表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

ぷろろーぐ 朝ですよ、ゆかりん

 ぴよぴよぴよ……


 ひよこさんデザインの目覚ましが朝を告げる。


 ぴよぴよぴよ……


 あー眠いよ、しんどいよ……。


 ぴよぴよぴよ……


 ……健気すぎるよ、ひよこさん。


 ぴよぴよぴよ……


 あと5分、ひよこさん!


 ぴよぴよ……




 

 目を開く。太陽の日差しがまぶしくて、目がチカチカする。

 おっきな枠のおっきな窓。ふかふかベッド。枕元には可愛いぬいぐるみさんたち。

 ひよこさん目覚ましは……どこ? 

 一定なリズムの鳴き声は勉強机の上から。黄色のシルエットが見える。力の入らない体を起こして、ひよこさんの頭を手の平で押し込む。鳴き止む。

 なんで目覚まし手元に置かないのよ、おかげで朝の至福の「あと5分」が台無しですよ……。

 

 ……つーか、この部屋なに?


 部屋がピンクで統一されてる……。壁までピンク……。

 ……やばい……これはちょっとまずいのでは……。

 恐る恐るで部屋を物色する。


 最悪だ――

 なんだこの服は!?

 大きなタンスの引き出しを開くと、そこは私とは無縁のファンタジーな世界だった。

 やめてくれ……ふりふりとかスカートとか私の趣味じゃないよ……。てか、どんなセンス……。

 ……仕方ない、当分は学生服で生活だ。ずっと学生服だ。早めに服買いに行こう……お金あるかな……。


 ――あ。

 

 もしや。

 これだけの部屋や服のセンス……。もしかしてもしかすると……。

 ゆっくりとパジャマを脱ぎ捨てる。




 ……下着まで最悪っっ

   



 

 

「続きまして、校長先生よりお言葉をいただきます」

 ステージに登る校長先生。校長先生はやっぱしハゲな人が多いね、でも、お腹がもうちょっと出ていたらもっと校長らしい校長になれるよ。

 剥げた頭が下ろされる。それに合わせてお辞儀を返す。

「新入生の皆さん、入学おめでとうございます」

 あー来ましたよ、恒例のセリフ。もう聞き飽きたよ、校長先生。校長だって飽きたでしょう?毎年読むんだもんね、似たような台本をさぁ。あーおもしろくない。ここでちょっと校長がアドリブでも入れて場を盛り上げるとかしてほしいよ、「青春万歳ー!!」とか叫んでみたりとかさ。なんかないのかな?そしたらみんな学校にいいイメージ抱くよ、きっと。

 たくさん入学式出たけど、どれも代わり映えしないよね、なんか儀式だよね、やらなきゃいけないって思っててそんでなんとなく消化されて。型にはまり過ぎだよ、新入生だって感動のひとつもできないよ、もっとこう……。まぁ、ルールだもんね、くだらなくてもなんとなく止められないんだろうな、きっと……。


 あっ


 ハゲ頭が傾いてる!

 あわててお辞儀を返す。

 あちゃー……、タイミングずれた……っ

 




 


 ――これは何度目の春だろうか。これは幾度目の入学だろうか――

 




 私は一人の日本国民として、当たり前に成長した。

 それは当然で特別でなく、だれもが今を生き、年をとるものだと信じて疑わなかった。

 意識さえしていなかった。

 でも、ある日だった。

 目を開けるとそこは私の部屋ではなかった。親も違う人になっていた。

 昨日まで通っていた高校ではない別の高校に新入生として入学式に参加させられる。昨日までウハウハ夏休みだったのに、桜が満開の知らない校庭になぜかいた。

 環境は全てが変わっていて、でも、私はそこに馴染んでいて誰も不審におもわない。私の心だけがどっか別のところ。

 

 ……思えば、変わらぬ時間の流れがあることを、誰が証明できたのだろう。実際は誰もできていない。未来は誰も見たことがないんだ。

 なのに信じて疑わない私がいたし、今でもそれが本当ではないかと思っている。こんなのはオカシイって思ってる。でも証明できないよ。




 ――時は変わらず2007年、また春がやってきた――



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ