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あ~る珈琲 -バイト店員渡辺くんの日常  作者: 渡辺くん
第二章 渡辺くん恋愛事情
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友人来訪

「あれ? 渡辺くん、今日は友達と一緒に来るんじゃなかった? 」

 店に着くと店長が声を掛けて来た。店内の客はテーブルに一組とカウンターに常連の後藤さんのみ。

 僕は店長に手早く事情を説明し、後から友人の矢野とその彼女、そして溝口さんが来る事を報告した。

「なるほどね、了解」

「じゃあ、僕もすぐ支度して来ますから! 」

 いつもより張り切ってロッカーへ向かう。だって今日は、僕専用のエプロンが来たばかり。今日は気合入れて、店長の着ているような白いカッターに黒のパンツを真似させてもらおうと思っていたのだ。いつかカフェエプロンが着られるようになったら、と思ってあらかじめ購入しておいた一式を学校帰りに取りに戻っていた。


 ノリの利いたシャツと黒のパンツを身に着け、その上からカマーベスト風エプロンを首に掛ける。腰の所から出ている長い紐を、一度背中側に回し前で結び目を作ってから、姿見で自分の全身を映して見た。

「うん、悪くない。なかなかイケるじゃない」

 自画自賛だが、思った以上に自分のカフェ店員姿はサマになっていてテンションが上がって来る。お披露目の日に溝口さんが来てくれるというのも嬉しい誤算だ。改めて見ると、このエプロンはカッコいいだけじゃなく、機能面でも優れているな。洗い物しても白いシャツや黒いパンツが汚れる確率がぐっと下がる。


 僕がエプロンを着けて店に戻ると、常連の後藤さんが「おっ! 一丁前になったんじゃない? 」と声を掛けてくれる。店長も似合うよ、と言ってくれたし及第点はもらえるみたいだ。よしよし。

 後はエプロンに負けないように、技術を上げて行けばいいだけ。……それが一番の問題だけどね。

 いつものように、洗い場で食器を洗ったり、テーブルを整えたりしている内に店内の客も増えて来た。店長に断って『Reserve』の札をテーブルに置かせてもらう。


「おお、なかなか似合っておるではないか。馬子にも衣装だな」

 そうだ、コイツを忘れていた。コイツに余計な事をされてはたまらない。かと言って、大人しく協力してくれるなんて全く思えない。


「今日僕の友達が来るから、見つからないようにしといてくれよ」

 僕は小声であ〜る君に注意する。

「渡辺の友達か。それは挨拶せねばな」いやいやちょっと待て。

「隠れてろって言ってんの」

「渡辺の師匠としてはそうもいかんからな」

 師匠じゃない! 全く噛み合わないまま、オーダーを頼まれてしまったのでその場を離れると、あ〜る君はどこかへ行ってしまった。

 まぁ誰にでも見えるわけではないから大丈夫だとは思うが、溝口さんはカフェ好きだと言っていたし、中途半端に見えるような事にならなければいいのだが……。


 夕方になり、予定通り矢野が二人の女の子を伴って現れた。

「よう、なかなかいい店じゃん」

 予約席に案内すると、早速矢野が声を掛けてくれる。

「ありがとう、連れて来てもらって助かったよ。溝口さんも急にゴメンね。約束した時は時間の事忘れててさ」

 それぞれの前に水とおしぼりを置いていく。


「ううん、勝手に約束しちゃってちょっと強引だったかなって反省してます。こっちこそゴメンね。でもほんとに素敵なカフェだね! 」

 自分が好きなものを好いてくれるのは手放しで嬉しいものだ。でも、ある意味身内を褒められたような感覚で、嬉しいけど面映ゆい、ちょっと複雑な感情が湧いて来る。なんだかこそばゆい感じだな。普段あまり褒められ慣れていない故であろう。


「渡辺くん、初めまして。矢野くんとお付き合いしてる横井香苗って言います。今日は急にお邪魔しちゃってゴメンなさい」

 矢野の隣に座った彼女もニコリと挨拶をしてくれる。黒いさらさらストレートロングヘアを背中まで流し、色白の肌に大きくてくりっとした瞳。柔らかなパステルカラーのワンピースを着ている様子はいかにもお嬢様という風情だ。ふむふむ、矢野の好みはこんな感じだったんだな。

「いらっしゃいませ。来てくれて嬉しいよ。いつも矢野から話は聞いてたけど、彼女がこんなに可愛いなんて思わなかったよ。お似合いだね」

 そう言うと耳まで赤くなり、手に持ったハンカチで顔を隠してしまった。ほんとに可愛いな。


「皆さん、ご注文は決まりましたか? ウチは珈琲専門店だから、メニューはほとんど珈琲ばっかりなんだけどね」

 木の板に書かれているメニューに目を走らせる一同。

「ほんとに珈琲ばっかりなんだな。ここまで徹底してる店も少ないと思うよ」

 そう言って目を丸くする矢野はアイスコーヒーをオーダー。

「でもこういうお店の珈琲は、絶対美味しいよ! 期待しちゃうな」

 嬉しそうな溝口さんはブレンドをチョイス。

「ほんとにすごーい。でも私あんまり分からないかも」

 普段あまり珈琲を飲まないという横井さんにはカフェオレをオススメする。


 僕はかしこまりました、と言葉を残して店長へオーダーを通しに行く。なんだかいつもより気持ちが引き締まっているように感じた。

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