第77話 パーティ戦本戦 ③
おとなしくおとなしく・・・けど目立つ行為・・・。
第一回戦4試合が終了した。
第二回戦で争うのはシードチームの4パーティと第一回戦を勝ち抜いた4パーティとで争われる。
シードと勝ち残りそれぞれで抽選を行い試合が組みなおされた。
ラン達の第二試合は3試合目になる。
相手は第4シードのチーム「カイザー」。
待機通路に待つカナはランの背中を見てため息をついていた。
ランが今回選んだ武器はなんと『弓』、厳密に言えば『コンパウンドボウ』と呼ばれるアーチェリーの一種だ。
えっと・・・『ラ○ボー』で主人公が使っていた弓と同じ種類といえば解りやすいかもしれない。
ちなみにオリンピックで使われているアーチェリーは『リカーヴボウ』といってまた種類が違う。
日本では競技用もあいまって『リカーヴボウ』が主流だが世界では動物を狩るハンティグ用として『コンパウンドボウ』のほうが主流だという。
なんで私がこんなこと知っているかというと、高校生の頃(工藤の)お兄ちゃんのお店でアルバイトしていた時に教わったのだ、お兄ちゃんの趣味のアーチェリーについて・・・。
お兄ちゃんがアーチェリーを趣味にしだしたのがアメリカ在住の頃、当然覚えたのは競技用ではなく狩用。
したがってお兄ちゃんのところには日本には珍しい『コンパウンドボウ』がいくつも保管されている。
日本ではアーチェリーによる狩は禁止されているので練習場でしか使えないとか言って嘆いていたのを覚えている。
ランお姉ちゃんは確か『弓』関係のスキルはまったく上げてなかったはずだ。
ということは今回もリアルスキルでカバーするつもりなんだろうけど・・・なんで回復役用に武器として弓用意するのかな・・・。
隙見て撃つつもりかしら・・・。
まぁ、回復だけだったら暇になるかもしれないし (なにしろ私達のギルドメンバーは全員回復魔法持ちだ) そのとき使うというのならいいけど・・・なんか別のことに使いそうで怖いのよね・・・。
ふっふっふ・・・
カナの要望もかなえしかも俺の趣味も満足させるべき用意した今回の獲物はコれだ!!
両手武器:アクア・アーチェリー
飛攻+82 MND+20
追加効果:属性魔法【ヒールIII】(自己MP)
こいつの完成のきっかけは盗賊狩のクエストの時シンジ君に相談された効果能力付の矢・ボルトの件だ。
最初は矢やボルト本体や矢尻にどうにかつけようと悪戦苦闘してたのだがどうも納得のいくものができない。
ぶっちゃけ矢やボルトの先に薬をつけて撃つほうが効果が高いものしか出来なかったのだ。
どんな弓でも使えるという意味では何とか完成したいのだが今のところは五里霧中状態。
ならば発想を変えて矢ではなく弓の方なら魔法効果の追加で一種類といえども付属効果かつけられないかと試したのがきっかけ。
最初は炎系属性魔法の初期魔法【ファイア】をルビーに【魔術回路】をつけて作った弓に【魔法付加術】でつけて試してみたわけだ。
最初は普通に矢を使って撃つつもりが弓に魔力を流したら赤い矢が浮かび上がってきた。
持っても熱くないのでそのままその矢で撃ったら命中したところが【ファイア】で燃え上がった。
驚いたね。
これなら弓でやるプレイヤーにとっては通常状態の狩ではまさしく矢のお金がいらなくなるから経費節減になる。
ついでに通常の矢も撃つことが確認できたからMPが無くなった時や特別攻撃力の高い矢や将来には出現するであろう特殊効果持ちの矢も普通に使い分けて使える。
なんてラッキーな弓が出来たんだ!・・・なんて喜んだんだが・・・。
よくよく考えたらこんな弓が出回ったら木工関係で生計立ててる職人の最大収入源がいっぺんになくなることに気がついた。
さすがにこれはまずい・・・。
しかし実験はしてみたい!、研究成果は見せ付けたい!・・・そんなときに思いついたのが敵に撃つのではなく見方にしかも回復や強化魔法にしたらとりあえずは他の人の目が一時期でもごまかせるかということ。
こんな単純なことでごまかせる馬鹿も早々いないだろうが作り方さえばれなければどうとでもなる。
なにしろうちの店は武器防具の製作なんて受けてないからね。
そんな言い訳の元完成したのがこの弓である。
さて試合の時、おおいに皆を驚かせてやるぞ・・・・
ケーケッケッケッ・・・・(笑)
『勝者、チーム【アネテミス)】! 』
『それでは引き続き第二回戦第三試合をはじめたいと思います!』
『青コーナー、チーム【カイザー】!』
観客席からなぜか黄色い声が上がる。
闘技場で手を振っているのを見れば・・・なるほど・・美形の男ばっかりだな・・・リアルでしどうか知らんけど・・・。
取りあえず・・・俺の敵に認定ということでいいよな・・・。
『赤コーナー、チーム【闘猫師団】!』
俺達が闘技場にあがるとなんか驚きの声が観客席からあふれた。
相手チームも自分の盾と俺の武器を指してなんか言い合ってる。
あぁ、また武器が変わったから驚いてるのか、そういや予選、第一試合、そして今回の第二試合と全部武器が違うものな、たぶん向こうのチームは『ファイアスピア』に対抗するためになんか用意してきたのが無駄になってあわててるんだろう。
まぁ・・・諦めろ・・・。
『それでは第二回戦第三試合、始め!』
合図と同時に【プロテクト】と【プロテクトマジック】を範囲拡大で仲間全体にいっぺんにかける。
そしておもむろに腰の矢筒から木の矢を取り出し相手の魔術師が何か行動起こすたびに撃ちかけて邪魔をし続けた。
回復役兼最大瞬間攻撃役の魔術師がまともに動けなければカナ達だけで余裕で片付けられるはず。
弓のスキルがなくても邪魔するだけならダメージも考えなくていいのでリアルスキルで対処可能。
まぁ、最初からスキルないので大ダメージはあたっても出せないと踏んで矢自体一番安い木の矢で済ませてるのだけどもね・・・。
鏃すらつけてなくて先尖がらせてあるだけだし・・・。
第一試合と違ってずいぶんまともな試合になっている。
状況としてはこちらが押し気味、つねに回復役の魔術師が俺に行動を邪魔されて思うように動けないため回復自体が遅れているため大きな行動が取れないらしい。
ふむ、そろそろ状況が動くかな・・・。
相手のチームが状況を打破するためこちらのチームのメインタンク役のグラン君をウエポンスキルを混ぜた攻撃を集中させたため大きくHP削れる。
やばい!ルカちゃんの回復が間に合わない。
とっさに【アクア・アーチェリー】に魔力を流し開放キーワードを唱える。
ヒルスリー!!
中央に取り付けられていたスターサファイアに刻まれた魔力回路が発動し青い光を放つ。
出てきたのは青い光の矢。
ランは迷わずそれをつかみ弓を引きグラン君の背中めがけ放つ!
矢が命中し発動したのは水系中位魔法【ヒールIII】、一度に300ポイントの体力を回復する。
それが2発命中!
グランは背中に軽い衝撃を受けたと思ったら一気にHPが完全回復した。
矢を放ち終えるとランは闘技場の端に移動してグラン君の死角から奇襲をかけようとしていた相手チームの軽戦士を属性魔法【ウィンドウ】と精霊魔法【風の刃】でリング外に押し出す。
これで戦力バランスが一気に崩れた。
あとはあぶなげなくカナ達が相手チームを押し切って勝利を収めた。
『勝者、チーム【闘猫旅団】! 』
勝利宣言を聞きながらリングから降りようと歩き出す。
今回は欠点らしいのも見つからなかった耐久力も減ってないし。
カナの要望にも答えられただろう、うん良かった良かった♪
「お~ね~え~ち~ゃ~ん・・・・」
気のせいでした・・・やっぱり何か文句あるようで・・・。
なんかまずいことしたっけ?(恐怖)




