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村の事情を聞く前に?

ハァナさんは、希望に対して警戒心が上がってます。

 放置されて数分が経過したが、ハァナが戻ってくる様子はなかったので、希望のぞみは寝床から起き出して少し高めの窓からそっと外を眺めた。

 外は、言うなれば田舎といった風情のある家並で平家建のものが多い。

 希望から見える範囲では、特に危険はなさそうだ。


「んー」


 ハァナは、村長に判断を仰がないといけないと言って出ていってしまったので、波風を起こさない為には大人しくこのだだっ広い場所で待たなければならない。かと言ってじっとしていることも無理だと感じた希望のぞみは、部屋の中を歩くことにした。

 幸いということでもないが、この部屋は広い。

 希望のぞみは早速歩き出した。


「………」


 歩き出すとこれからの方針を考える。

 まずは現状把握、それからこの世界の一般常識を知ること。そして、自宅への帰還。

 大雑把に分けて、この3つということになる。

 現状把握と一般常識の取得は、この村にいる間に何とか出来るだろうと見当をつけるが、問題は自宅への帰還と恐らくその過程で発生する仇討ち。

 この異世界へ来た過程は憶えてなくても、襲撃者達が悠馬を殺した事は忘れる事が出来ない希望のぞみは、まず間違いなく有り得る未来として予定表に組み込む。

 兎にも角にもこの村がどういった場所なのか、信用出来るのか、質問に答えてくれるのか。ようは助けてくれるのかと分からないことだらけなのだ。現状を把握することが一番の急務だった。

 それはそれとして、希望のぞみは自分が何故この異世界へ来てしまったのかを考える。

 自分の意思で異世界に渡るはずはない。それでは何かしらの力が働いて希望のぞみを送り込んだのか?と疑問は生まれても、誰が何のためにそうしたのかは不明のまま。

 逆に襲撃者達は世界を渡ってまで何をしに来たのだろうと、希望のぞみは今更ながらの疑問が浮かんだ。

 改めて当時の状況を思い出してみて、希望のぞみは首を傾げる。母は拘束こそされていたが傷つけられている様子はなかった。父は傷こそなかったが集中砲火を浴びていた。


「まさか…母さんを連れ戻しに来た、とか?」


 あくまでも推測でしかないが、ほぼ間違いないと希望のぞみは結論づける。襲撃者達が何者なのか、あの時は見当も付けられなかったが今こうやって改めて考えてみれば、謂れのない憎悪も侮蔑を感じていたように思えた。


「とすると、母さんはどこかのお姫様?」


 本当の命のやり取りをした事のあるというならば、その立場はヤクザ者か正規の兵士。ヤクザ者にしては服装が似通っていた。偏見かもしれないが地元のヤクザ達は色とりどりの服装だが統一性は全く感じられなかったということから、兵士という一択になる。

 そう考えることは出来ても、希望のぞみ自身には実感は湧かなかった。


「………あれ?」


 そこで希望のぞみは違和感を感じて外を見ると、見える範囲での子供達の髪の色はそれぞれ金・茶・碧・碧の三色、ハァナの薄青色といい日本ではまず見ない色。

 一方で襲撃者達は金髪が、というより全体的な色素が薄かった様に記憶している。

 そこで希望のぞみは違和感に気がついた。

 耳の尖り具合が、この村の住人は小さい。

 そして、肌の色。

 襲撃者達は俗にいう白色人種の様な肌色をしているが、ハァナや子供達は黄色人種、日本人の様な肌色をしている。

 それが違和感の正体だった。


「お姉さん」


 そんな希望のぞみを、ハァナは胡散臭げに見ながら声をかけた。


「あ、ハーナちゃん」


「良かった。憶えててくれたんだね」


「さすがに記憶が失くなってても、さっき聞いた名前は憶えてるよ」


 忘れていたらそれこそ病気だと笑いながら言ったところで、希望のぞみはハァナの背後に立つ壮年の男性に頭を下げた。


「ふむ」


 男性は希望のぞみを一瞥すると、ハァナに外で待つ様に指示を出す。ハァナは反対の声を上げた。


「いくら村長が強くても、それは」


「構わん。このお嬢ちゃんは儂らには手を出さんよ」


 村長と呼ばれた男性は膨れるハァナを追い出すと、視線だけで希望のぞみに同意を求める。


「もちろん!助けてくれた村の村長さんに、そんなことしないって!!」


 そんな恩知らずではないと全力で否定する希望のぞみだが、ハァナからは信じてもらえなさそうなので、その辺に転がっていたロープを指して言った。


「何だったらコレで!」


 自ら拘束されようとする希望のぞみに呆れ返りながらもハァナはきっちり希望のぞみを簀巻にした。芋虫の様に転がる希望のぞみを苦笑しながら村長と呼ばれた男性はハァナが出て行ったのを確認すると何やらもごもごと呟く。

 希望のぞみは何をしているのかを問いかけようと口を開いた瞬間、長を中心に広がった見えない力に言葉を失った。


「さて、お嬢ちゃん」


「あ、はい」


「お嬢ちゃんは一体何者かな?」


「さあ?」


 記憶喪失という便利な状況を盾に希望のぞみは己の正体についてとぼける。とぼけるしかないとも言える。


「ハァナから聞いたが、お嬢ちゃんは山の上から降りてきたらしいな」


「そーですね」


 希望のぞみは嘘は言っていない。気がついたら山頂にいて、下山するために歩いていたら狼っぽい何かに追い掛けられて、逃げて逃げて逃げ切ったと思ったら崖から落ちて、どうにか助かったと一息吐いていたら鱗人間に追い回されて、挙句に川に落ちた。


 日本で意識を失ってから山頂で気がつくまでの記憶はないけど。

 狼っぽい何かに追い掛けられて、落ちた崖が有り得ない高さだったけど。

 落ちたキッカケが水の中にある不思議物体を眺めていて落ちたけど。


 それらを言ってないけど、嘘はついていない。


「じゃあまず、お嬢ちゃんの行動を少し詰めてみよう」


「詰める?」


「そうだ。そうすればお嬢ちゃんは、自分が如何に怪しかったのか分かるだろうからな」


「あー………」


「尋問一つも受けないで、受け入れられる訳がなかろう」


 村長はにやりと笑いながら、その背に隠し持っていた小剣を転がる希望のぞみの真近に突き立てた。


「さあ、きちんと答えろよ?」


 返答如何で、希望のぞみ未来これからが変わる。

 村長の本気に、希望のぞみは居住まいを正した。

村長さん、登場。

筋骨隆々のオッサンです。そんなオッサンの前で簀巻です。そして小剣突き立てられてます。

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