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16 紛い物の玉

それから、2日後。

マイアとアルキュオネが衣装を詰める作業を無事に終えた。

それと同じ日、大公に渡す魔晶球を一時展示するということでアルシノエ達も茶会が終わったら見学に行くことにした。

魔晶球とは魔力を宿した宝石のような玉のことで魔法を発動したりするとき自身の魔力が足りないときそれを補う魔法道具の一種である。

展示されている部屋は暗く、魔晶球だけが揺らめくろうそくの光で幻想的に映し出され、小さなテーブルの上にふかふかの小さなクッションの上に鎮座しており、その周りをガラスケースで保護されて展示されていた。

ガラスケースと剣を振りかざした兵士数人が、何らかの方法でガラスケースでも壊そうものなら容赦なく斬りつけると無言の威圧感が漂っていた。  

そこにはアルシノエ達と同じように帰りに見に来た、たくさんの王妃候補者とその侍女、そして守役達でごった返していた。

少し賑わいが収まるまで待ってからアルシノエ達も魔晶球をじっくり鑑賞する。

「へぇ。」

「綺麗な色ね。」

説明書きには

見学を終えて部屋に帰ってきたアルシノエは附に落ちないといった顔をしてぽつんと座ってアニタがお茶はいりませんかと話しかけられても上の空。

マイギーがアルシノエの目の前で手を振っても反応がない。

何かあったのかと不安そうな守役3人と侍女達。

ふぅと息を吐いて不安そうな6人を見た。

「ちょっと、変・・・な感じがするの。」

「なにかありましたの?」

「さっき見た魔晶球。あれ、偽物よ。」

心配していた6人はその発言に目をぱちくりさせている。

「あの魔晶球ただのガラス玉だわ。」

「そんなわけ・・・」

「ないだろう?」

そんなことはあり得ないと

あれだけの警護、管理の下に置かれている魔晶球が偽物だとにわかに信じがたい。

そんな彼らにアルシノエは理由を丁寧に説明する。

「魔力を感じない。あの手のものには大小限らず何かしらの魔力が宿っていると。この前、公立資料館で説明書きを見たの。」

「公立資料館?」

「あぁ、ホワムにあるんです。いろいろと展示されているそうで、アルシノエ様は通い詰めていました。」

「そうなの。」

「私の家にもあれほど大きな魔晶球はないけれど、どの魔晶球にも魔力を感じることが出来た。」   

「なぜわかるの?」

「では、やって見せましょう。アニタ手を出して。次にマイア。そして、アルキュオネもね。あ、ナーリィス様もお願いできますか?」

「え・・・えぇ。」

言われた4人の手をアルシノエは順番に触れていく。

「アニタは魔力を持っていない。マイアは少し。アルキュオネもマイアと同じくらい魔力を持っているわね。ナーリィス様はわりと魔力をお持ちのようですね。」

アルシノエからそういわれ4人は顔を見合わせた。

「なぜわかったの?」

「アルシノエ様のお力、と言うことでしょう・・・か?」

「えぇ。私は魔力を触れたりすることで感じ取れるの。信じていただけましたかしら?魔晶球だと直接触れていなくても感じることが出来るんです。ガラスケースくらいじゃ遮断することは出来ないそうなので。」

ふうむとフェノロサが話を聞いて納得したように首を振る。

「魔晶球が偽物となると、陛下にご進言すべきだな。」

守役にその話をしたのは良いが、それが間違っていたらとんだ騒ぎである。

「魔力が感じられない、つまりすり替えられたか誤ってイミテーションを持ってきて展示してしまったか。わからないな。」 

ナーリィスが代表して報告しに行くことになった。

マイギーの手を触れ、ナーリィス様ほどではないですねとアルシノエは言う。

「何で??」

「この騒動を早く鎮めないと。大公様に渡す前に本物を見つけ出せれば一応の沈静が望めると思うけれど。」

「でも私たちに本物の魔晶球を探すことなど無理な話ですわね。」

「そうね、魔晶球は扱いを間違うと危険だもの。それと、魔晶球に宿る力が弱いとまず難しいわね。反応が薄いから。」

「あれをおいた担当者、処罰されるでしょうかね。」

「どうかしら?いつから紛い物にすり替わっていたかにもよるでしょう?」

報告してきたナーリィスは面白い話

「今ね、アルシノエ様の他にも偽物じゃないかと知らせに行った方が数人いらっしゃったそうよ。侍女の中に魔力を感じやすい子が複数いたみたいね。」

「そうですか。」

どこにあるのだろうかとアルシノエはいろいろと考えを巡らせていた。


正式に展示されていた玉が偽物であると確定したのはその日の夜遅くになってからであった。

「では、魔晶球の管理担当だったベアン様にこの捜索の指揮を執ってもらいましょう。」

長老会から任命された辺庵という人物が王宮内に多くの人員を配ししらみつぶしに捜索をはじめた。

それは、王妃選びの候補者達とはいえ例外ではなかった。

アルシノエの部屋も朝食後すぐに捜索され、何も出てこなかったと報告を受けた。

「ベアン様はここを統括する方ですから握りつぶすようなことはないでしょう。」

「身内、特に管理担当の誰かが隠したとしても

ニーナの部屋の捜索後ギザーロがやってきた。

急に自分の部屋を捜索されたのが気にくわなかったらしく、癇癪を起こしたのだという。

話題はやはり、魔晶球の件であった。

「盗まれたというのか。」

「わからないわ。」

いつものようにお茶とお菓子を提供するとギザーロはお菓子を一口食べ、お茶を飲む。

これもいつもの風景である。

「ニーナ様情報はありまして?」

「いいや。」

アルシノエは肩を落とした。こういう噂や情報を持っているのではないかとニーナに少々期待をしていたのだ。

それから数日後。

「本物の魔晶球が見つかったそうです。」

「無事に見つかったのね。」

魔晶球は普段人気のない倉庫の奥深くにぞんざいな扱いを受けて転がっているところを捜索していた。

それは大公一行が到着する2日前のことであった。

「いたずらではないようです。」

イミテーションもどこかに行ってしまったのだという。

それも、別の所から発見されたと聞いて犯人の意図がわからないと国王は結論づけた。

犯人は見つからず見つかった魔晶球への警護だけが異様に強化されただけで終わった。

翌日、アルシノエ達も先に来ていた候補者の後に続いて魔晶球を鑑賞する。

「確かに、この魔晶球からとても強い魔力を感じ取れるわ。」

それは、アルシノエの父アレクセイが持っていた魔晶球よりもかなり強力で扱いにくいと言われている種類のものではないかとアルシノエは感じていた。もちろん、公立資料館で見たレプリカよりも遙かに強いことは言うまでもない。

これを渡してどうしようというのだろうかとアルシノエは一瞬考えたが答えなんて出るわけでもなくすぐに脳内から消した。

「これで、安心して大公様方をお迎えできるわね。」

いよいよ、大公一行が来る日が迫ってきた。

アルシノエは大公とはどんな人物なのだろうかと少し興味を持ってその日を迎えることにした。

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