2 意外な対価
馬にまたがり父の友人の邸宅を目指す。
夕方までには着く見込みだ。
馬は主人を乗せて草原を駆ける。
久々の遠出で馬はうれしそうに駆けていく。
予定より少し早くウェルトナー家の邸宅へたどり着いた。
彼の邸宅は都を出て東へずっと行ったところにあった。
到着後すぐに馬は馬丁に預け、執事にこの屋敷の主のもとへ案内された。
アーノルドは肘掛けいすにゆったりと座ってアルシノエを温かく迎えた。
アルシノエは少しどきどきしながらアーノルドの向かい側に座った。
「アルシノエ、アレクセイが亡くなってからはどうだ?」
「それが・・・」
「訳を聞こうか。」
「手紙でお伝えしたとおりです。あ・・・、おみやげです。」
「ほぅ。久しく美味しそうな菓子にありつけなかったな。」
アーノルドの好みは甘いお菓子。
そんなお菓子をたっぷりと堪能し食べ過ぎですと執事に小言を言われながら完食。
美味しかったとアニタに伝えておくれとアーノルドは笑う。
「話とは何かな?」
「お恥ずかしい限りですが、父が亡くなった翌日に急に借金取りが来たのです。そしてこれを置いていきました。」
数十枚の紙の束を机に差し出す。
アーノルドはいすから身を乗り出し、老眼鏡を机から探すも見つからず執事に渡されて眼鏡をかけて紙の束をじっくり見ている。
「おや、おや。」
「それとこれ、です。人の良い父は連帯保証人になっていたようです。全て父自らが借金したものではありませんでした。」
大きめの紙も数十枚の紙の束の隣へ置いた。
そこには彼女の父のサインが残されていた。
一番上に借用書一覧とあった。
それにもじっくり目を通し優しい口調で語りかけてくれた。
アルシノエが緊張と不安でガチガチになっているのを
「案件はわかった。私を頼るのだからそれなりの対価をいただかねばな。」
「た、対価ですか?」
アルシノエは驚いた。
これにも対価が必要なのか。と。
アーノルドの孫との結婚だと思っていたのだが、対価はアルシノエが思うような事ではなかった。
「おまえ宛にも来ている頃だろう。城で王妃選びがあるらしい。とかく参加せよ。それが対価だ。」
「それだけですか?」
それにアルシノエは拍子抜けした。
「うむ、それだけだ。出立する前に手紙を送ってほしい。それが証明となる。あぁ、それとこの書類は預かっていても良いかな。」
優しい笑顔を見せる。
「あ・・・はい。」
「悪用はしないさ。」
今晩は泊まっていけと言われたものの、早く母に報告がしたくて夕暮れの草原を馬で駆けて帰宅した。