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【凍結】死ぬのが恐いので世界を平和にしようと思う。  作者: ふぉっくす@フランスパン
3/4

新しき世界@幼馴染み

次の日、俺は父に呼び出された。

彼の名はガウス。

元凄腕の冒険者だった、らしい。

俺がガウスの部屋に入るや否や、彼は呆れたような顔で、こう言った。


「フェリオス、お前は1日中本読んで、外で遊ばんのか?というかお前が外に出たところを見たことがないんだが」


確かに、俺くらいの年の子は外で走り回るものだろう。

だが、


「父さん、外には魔物がいるでしょう?」


そう、魔物だ。

この世界の死因ナンバー1は魔物によるものなのだ。

なぜわざわざそんなところにいかなければいけないのか。

ガウスは何やら考え込む。

俺を外に出す方法でも考えているのか?

一応、護衛が五人くらいいれば出てもいいのだが。

……あ、駄目だ。

護衛が裏切る可能性が0じゃない。

ふと、ガウスは何かを思い付いたような仕草をする。


「フェリオス、お前、確か魔法を使いたいんだよな?」

「?…えぇ、まぁ」


ファンタジーは害悪だといったが、相手がそれを使うのなら、それに対抗できるだけの力は欲しい。

けど、何でいきなりそんなことを聞くんだろう?


「じゃあ、魔法学校行ってこい」


魔法学校――文字通り、魔法を習う学校だ。

しかし…


「いいのですか?学校は高いのでしょう」


もちろん、行かせてもらうのは嬉しいが、そのために危ない金に手を出されたら困る。

ガウスはその言葉に苦笑しながら言った。


「言っただろ?俺は元凄腕の冒険者だったって。貯えはかなりある」


……え、あれ本当だったの?

てっきり冗談かと思ってたんだけど。

俺は改めてガウスを見る。

背は高め。

肉付きはいいが、それも普通並みだ。

恐らく“少し鍛えた程度の高校生”と同じくらい。

え、本当に凄腕の冒険者?


ガウスは俺の思考を読んだのか、


「おい、言いたいことがあるなら聞こうじゃないか」

「イエ、ナンデモ」

「……まぁいい。そうだ、学校は十二歳からしか入れんからそれまでは……まぁ、出来るだけ外に出るんだぞ」

「えぇ。“出来るだけ”外に出るようにします」

「…何故出来るだけを強調したかは気になるが、言っても聞かんだろうから触れないでおこう」


流石父さん、よくわかってらっしゃる。


その後、しばらくガウスと喋り、俺は自分の部屋に戻っていった。

6年後、楽しみだな



 ◆◆◆



俺が黙々と本を読んでいると、部屋の扉がノックされた。


「フェリオスー、お前の友達が来てるぞー」


……は?

友達?

いるわけないじゃん。

ずっと引きこもって外に出たことないんだし。

何?皮肉?

俺は当然無視しようとしたが、はやくしろーずっと家の前でまってるぞーと、言ってくる。

もしかして本当に誰か来てる?

俺はしぶしぶ部屋から出ていく。

そして玄関の戸を開けると、そこには俺より少し背の低い女の子が立っていた。


「……どちら様ですか?」

「あ、えと、私はテト…です。隣の家に住んでるんだけど…ですけど」


どうやら俺が敬語で尋ねたから合わせてくれたらしい。

……使えてないが。


それにしても隣の家の子か。

ハハッ、この6年間見かけたこともないや。


「そうですか、それはどうも。俺はフェリオスといいます…何か用でも?」


「…えーと…フェリオス君と会ったこと無いから挨拶しようかと思って…思いまして」

「はぁ、それはどうも。……家、上がります?」


わざわざ来てくれたんだし、お茶くらいは出そうかな。


「あ、いいの?…ですか?」

「えぇ。あと、無理に敬語使わなくていいですよ」

「あぅ…うん、わかった」

俺はテトを部屋に案内する。


「わぁ、本がいっぱいあるね。これ、全部読んだの?」


おぅ…グイグイ来るな。


「まぁ、そうですね」

「あ、フェリオス君も敬語、いいよ?」

「ん?そうか?」


俺的には初対面の人にタメ口とか嫌なのだが……まぁ、いいか。

俺は部屋を出て、お茶とお菓子を取りに行く。

途中、ガウスがとてもニヤニヤしていたので、“止めさせた”。

別に部屋に連れ込んだのに変な意味は無いさ。


部屋に戻ると、テトは俺の本棚の本を眺めていた。


「テト、お茶入れてきたぞ」

「え?あぁ、ありがとう」


かなり本を眺めるのに集中していたのか、声をかけると少し驚いた反応を見せる。


「本、好きなのか?」

「う、うん」


テトは顔をやや赤らめて答える。

……おい、どこに顔を赤らめる要素があった?


「フェリオス君はここにある本、全部読んだの?」

「ん?あぁ、もちろん」

「へぇ、すごいね。…これ、読んでもいい?」


テトが手に取った本は【天魔大戦】

天軍と悪魔軍の200年にわたる大戦をえがいたものだ。

ページ数は驚きの37920。

これがさらに6冊もある。

読むのにすごく時間がかかった…。


「おう、いいぞ」


もちろん俺はそれを許可する。

テトはその場で本を開き、読み始めた。


「あ、椅子いるか?」


しかし、テトはその問いに答えなかった。

どうやらすでに本の世界に入り込んでしまっているようだ。

俺も先ほど読んでいた本を手に取り、再び読み始めた。



 ◆◆◆



本を読み終わり、顔をあげると、外はもう暗くなっていた。

テトはいまだに本を読み続けている。

そろそろ帰らせないとマズいかな。

本を読んでいる人の邪魔はしたくないし、されたくもないが、仕方ない。

俺はテトの肩をトントンと叩く。


「…………へ?あ、どうしたの?」

「もう夜だぞ。帰らなくていいのか?」

「え?…あ、ほんとだ。もう帰らないと。えと…今日はありがとね」


テトは残念そうに読みかけの本を棚に戻す。


「あ、その本持っていっていいぞ」

「え?いいの?」

「あぁ。家隣だし、すぐに返しにこれるだろ」

「うん、ありがと」


テトは表情を一変。

とても嬉しそうに本を抱え、帰っていった。



テトが帰ると部屋は静まり返る。

そのせいか、フェリオスの独り言はやけに響いた。


「……印象よく演じられたかな?」

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