話は後で。」

「良いでしょう。」

「あの・・・ロベルト様が。あ・・・」

大公一行をかき分けて会長室に入り込んだ青年が一人。

その青年は紛れもなくマイギーである。

「アルシノエ~もう、やだなぁ。ロベルト。アーノルド爺さんの外孫。小さい頃一度だけ遊んだことがあるだろう?忘れたのか。」

「えー、声も髪の色も瞳の色も別人じゃない。」

「成長と共に変化するのは父上譲りなのでね。」

「あったのは小さい頃の一度きりなのに覚えているわけ無いでしょ?」

ロベルトがやはりかという。

「爺さんが、アルシノエをものに出来たら褒美をくれるって言われて。」

「ロベルト?」

「あ・・・」

「お話の途中でしたかー。」

「お前、わざとだろう?」

「いやー、もうお話が終わったと思っていましてね。」

あはははと笑うマイギー。アーノルドに一言言って帰って行った。

「では、失礼しました。じぃさん、話はこれが終わってから。」

「おう。」

「アルシノエ?」

「やっぱり、自分の孫と結婚をさせたかったのですね。」

「アルシノエ?」

「それも良さそうだなとは考えてはみたさ。」

「お母様にそれとなくお話をされていたと耳にしたことがあります。」

大公は初耳だなとアーノルドを見る。

アーノルドはにやりと笑うだけ。

大公はアルシノエの両肩に手を置き顔は少し首をかしげるようにアルシノエを見つめる。

「それで、どうする?」

「どうするって・・・」

急に言われても困る。

ここはひとまず自分だけで判断してはいけないと逃げの作戦に出た。

「まず、ミハリス兄様にご相談の上で決めさせていただきたいのです。」

「彼を呼ぶには1週間ほどかかりますぞ。」

「早く決めて。」

「え・・・でででで、では、明日にでも。」

アルシノエ達は一度部屋へと戻る。

大公も数人の供回りだけでアルシノエの部屋へと着いてきた。

彼はアルシノエを説得するつもりだ。アルシノエとしては何の懸念材料もなければその場ではいと言ってしまいたかった。

「ところで、気がつかなかったのか?」

「いいえ。おかしいなとは思っていました。大公様の風貌が聞く度に変わっていたので。」

「昔の肖像画と影武者の風貌だな。そうだなー。右肩に落ちてきた侍女はどうだ?おばさんに衣装を借りて出て行ったら襲撃事件とはな。」

「えー、どこかのどこに出もいる侍女だとばかり。声も顔もわからないですし、どこの侍女もいておかしくはないかと。」

「では、これ。」

大公がアルシノエに手渡したのはアルシノエが探していた髪飾りであった。

「あ・・・」

「返してやろう。」

「どこで見つけたのでしょうか?」

「アルシノエ、君が落ちてきた、いや降りたときに取れたらしい。着替えるときに見つけた。どうやら偶然あの衣装のポケットに収まっていたようだ。」

「どおりでどこを探しても見つからないわけですわね。」

「さわったらびりびりして驚いた。アルシノエ、君から魔晶石が使われていると聞いて正しく扱える人物を呼び出して・・・結構大変だった。」

「私とそう変わらないように見えますわね。ねぇ、お姉様。」

大公の姿を見て思わずアルキュオネはマイアに話しかける。

何度となく見ているはずの彼だが、よく見るとかなり若いようだ。

その話を大公が耳にしてアルシノエに悲しそうな顔を見せた。

「よくわれるんだ。童顔だって。」

それきり二人は話さず歩いていく。

「あれ?」

アルシノエ達よりも先に部屋の前に到着していた。

「申し遅れました。私は、彼の叔母でございます。衣装を勝手に持って行かれたあのお・ば・さ・んですわ!」

そこには今までの守役の服装とは数倍に着飾ったナーリィスの姿が。

それに驚くよりもナーリィスと大公の言葉にアルシノエはより驚いた。

「お・・・」

「父は娘ほど年の離れた側室に子供を産ませたのですよ。ずいぶんと年老いて生まれましたので。」

そう、あのときの話。

ナーリィスが自分の父との関係について語ったあのとき。

側室と言ってしまえば自分の出自がわかってしまうととっさに愛人と言ったのだ。

それがわかってはぁ、なるほどと感心した。

「父上と言うことは・・・前の大公様??」

「頭だけはしっかりしています。」

にっこりと笑う。

そこへ、伝達者が部屋をあけにやってきた。


ひとまず、マイアとアルキュオネが手分けしてお茶と茶菓子を振る舞い、アニタはいすをたくさん用意してもてなすことにした。

「で、大公様が身をやつしてまで来るほどのこと?」

「しきたりに則って守役の一人として潜入し自分好みのご令嬢を選出するのですわ。」

「じゃあ、フェノロサ様も?」

「彼は、正真正銘、守役ですわ。」

うふふ、とナーリィスことクリュティエ・ミューリ、別称ユーペ公爵夫人がいつものように上品に笑う。

そこへ、急いだ様子のミハリスがやってきた。

「あら。すてきな方ね。」

「ミハリス兄様?どうして?」

「アルシノエ、今回の件ありがたくお受けしなさい。」

「はい??」

ミハリスの思いもしない一言にアルシノエは聞き返した。

「それが我が一族の総意ですか?」

「そう受け取っておけ。気があったんだろう?そのギザーロという偽名を使った人物に。」

本人の前で言わなくてもとアルシノエはうつむく。

「そんなことは。ミハリス兄様の意地悪。」

そんなアルシノエの様子に優しく笑う。

「アニタからの手紙で腹は決まった。最終結果が出るまでにはたどり着くように出てきた。」

「アニタ・・・」

ばつが悪そうに明後日の方向を向くアニタ。

「このまま、気持ちがないのに王妃様または側室となるのは王様に対してもアルシノエ様のそばに使えていて苦しくて坊ちゃまにご相談したのです。」

「だから、せめて若様くらいには・・・」

アニタとミハリスの掛け合いをしている間に大公にユーペ公爵夫人がぽんぽんと背中をたたく。

「思った通りでしたわね。」

「おばさん、知ってたんでしょ?」

「ディオミディス。叔母さんと言わない。ミハリス様。いつまで経っても坊ちゃまは坊ちゃまだそうですわ。私の夫もそれを今でも気にしていますもの。」

「決め手は?」

「”堅実な妃を求む”これが歴代大公が基準としてきた。アルシノエにはこの基準に則していると。」

大公、ディオミディス・トルーリャンはアルシノエの手を取る。

「では、大公妃としてアルシノエ・ワーリンガを迎えたい。それで良いか?」

「・・・はい。」

こうして、アルシノエは大公妃予定者となった。

ちなみに予定者というのはまだ長老会などからの許可は受けていないが双方の間で取り交わした人物と言うことである。

アルシノエの次兄の名前が間違っていました・・・既に書き直しています!!

ごめんなさい。

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