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別れ

戦闘シーンは表現が難しいです。精進します。

 そもそも、我が家の居間は一体どうなってしまったのか。

 飛び交う殺気の中で希望のぞみは考えたが、現実的に考えると有り得ないことなので、考えるのを止めた。


 此処は謎空間!

 原因を知っていそうなのは、殺気をばらまいている誰か!

 無くなった家具や半壊した自宅は戻るのか!?


 考えるのはそれで終わりにして、希望のぞみは一先ず殺気の元を辿ることにした。最も、辿るも何も向こうから来てくれたが。

 金属の打ち合う音に続き、何かの塊が四方八方へ飛んでいく。飛んで来るそれを回避しながら進むと、そこには有り得ない光景があった。

 まず、母が拘束されている。

 そして父は、やはり怒気を隠すこともなく、相対している男達に刃を向けていた。

 どこに隠してあったのか、父の構えている物は希望のぞみが幼い頃一度だけ見たことのある剣だった。


「いったい何がどうなってるってーのよ!!?」


 状況の不可解さに希望のぞみが叫ぶと、漸く両親と襲撃者達がその存在に気づいた。


「何者だ、貴様」


 上からの目線で物を言う襲撃者aに希望のぞみはカチンとくる。


「誰だっていいでしょーが。それよりも何、この状況は?人の母親拘束して、人の父親殺そうとして。何、考えてんだか分からないアンタらこそ、何者なんだっていう話じゃないの!!?」


「貴様に話すことなどない」


 襲撃者aはあっさり切り捨てようとしたが、何かに気づいた襲撃者bがそれを制した。


「いや待て、貴様、この二人の子か?」


「そうだったら何だって言うのよ」


 訊ねたbの言葉にあっさり肯定すると、襲撃者a・c・dと揃ってその顔が歪んだ。


「何よ、その目は?あたしは悪い事なんてしてない。むしろアンタらの方が人んを土足で踏み荒らしてんだけども」


 襲撃者達に文句を言いながら母の拘束を解くと、解かれた母もそれを目にした父も、襲撃者4人も揃って目を剝いた。


「大丈夫?母さん」


「え……ええ、大丈夫、よ?」


 解かれた母が一番信じられなさそうな、疑問符を浮かべながら応える。


「で、父さん。この訳分かんない状況は、後でちゃんと説明してくれるんでしょーね?」


 むしろ説明してもらわないと困る。


「あ、ああ。そうだな。これを切り抜けたら、説明してやるから……母さんを頼んだぞ」


 その言葉に希望のぞみは俄然張り切った。

 今まで、父にこういった方面で任されることはなかった分、それはもう張り切った。

 未だに状況に着いてこれてない襲撃者達を置き去りに、希望のぞみは母を背に手近の襲撃者aに襲い掛かった。

 耳が尖っていたり服装がコスプレ染みていたりしていたが、見た目が同じ様な人体ならばと、希望のぞみは手加減せずに急所を攻める。

 動きやすさを重視してか全員が軽装な分、好きに攻め放題だ。

 人体の急所は、知られていないだけで結構ある。寧ろ急所だらけだ。天道てんどう烏兎うと天倒てんとう眼窩がんか独鈷どっこかすみ・人中じんちゅう頬車きょうしゃ頸中けいちゅう簾泉れんせん松風まつかぜ下昆かこん村雨むらさめ天突てんとつ秘中ひちゅう早打はやうち活殺かつさつ雁下がんか水落みぞおち……と数え上げたらキリがない。

 希望のぞみはその内の一つ、勝掛(かちかけ)と呼ばれる急所を打った。次いで人中・眉間と、下顎から正中線に沿って連続で打撃する。

 襲撃者でありながらaは呆気なくその意識を飛ばした。


「手加減なしだな、お前」


「手加減?どこにもそんなことする必要ないでしょー」


「お前の認識が正しすぎて、涙が出そうだな」


 くつくつと笑いながら叩く父の軽口に、希望のぞみは返しながら油断なく残り三人を見据える。

 襲撃者達は希望のぞみの実力を認めて真正面から対峙することにしたのか、その切っ先を希望のぞみにも向けた。


「………………」


 ジリジリと殺気が辺りに満ちていく中で、希望のぞみは不思議と落ち着いていた。

 両親に会うまでは気が気ではなかったというのに、無事を確かめた途端に何の問題もなくなったと、安堵していた。

 母は拘束され、父は不利の状況だとしても。

 だから、襲撃者達が何をしても撃退出来ると疑わなかった。


 その手から放たれる無数の氷粒を見るまでは。


「なっ!?」


「任せなさい!!」


 機関銃マシンガンの様な礫の嵐が希望のぞみ達を襲うが、母の声と共に現れた氷壁によって無事防がれたものの、展開のおかしさに希望のぞみはまともに驚くことも出来なかった。


「ちょ!?」


 重なる礫にやがて、氷壁にひびが入り蜘蛛の巣のような形を成すと、壁は綺麗に破砕される。

 即座に新たな壁が生成され礫は防がれたが、埒があかないと見るや礫は軌道を変え上空へと進路を取った。

 それに呼応して氷壁はカーブを描きドーム上にその形を変える。


「それ以上やらせるか!」


 それはまたとない好機でもあった。

 襲撃者達は礫のコントロールに集中していたのか、父の起こした風に気付かずズタズタに切り裂かれる。

 しかし襲撃者達はそれすらも織り込み済みだった。

 流れる血が新たな礫として希望のぞみ達と自分達を隔てる壁に次々とめり込ませる。

 そして遂に血で造られた礫がドームの生成速度を上回った。

 めり込んだ血礫は、氷壁を侵食しその強度を徐々に落としていたのだ。


「ぐ!」


「父さん!」


 ドーム内に入った礫は父の左肩を貫いたばかりか、じくりと身(じろ)ぎ体内を掻き回そうとする。


「させるかァ!」


 父の一喝に、希望のぞみには何をしているのか全くと言って良いくらい分からなかったが、何とかしようとしていることだけは理解出来た。

 程なく傷口からコロリと出てきた礫は、明らかに傷口よりも大きなものだった。


「何これ」


 血に濡れている筈の礫は既に乾いているが、何故かうねうねと動く不気味なものになっていた。


「相手の血で出来た礫を、俺の血で覆った結果だな」


 つまり、礫が覆いを突き破ろうとしているが成せないでいる結果、謎物体になったと、希望のぞみは理解した。


「で、これをこうすると!」


 ピッチャー第一球、といった風に父は小石大位の謎物体つぶてを脆くなりつつある壁へと、痛みに顔を顰めながら叩き付ける。

 すると謎物体つぶてはするりと壁内へ入り込み、且つすり抜けて驚く襲撃者達へ向かっていった。


「くっ、くそおおおっ!?」


 謎物体つぶては迎撃する襲撃者達を嘲笑う様に跳ねる。

 彼等の焦りから、謎物体つぶての主導権は父が握っているものと見て間違いはなさそうだった。


希望のぞみ、油断するな。あいつらは、本当の命のやり取りをしてきた連中だ。直ぐに巻き返すぞ」


 父に注意され、希望のぞみは改めて襲撃者達を見る。

 見たところ特には反撃の手段はなさそうに思えたが、謎物体つぶてに四苦八苦しているbとcの横で、dがaを起こそうとしていた。


「父さん!」


「分かってる!!」


 父は即座に謎物体つぶてをdへと向ける。

 その甲斐あって、謎物体つぶては何とか間に合った。

 かなり痛そうな音を伴って、dの後頭部を直撃した。


「がっ」


 短い悲鳴を上げて、襲撃者d撃沈。

 残り、二人。


「母さん、壁はまだ持ちそう?」


「持たせてみせるわ」


 安心できる言葉に希望のぞみは残った二人を凝視する。

 と言っても、希望のぞみに出来ることは基本的にない。精々ドーム内に侵入してくるかもしれない何かから、母を守るだけの役目も、喜々として何かをしている父によって形骸化もいいところだった。

 何をしているかは、細かく描写するととんでもなくスプラッタ的なことになりそうなので割愛。


「いいぞ、解いてくれ」


 父の言葉に母がドーム状の壁の維持をやめた。

 空気に溶けるように消えていく壁に、何がどうなっているかさっぱり分からないでいる希望のぞみに、父も母も困った顔をしながら一先ず襲撃者達をどこからともなく取り出したロープで念入りに縛り上げた。


「さて、どうしようかしら。"これ"」


 瀕死と紙一重と言ってもいいほど襲撃者達は傷だらけになっていたが、自業自得というものである。

 母の"これ"扱いも仕方ないというものだ。


 「で、一体どーゆー事なのか説明してほしいんだけど?」


 出来るならば今、この場で説明をしてほしいと希望のぞみは思うが、この襲撃者達をどうにかしないと詳しいことも聞けそうにない。

 ならば、その点だけでもどうにかしてもらわないと、と口を開きかけた時、聞こえないはずの声が聞こえてきた。


「おーい、希望のぞみー?これどうなってんだー?」


「あー、悠馬ゆうま?こっちこっちー」


 ぶんぶんと手を振って自分がここにいることを主張する希望のぞみとは裏腹に、父も母も愕然とした顔をしていることに希望のぞみは気が付かない。


「………あの、おじさんもおばさんも、何でそんなびっくりしてるんですか………?」


 傍まで来た悠馬ゆうまに指摘されて希望のぞみも初めて気が付くが、確かに見たこともない顔で驚いていた。


「あ、ああ。まあ、色々あってな」


「そうね、色々あってね」


 確かに色々あった。それは間違いない事実であるが、未だここに至る経緯が全く説明されていないことに希望のぞみは視線だけで問うた。


「ここでは、ちょっと話しにくいことでなあ……」


「ここで話さなきゃどこで話すってゆーのよっ!今ここで!こいつらが何者で!!どーして襲ってきたのか!!!教えてくれないと納得できないにきまってるでしょーが!!!!」


 渋る父親に希望のぞみは食って掛かるが、それが油断となった。

 それこそ渋る父親に詰め寄る(希望)の構図は日常茶飯事で、4人共ある意味日常に戻ってしまっていた。


 刹那。


 それを一番最初に目にしたのは悠馬ゆうまだった。

 目に見えない()()悠馬ゆうまの視界の端に映っていた赤い溜まりから希望のぞみに覆い被さろうとした。

 何も分からないながらも、それを感じ取った悠馬ゆうま希望のぞみを突き飛ばし、己の身にその()()を被る。

 悠馬ゆうま自身、己の視界が真っ赤になったと思ったのが最後だった。


「――――――!」


 幾多もの赤い針に全身を貫かれて、悠馬ゆうまは苦しみを感じることもなく絶命した。

ということで、幼馴染君死亡です。

残念ながら、きっちりしっかり死亡です。

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