第75話 パーティ戦本戦 ①
まずはチーム戦から。
大人しくしておくはずのランがいきなりやっちゃいました(笑)
12チーム中上位4チームはシードチームとして第二回戦から他の8チームは第一回戦から始まる。
ラン達は第一回戦は2番目だ。
今彼らの目の前では前のチーム2つが戦っている。
が、もうじき終わるだろうどうみても5位のチーム『ボルガン』の方が勝負運びがうまい。
6位のチーム『青竜』は初っ端に最大火力と回復薬の魔術師2名が吹き飛ばされて終わってる。
盾役が重騎士を名乗っているだっけあって頑丈だが時間の問題だろう。
そんな感想をしながら見ているとシンジがオズオズとランに質問してきた。
「ランさん、その背中のでっかい槍はなに?」
うん?これか?魔法発動用の『杖』だ。
両手武器:ファイアスピア (白)
攻+62 INT+20
追加効果:属性魔法【ファイア・ランス】(自己MP)・【ジェット】(自己MP)
このゲームで魔法は別に『杖』がなくても発動する。
ただ『杖』にいろいろブーストをつけるとそれなりに有利になるために持っている魔術師も多い。
そして『杖』はなにも木の棒である必要はない。
例えば指輪や武器・防具であってもかまわない。
かまわないのだが普通武器には杖としての役目を持たせない。
だってそうだろう攻撃力上げるステータスアップならともかく剣や斧にわざわざINTなどつけるか?
普通にSTRあたりつけて攻撃力増やすほうがよっぽど理にかなっている。
そもそもパーティで後衛の魔術師が剣だの斧だの持っても意味がないからだ。
ソロ活動するならともかく生粋の魔術師のソロ活動はよほどの高レベルでないと難しい。
よってみんな目を丸くした。
そりゃ、なんか無駄な装備だからだ・・・。
しかもランは【剣】のスキルは持っていても【槍】のスキルは持っていない。
いくらリアルスキルである程度カバーができるにしろ限界があろう。
ちなみに【剣】スキルは一般に『刃がある武器』のため薙刀みたいに先に刃物がついていればある程度使える。
大鎌もしかり、あとはその武器の慣れ具合が問題なぐらいだ。
そして今ランがもっているのはいわゆるロングランスやロングスピアと呼ばれるもので『刃』の部分はないため彼女にはまともに使えないはずだった。
「大丈夫なの?お姉ちゃん」
カナの心配そうな問いにランはにっこり笑って「まぁ、みてなさい」と答えていた。
『チーム【ボルガン】の勝利!!』
『それでは引き続き第二試合をはじめたいと思います!』
『青コーナー、チーム【アイスクリーム】!』
審判の声に呼ばれて入ってきたのはなんと女の子だけのチーム。
はい、この時点で『剥ぎ取り御免』は今回封印決定と、予定通り行くとしますか。
『赤コーナー、チーム【闘猫旅団】!』
その呼び声に答えて俺達も闘技場に上がる。
それと同時にどうやら俺を皆指差している。
それなりに動画等で俺は知名度があるらしく予想されていた戦闘スタイルが今回違いすぎるために驚いているのだろう。
主に手に持っているロングスピアに・・・。
「ずいぶん変わった武器をお持ちですが使いこなせるのですか?」
そんなことを相手のチームのリーダーから聞かれたが答えは「大丈夫任せて♪」。
おーおー、相手のリーダーさん顔引きつらせているよ。(笑)
もっともひとことも私はスピアとして使うなんていってないけどね・・・。
『それでは第二試合・・・始め!!』
審判の合図とともに・・・
ラン、行っきま~~す!
と、大声で宣言すると相手チーム全員身構える。
こちらもファイアスピアを腰だめに構えて・・・
ファランス!!
ファイアスピアに魔力を供給すると同時に魔法発動のキーワードを唱えた。
ファイアスピアの柄の部分以外がキーワードと共に赤く光り炎系属性魔法【ファイア・ランス】を連射する!
ここでこのゲームの魔法のことについて簡単に説明しときたい。
属性魔法や精霊魔法は初期の魔法を除いて必ずインターバルがあるため連射が不可能な使用になっている。
ただしスキルレベルがあがれば下位の魔法はインターバルの時間が減るため待ち時間が短くはなる。
ランが使った炎系属性魔法の【ファイア・ランス】はレベル30以上から使える汎用中級魔法である。
汎用は【属性魔法】を上げていれば使える魔法、専用は属性魔法のレベル50で開放される各種属性の専用魔法で光・闇・火・水・風・土とある。
【ファイア・ランス】は中級ゆえに本来インターバルは10秒間ある。
そう、今ランが使っているように連射などできるものではない。
当然このようなことができるのには『種』がある。
まずはアイテムに【魔法付加術】でつけられた【ファイア・ランス】。
そして内部に仕込まれたルビーによる【魔術回路】。
この魔術回路はエリーシャの図書館にあった本に詳しく書かれていた・・・【精霊語】で・・・。
ほとんど嫌味である・・・。
ほとんどの人は読めないだろう上に書いてあるのは【属性魔法】についてだ。
ハーフエルフは【精霊魔法】を使うから効果が同じような魔法である【属性魔法】をもっている人は聞いたことがない。
よって彼らは文字が読めてもこの本自体には用事ないので読まないだろう。
そしてそれ以外の人はまず【精霊語】自体を知らないから読めない。
まさしくこれを書いた人は嫌味の極致だろう。
と、同時にまさか【精霊語】が読めるヒューマンが出るとは予想してなかっただろう。
まさしくもうけであった。
簡単にぶっちゃけると【魔術回路】でインターバルを打ち消し道具に魔力をつぎ込んで作るのではなく使うときに魔力を供給する方式で作り上げると壊れることなく使用者のMPが続く限り連射可能となる。
通常魔法をこめると使用制限ができるためそれを回避する手段として昔考えられた方法らしい。
このことを本で見つけたときは喜んだものだ。
おかげで今回のこの武器と個人専用の防具はこの方式で作られた。
ちなみにアダマン糸で布を作ったりしたのは以前からの疑問で思っていたのを試したわけでついでに魔法伝導率がいいのを利用して防具全体に魔術回路をミスリル銀の糸やアダマンタイト糸で作り上げるのに成功した。
ランの生み出した【ファイア・ランス】連射はあっという間に前衛3人を砕ききったため後衛は迷うことなく降参を申し入れた。
試合時間実に27秒。
まさに瞬殺であった。
『勝者、チーム【闘猫旅団】!』
審判の宣言が響き渡る。
「「「「「私達出番なかった・・・」」」」」
カナ達の言葉は聞こえない振りしてランは逃げるように闘技場を降りることにした・・・。
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