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ここはどこ?私は誰?を使ってみることにした。

久しぶりの更新です。

新キャラ、というか漸く第一村人!というところですね。

 ハァナは困っていた。

 目の前には、恐らく自分達と同じであろう存在が倒れている。川の縁に倒れているところから、流されてきたのだろうと想像するのには容易なのだが、問題なのは倒れている人物の着ている服装なのだ。

 見たことのないデザイン、見たことのない布地、見たことのない縫製。

 困り果てたハァナは、取り敢えず川から引き上げておいて、どう対処するべきか村長の元へと出向いた。


「どうした?ハァナ」


「川でちょっと」


 要領を得ない話し方に、村長は他言無用と周りに目線で言い含めてハァナに先を促した。


「水を汲むために川まで出たのは良いんですけど、私では判断出来ない者を見つけてしまいまして」


 ハァナの言葉に周囲がざわついたが、村長は無言であったために、ハァナもそのまま話を続けた。


「見た目だけで言えば私達と同じなのですが、その服装が問題なのです」


 そうしてハァナは自分が助けた者の特徴を告げると、周囲はますますざわついた。


「どういうことだ…?」


 ハァナの前にいる面々は、全員がそう思っている。

 この村が出来てから300年経つ。その間にも同じ境遇の者達がこの村に流れてきてたりはしたが、皆、ごく普通の格好であった。

 決してハァナが今話した様な異様な風体ではなく。


「それで、ハァナよ。その者は何処に匿ったのだ?」


「村に入れるのも恐ろしい気がしたので、見張り小屋に寝かせてきました」


「うむ」


 村長はハァナの判断を褒めた。


「皆も分かっているだろうが、この村は秘さねばならない。疑われる行為は慎まねばならない。だが、儂ら同じであろう立場の者が苦難に喘ぐのを分かっていて見捨てることも出来ない」


「村長」


「その者が何か仕出かしたら、儂が責任を取ろう。だから今は、手を差し伸べてやろうではないか」


 村長の決定に反対の声を上げる者はいなかった。

 それからは速やかに、要救助者やっかいものの対応に動いた。

 全ての村人に戒厳令を敷き、それから数人で未だ意識の無い要救助者やっかいものを見張り小屋から連れて来る。

 集会所で、目覚めるのを見張るのはハァナ。

 ハァナ本人は抗議したが、その厄介者が女性であることと何より発見者がハァナであること、そしてハァナ自身がそれなりの実力を持っていることで、その抗議は切り捨てられた。

 仕事から解放されたと思えば良いのだろうが、それ以上に面倒くさいことになることを思えば、押し付けた村長に恨み言の一つも呟くのは仕方がないと言えた。



 ※※※※※※※※※※※※※※※




「知らない天井…」


 ぼんやりと視界に入る天井は、自室のものとも悠馬の部屋のものとも違う模様だった。


「何であたし、寝てるんだろう…」


 そう呟いてから、自分に何が起きたのかを思い出した。

 がばりと飛び起きて、自分のいる場所をつぶさに観察する。

 広い部屋だが、生活感はない。というか、家具が一切ないその部屋は個人の家ではありえない広さだった。仮に、個人宅の一室の広さがここと同一であったとしても、壁の傷み具合と家具のなさから希望のぞみは自分が公民館的な施設にいると判断する。

 拘束もされていないところから助けられたものと判断したが、誰もいないのでは状況も知ることが出来ない。

 仕方なしに希望のぞみは寄合所から出ることにしたが、立ち上がったところで待望の誰かがやってきた。


「あ、起きてた」


 やって来たのは籠を持った薄青色の髪をした女の子だった。


「やれやれ、ようやく起きてくれたよ」


 そういって女の子は、とたとたと希望のぞみに近寄ってポカンと呆けている希望のぞみを無理やり座らせると、額に手を当て熱の有無を見る。


「ん、熱はないね。まったく驚いたよ、水汲みに行った先でお姉さんが倒れてるんだから」


「えーと…助けてくれてありがとう?」


「いいえー。でも何でお姉さん、あんなとこで倒れてたの?」


 女の子の問いに、希望のぞみはこちらに来てからのことを話した。当然ながら日本むこうでのことは伏せておく。


「それはまた…災難だったんだねぇ…」


 一通り聞いた女の子は助かった希望のぞみに同情したのか、持ってきた籠にあったパンとスープを希望のぞみに押し付けてきた。

 最後に食べたのが悠馬と食べたチョコレートショップのデザートだけだった希望のぞみは、喜んで頂いた。


「ところでさ、ここ、どこなのかな?」


 行儀悪いと思いつつも希望のぞみは情報収集を開始した。開始といっても目の前の女の子に質問をぶつけるだけなのだが。


「ここは村の集会所。長の指示でここに寝かせておけっていうことで」


 返ってきた言葉はやや期待していたものとは違ったが、それでも"村"というからにはそんなに規模の大きくない集団だと分かる。

 それから聞き出せたことと言えば、上流で希望のぞみを追いかけてきた鱗人間が実は少数部族であの辺り一帯を縄張りにしていることと、村の人間も滅多にそこまでいかないこと、ずぶ濡れになっていた希望のぞみの服は同じ部屋の隅で干されていること、今着ている服は長の奥さんからの借り物であること。

 それと女の子の名前がハァナという名前だったこと。


「お姉さんの名前は?」


 当然とも言うべき返ってきた質問に、希望のぞみは一計を案じる。


「それが………何にも思い出せないんで………」


 出来るだけ不安げに物を言うと、ハァナは表情を曇らせた。


「本当に何も思い出せないの?ここまでどうやって来たとか、何か目的があったとか」


 その目的を希望のぞみは持っていなかった。

 何せ"世界"を超えて来たものの、そこに自分の意思はなく気が付いたらいたという答えようがない状態。

 加えて前後の記憶もないという、実に曖昧な状態。出会ったばかりの人間(?)にとても話して聞かせられる内容ではない。

 そこで希望のぞみは記憶喪失を装うことにした。バレるバレないは二の次である。

 果たしてハァナは、うまく騙されてくれたようで希望のぞみに対して同情を掛けつつもその警戒心を多少なりとも緩めることに成功した。


「記憶を失ってからどこをどう歩いたかも殆ど覚えてなくて…」


「うわ……でもそうすると…お姉さんごめん。しばらく戻ってこれないかもだけど、ここから動かないでね!」


 そう言うとハァナは慌てた様子で出て行ってしまったので、どうしようもなくなった希望のぞみは残っているパンとスープを片付けることにした。

 胃に食料が入れば、頭に血も回る。ハァナがいない今、状況を整理してみることにした。


 ・悠馬と店に行く

 ・家に襲撃

 ・

 ・いつの間にか山の中

 ・落ちた上にまた落ちる

 ・助けてもらう   ←今ココ


 指折り数えて希望のぞみはどうにもならないということだけが分かった。


「前途多難、かなあ」


 誰に言うでもなく呟いた言葉は、虚しく宙に消えていくだけだった。

希望をどう扱うかは、村長の判断待ちですがハァナさんは余り手荒く扱いたくないと思ってます。

あと、ハァナさんですが希望より見た目若いです。中学生くらいです。


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