ありがとう三人組。
主人公も黒族のところにいた時分よりは警戒するようになりました。
希望は、どこからどこまでを言えばいいのか、また目の前の三人を信用できるかどうか。今のところは判断がつかずにいた。
「じゃあ、まず名前。いつまでも恩人を“お前”呼ばわりはしたくないからな」
「名乗りたくなきゃ、今この場でおれ達が勝手につけるぞ?」
「そうされたくなければ、さっさと名乗ることだ」
壊滅的なセンスだと自覚している希望からすれば、渡りに船である。そして結論する、三人組は白族なのに善人なのだ!と。
「よろしくお願いします!」
「「「…」」」
あまりの即答に男たちは唖然とするも、希望の期待に満ちた目に程なく陥落した。あーだこーだと数分ののち、希望は白族領内に於いてファンドラ(ファンドラーイア)と呼称されることに決まった。どこかで聞いたことのあるような無いような名前に、希望はファンドラーイアの由来を尋ねれば、昔話に登場する女性の名前だという。
「ふーん…で、どんな話?」
「虚竜を退治した話」
「で、ファンドラーイアは虚竜を退治したと言われている主人公」
「この話に限って言えば、白族も黒族も小さい頃から言い聞かせられて育つんだ」
「「「虚竜を起こせば世界が終わる、決して起こしてはならない」」」
三歳児でも知っていることを知らない希望の正体に三人は内心で頭を抱える。
何をどうしたらこんな世間知らずになるのかと。
実際、希望はことの重要性を理解しておらず、呑気に「へー」と感心しているだけである。
「お前、本当に分かってんだろうな?」
ダンドリーオンが額に青筋を浮かべながら問えば、希望が逆に質問する。退治されたはずの虚竜が住んでいたとされる洞窟で、何故トーリェルは祭祀を執り行っていたのか。
「あのさ。虚竜は退治されたんだよね?」
希望の純粋な疑問からくる言葉に、、三人は驚いた。
「お前、実は意外と注意力あったんだな…」
「ちょっとばかり見直したぞ」
と、ガンサルートとロンパートル。見ればダンドリーオンがうんうんと頷いていることに、希望は自分が如何に阿呆の子に見られていたのか知った。同時に、知識が不足しているのも理解する。
思えば黒族での教育はトーリェルの都合に合わせたものが多かったような気もする。
希望自身はその程度の認識でしかなかったが、実際は洗脳と言っていいレベルのものであった。勿論、族長であるトーリェルの指示で行われていた事だが、残念ながら希望には全くと言っていいほど届いていなかった。発信側がいくら頑張っても受信側が悪ければどうにもならない良い例である。
「んで、結局どうなのよ?」
「結論から言えば、虚竜が退治された証拠は何一つとして無い」
体毛・体液・鱗などの物証等は一切無し。虚竜が退治されたと伝えられているだけで、退治された時の状況証拠すら出てこないという徹底ぶりにも関わらず、ただ退治されたという事実のみが伝聞されているという。
「んーーーーー…」
眉間にしわを寄せて希望は記憶を掘り起こす。掘り起こし掘り起こして、思い出したのが埴輪さんと出会った洞窟。
「あのさ、虚竜の洞窟って知ってる?」
その言葉を聞いた三人は、希望の発した言葉の有り得なさに、思考が全て吹き飛ぶ。微動だにしない三人に希望は困り果てた。やがて再起動した彼らは、各々が何やら呟くと、物凄い形相で希望を凝視する。居心地の悪くなった希望は愛想笑いを浮かべるしかなかった。何せ、彼らが何を考えているのか見当も付かないのだから。
「えーと。あたしは何かマズイことを言っちゃったのかなー?」
そしてこの発言がまた、火に油を注ぐ。
「お前はおれ達の話を一つも聞いてなかったのか!」
「いいや聞いてない絶対聞いてない断じて聞いてない!」
「でなければ、こんな突拍子もないこと言わないもんなぁ!?」
絶叫しつつ希望を責め立てるが、内容は一貫している。虚竜に触るな関わるなと言った端から、虚竜に関わろうとする発言に、三人は涙目である。希望のお馬鹿さ加減についに降参したその時。
ぱきん、と何かが割れた。
なお、主人公のセンスが壊滅的なのは作者のセンスもよろしくないからです。名づけ、特にタイトルにはいつも苦労しています。




