19 魔力消耗の代償
少し遅くなりました。
翌日、リューナン姉妹と共に昨日襲撃者を捕縛した大木まで行き、くまなく探したが見つからず部屋へ引き上げることにした。
何者かに持ち去られたのだろうと思われた。
「あっ。」
「「アルシノエ様っ!」」
足下がふらつき何もないところで躓き顔面から床へ。かろうじて顔面の怪我は免れたが、右足をひねってしまった。
ひねった右足が痛む。
これでは歩いて部屋までたどり着きそうにない。
「アルシノエ様・・・」
「動かない方が良さそうだわ。」
「誰か呼んできましょうか?」
「今は皆忙しいから難しいでしょうね。」
誰か通ってくれないかと心細そうに待つ。
このまま歩いて帰ればさらに足を痛め、回復まで時間がかかるか最悪、今以上にひどくなり足が今まで通りに動かないと言うことも懸念された。
「おや、お困りですか?」
たまたま通りがかったのはギザーロであった。
子細を説明するとひょいとアルシノエを抱きかかえると歩き出した。
「ご無事ですか?」
「はい。」
心細かったアルシノエはぽろぽろと泣き始めた。
涙がぽろぽろからだらだらに変わるまで時間はかからなかった。
「無理をなさるからです。部屋までお連れします。」
リューナン姉妹も後に続く。
「お疲れのようですが。」
「わかりますか。」
「このようなところで怪我をされるのですから。わかります。捜し物と聞きましが、何をお探しですか?」
「髪留めを。どうやらあの当たりで落としてしまったようで。」
「はい、ご活躍をされたとか。」
「でも、魔力の使いすぎか足下がふらつくのです。」
「回復には時間がかかるのでしょうか。」
「いいえ。明日の茶会には良くなるでしょう。」
「今日の茶会は中止でしたね。」
「えぇ。あら、右肩を怪我でもされましたか?」
そっとアルシノエがギザーロの肩に触れる。
「剣の練習中に模造剣が当たりましてね。」
「魔法で治療されてますわね。5日もすれば何もせずとも治るでしょうけど。治癒魔法の効果で1~2日ほど早く痛みも消えますわ。」
「そうらしい。」
「もし、知っている人物がそれを拾っていたら速やかに返して欲しいのです。」
「それほど大事なもの、と言うことですか?」
アルシノエは泣きやみ首を横に振る。
「大事ではありますが。使われている石が魔晶球を使っているので取り扱いが。」
「それは。わかりました。」
「あ。あの。あり・・・」
ソファへとおろされ右足の手当を終えたギザーロが立ち去ろうとする。
「なにか?」
「ありがとうございました。ギザーロ様が通りかからなければずっとあのままだったでしょう。その上、足の治療まで。あの、何かお礼をしたいのですが。」
照れくさそうに一言。
「では、お茶と茶菓子をいただきたい。」
今回の襲撃についての情報を集めていたアニタが帰ってきたのはギザーロが帰ったあとであった。
「お帰り、アニタ。」
「アルシノエ様。見つかりましたか?」
「見つからなかったわ。誰かが拾ったのでしょう。」
「ずいぶんとお疲れですわ。」
「明日まで疲れが取れそうにないわ。」
「あれだけの魔法を使えば当然です。」
アルシノエの足に目と止めた。
「躓いたの。」
「それで、ギザーロ様にお助けを。」
「それと足の手当を。」
リューナン姉妹が続ける。
「まぁ。」
「お礼はお茶とお茶菓子で十分だと。」
「それはそれは。流石、守役をされていらっしゃるだけはありますね。中には金銭を要求するものもいるそうです。お気を付けください。それと、自ら事件に介入するのはいただけません。」
「あのままでは、どこかの侍女が痛い目に遭っていたでしょう。」
「そこまで気にした理由とは?」
「ただの善意です。」
アニタはため息をつく。
「そういうところがアルシノエ様の良さですわ。」
「でも、この件に関してミハリス様にご報告をします。よろしいですね。」
「アニタの意地悪。」
余り悪くは書きませんよ。とアニタは笑う。
「襲撃者は大公派ではなく、国王派だと言う噂が出てます。胸に白い羽を付けていたそうですし。」
「私も聞きました。妙な話です。そのことも手紙には少し触れたいと思っています。アルシノエ様は近くで見たと思いますけれど。」
「いいえ、覚えていないわ。」
アルシノエは月に照らされていたとはいえそこまで確認をしていなかったので知らないと即答する。
アニタが手紙を書き始めた時、ドアをたたく音がする。
守役達が帰ってきたのではとマイアがドアを開けた。
「あ、どうぞお入りください。」
いつにない堅い対応にアルシノエは立っている人物を確認した。
それは王様と複数の付き人達であった。
「まずはお礼を。襲撃者の捕縛にご協力いただきまして厚く御礼申し上げます。」
「このままの姿での対応をどうかお許しください。」
アルシノエは立ち上がれないことを王様に詫びた。
それはかまわないと王様は優しい笑みを浮かべた。
付き人がマイアに花束を渡す。
「候補者全員に見舞いをとな。」
「まあ、きれい。このお花は?」
「王宮の裏にある植物園で。まだたくさんさいているが。」
「あの、植物園のお花の一部を分けていただけませんでしょうか?」
褒美がそれでよいのならと王様はプライベートな植物園への立ち入りと花の提供を許可した。




