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14 オベリスク

散策場所はアルシノエがずっと気になっていた場所に行く事にした。

この城で一番守るべきもの、城の中庭の一角にアルシノエは足を向けた。

はやる気持ちがアルシノエの足を速めた。

目的地に着き、振り返ると一緒だったナーリィスの姿がない。

アルシノエについて行けず遅れていることをここで知った。

この城に施された耐魔法はアルシノエの父アレクセイが施したものである。

昔はこの国一の魔法使いだったんだぞと良くアルシノエは聞いていた。

オベリスクは大きく、王宮の高さよりも高い。

故に、この王宮全体を守るように耐魔法の効果が出るようになっていた。

王宮の外を一歩出るとこの耐魔法の効果はなくなってしまうので注意が必要だと長老会から言われていたことを思い出した。

しかし、近づくことは許されておらず周りには憲兵達がうようよいる。

アルシノエはぎりぎり近づけるところまで近づこうと歩みを進める。

オベリスクの全容が見え、かつ憲兵の目の届かないところまで来たとき先客がいた。

ロマンスグレーのいかにも貴族と言った服を着て、そばには多くの伴がいた。

まずはご挨拶をとアルシノエは一団の中心の人物へ近づいていく。

「ごきげんよう。」

声のするアルシノエに顔を向けた相手は、笑いかけている。

アルシノエは彼のそばへ歩み寄る。

「皆様は、何か見学をされていたのですか?」

「あれさ。」

指さす先には憲兵だらけの中庭とどーんと構えたオベリスク。

茶会が良く開かれる中庭とはまた別の区画の中庭で一面がタイル張りである。

「立派ですわね。」

「君は何をしに来たのかね。」

「え。一度見てみたかったのですわ。」

ごにょごにょと耳打ちされる先客。

おぉうとアルシノエを見て笑う。

「アルシノエとおっしゃるそうですね。」

「まぁ。私の名前をご存じなのですね!」

内心はどこで調べたんだこの人はと思っているが努めてにこやかに喜んでおく。

きっと、あの耳打ちだなと耳打ちした人物を見てみる。

おそらく彼はこの王妃選びにどんな人物がいるのかを把握しているのではとアルシノエは見立てた。

それから、オベリスクをじっと眺めることにした。

父の傑作と言われているこのオベリスク。

これにより、この王宮内では一切魔法の発動が出来ない。

余り家に帰らなかった父の偉大さを見たような気がした。  

感慨深げなアルシノエに優しい声で先客は聞いた。

「君の家は・・・どちらかな。」

おそらくは国王派か大公派かと聞いているらしい。

「どちらかと言えば国王派だろうと思いますわ。兄二人が従軍していますし。」

ワーリンガ家は割と古い貴族の家柄で長年中立派であった。

それは、友好関係にある人物が国王派、大公派それぞれに多くいたためである。

なぜ、アルシノエの名前を知っている彼が聞いてきたのだろうかと訝しがってみているとさわやかな笑顔を見せていた。

「この城に施された魔法は君のお父上だったとか。」

「そのようです。数年前に亡くなりました。仕事の途中だったそうです。」

そう、城での仕事中に急に倒れ悲しみの帰宅をした。

もともと、ワーリンガ家は女伯爵であったのでアルシノエの父、アレクセイの死後も特に問題なく今まで通りの生活を送っていた。

医者はアレクセイの死を魔法との因果関係を否定し病死だと結論づけている。

昔の悲しい出来事を思い出し、少しくらい気持ちになったアルシノエに先客は唐突に疑問を投げかけてきた。

「ワーリンガ家の人間ならこれを打ち破れるだろうか?」

「わかりません。」

「女性の方が魔力が強いと聞くがね。」

「え・・・」

「ま、アルシノエ様っ。」

「おや、では失礼するとしよう。では、仮面舞踏会マスカレードでお会いしよう。」

ナーリィスが飛んできた。

それを見た先客は伴を連れて離れていった。

「お部屋へ戻りましょう。」

ナーリィスがアルシノエを守るように当たりを見ながら歩いていく。

「彼は根っからの大公派なのです。何か聞かれましたか?」

「このオベリスクを打ち破れるか、と。」

嘆息を漏らすナーリィスにアルシノエは驚いた。

長兄ミハリスの特殊魔法はかけた本人じゃないと解けないんだという言葉を思い出していた。

生前、父の言葉が偲ばれる。

”私が死ねば完成する”と。

ここで、アルシノエは父の真意を知った。


部屋へ帰ると守役のフェノロサとマイギー、そしてまたギザーロもいた。

ついさっきのことを話すと3人はざわついた。

「ここから城全体に耐魔法を放っている。ここが最重要なのをわかっているんだろうな。」

「誰もがそのことを知っていますわ。それより、セニア卿がほんのさっきまでいましたわよ。なんでもオベリスクの破壊について調べているようでしたわ。」

「オベリスクの破壊を計画していると匿名での情報が入ったと報告しておこう。」

フェノロサがその報告をしにいくために出て行った。

アルシノエは一人、オベリスクの破壊が行われた時のことを考えていた。

この耐魔を破れるものは本人だけだとアレクセイは常々家族に話していた。

大公派はオベリスクを破壊して何をしようとしているのか、アルシノエには理解が出来ない。

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