第105話 近代兵器
近代兵器は数が命。
拳銃1丁で戦いには勝てません。
ズドーン! ガチャ・・・ ズドーン! ガチャ・・・ ズドーン!
ミルシャの北門を出たすぐのあたりで15世紀前後をモデルにした世界には不似合いな大きな銃声が響いていた。
岩場の上の平らな場所に陣取りこの世界には実に不似合いなどこかの世界の軍隊が着るような迷彩服の上にインターセプターボディアーマーを着込んだランの姿があった。
手には大型のライフル。
どうやら一昔前は対戦車ライフルと呼ばれていた対物ライフルのようである。
実はラン、今回のバージョンアップ前にはすでに拳銃・小銃の類のものは完成させていた。
なにしろハイデル廃坑発見後すぐに【爆裂石】を発見している。
取り扱いが難しく直接使う手榴弾方式もようやく完成したばかりだ。
それを火薬化してさらに装薬や破裂薬としてつかうには改良が必要だった。
幸い【上級錬金術】と【化学】のスキルに助けられ実験段階ではあるが改良に成功した。
銃本体は元海兵隊員の知識が物をいった。
分解整備は必須であったため部品の大きさから形組み立て方などは手に取るようにわかる。
ましてやネット最盛期の時代だ。
調べれば部品単位の寸法なんかもそれなりに調べる手段がある。
したがって銃本体もとりあえず試作品の段階まではすんなりいった。
だがここで大きな落とし穴があった。
弾の加工技術だ。
通常弾なら普通に作れる。
ただこの世界の生き物はやたらめったら丈夫なのだ。
通常弾ではさほどダメージを与えられない。
では炸裂弾では?
そう考えたとき炸裂段の構造はわかる、しかしそれをどうやって作るのかという問題が発生した。
これを解決するのに実に2ヶ月近くかかっている。
結果はノルウェーの弾薬製造会社が簡単な製造法を講義していた文書をネットで発見しそれを元に製作することとなる。
ただし炸裂弾製作にあたりそれらの製作用器具の製作から取り掛かることになりものすごい時間をかけて製作にかろうじて成功する。
海兵隊時代訓練でパンパン撃っていたがそのかげで製作にこんなに手間隙かかるとは想像していなかった。
いや、今なら機械で製作するんだろうけどさ・・・。
最初に作ったのがM16A4と呼ばれる米軍で主に使われている自動小銃。
口径5.56mmで弾は5.56×45mmNATO弾と呼ばれるもの。
まぁ、大きさと形だけ合わせたものだが・・・。
テストをしてみたところまったく威力が足りなかった。
箱型弾装(大)で30発入るのだが【レッドチキン】相手に30発フルに撃ってまだHPが1/5程残っていた。
最後は蹴り2発でしとめたが・・・。
使用したのは『ポイントブレット』と呼ばれる種類の通常のライフル弾。
軍用で使われる『フルメタルジャケット強化弾』ならもっと少ない弾数で済ませられそうだがそれでも十数発は必要な気がする。
まぁ、現実でも心臓や脳にでも命中しない限り人間とはいえ一撃では死なないのだからそれよりはるかにタフな魔獣相手に数発で倒せるわけが無いのはわかるのだが・・・。
剣や拳より威力が劣る計算は正直ゲームとはいえ納得がいかん・・・。
弾を強化してもたいした効果が無い。
そうなると次に行き着くのは武器の大型化。
当初は重機関銃とでも思ったが正直弾代が馬鹿にならない。
そこで思いついたのが対物ライフル、ひと昔前は対戦車ライフルと呼ばれていたものだ。
今の戦車に対戦車ライフルは効果は無い。
しかし対戦車ライフルの弾は自重の重さにより命中精度が高くなる。
ましてや装甲車あたりが相手ならまだ役に立つ。
そんな理由で最近また対戦車ライフルを対物ライフルの名で採用する軍隊が増えている。
それでランがモデルにしたのは米軍で使われている『バレットM82A1』。
口径は12.7mm、弾は12.7×99mm NATO弾を主とし他に徹甲弾や焼夷弾や両方の特徴を備えた上に炸裂弾の効果もある『Raufoss Mk 211』がある。
再現予定の弾は12.7×99mm NATO弾と徹甲弾の予定。
他に徹甲弾に炸裂弾の効果を持たせた弾も研究する気だが今のところは作る予定無し。
2週間ほどかけ試作品を作りながら修正を行いつつなんとか完成。
試験では通常弾の12.7×99mm NATO弾の1発で【レッドチキン】を撃破。
気を良くしたランは徹甲弾(ゲーム仕様2型)もテストしこちらも好感触を得たランはそれをもってミルシャに移動していよいよテスト本番をすることに。
北門を出たところにいるという狼型のモンスター相手にテストすることに。
【対物ライフルM82-β】
両手装備:大型ライフル
攻+120 AGI+55 DEX+55
【12.7×99mm ポイントブレット弾II型】
攻+20
【12.7×99mmフルメタルジャケット強化弾III型】
攻+80
弾そのものにそれぞれ追加効果をつけられそうだが今回はそのままにした。
徹甲弾は芯にアダマンタイトで作り弾自体は黒鉄で作り上げたもの。
通常弾の約4倍ほどの破壊力を持つ。
その分高価です。(泣)
通常弾1発60G、徹甲弾1発630G。
うは、金食い虫の装備だな・・・。
とりあえず森の入れ口にある岩の上に陣取り森の中から出てくるモンスターを狙い撃つ事に。
迷彩服とインターセプターボディアーマーは気分だ。
まだ形作りの試作だけで防御力まったくなし。(笑)
一応【VKドレスII】と【ウルフナックルガード(改1)】と【ウルフブーツ(改1)】だけは装備。
武器は【アダマン製コンバットナイフ:ナックルタイプ】を2本腰の背に装備している。
“さて、逝ってみますか。”
ランさんや字間違えて無いかい?
二脚を展開しスコープを装着。
もっともスコープもせいぜい3倍程度しかないが無いよりまし。
森の入れ口まで距離500m弱というところ。
装填は半自動式のためある程度の連射は可能だが反動が大きいためまず慣れないとあたらない。
じっと森の入り口を見ていると狼型のモンスター発見。
【Lightning Wolf】
スコープの真ん中にターゲットを入れて・・・息を止め・・・Fire
マズルフラッシュが光る中初弾命中、引き続いて2発目発射。
しぶとくまだ生きている・・・3発目発射・・・
命中と同時にポリゴンが弾けて敵消滅・・・。
そんな感じで3時間計250発の各種弾を使った。
大抵は3~4発でしとめることが出来た。
種類は狼の【Lightning Wolf】・熊の【Raged Bear】・大羊の【Rave Sheep】とオーク種の【Armor Hi-Ork】・【Knight Hi-Ork】。
不思議とこちらの敵獣人のオークは単体行動していたので撃ってみた。
先に結論から言うと拳銃・小銃なら武器のひとつとして普段からもてるがあくまで牽制用といったところか。
一撃必殺というほどの威力が無いがある程度の威力があるために牽制としては使える。
大型銃(対物ライフル等)は威力が大きいけど普段は使い物にならない。
理由はその大きさ。
PT戦とかなら確実に邪魔になるし近接戦闘はまずできない。
対物ライフルの使用の仕方としてはモンスターの沸きポイントに張り付いての狩で使うか拠点防衛程度だろう。
特に拠点防衛みたいに動かないで腰をすえて攻撃できる場合には絶大な威力を発揮するだろう。
あと個人的な観点から言うと・・・大型銃はファンタジーゲームでは盛り上がりに欠ける。
なんか拠点に張り付いてバンバンバンと撃つだけだと盛り上がらないのな。
拳で殴ったりするときのこう・・なんというか心に沸き立つものが一切無い!
まぁ、威力だけは認める・・・。
なにしろ拳や剣で戦うと生きるか死ぬかのレベル差をけともしないで3~4発でしとめられるのだから。
ましてや弱点をピンポイントで狙えれば一発でしとめられる。
素材狩りには便利だろうがゲームとしては面白みにかけるのは確かだ。
そんな訳でせっかく作ってなんだがとりあえずはアイテムボックスの肥やしとしばらくなってもらおう。
近代兵器は数をそろえてなんぼ、威力があっても数が少ないと戦術の幅が狭まる。
そして近代兵器はロマンを奪う。
わかってはいたけど今回やってみてよ~く解った。
ただ狼や熊の毛皮はいいものだから狩用で使ってある程度素材集めはしてみようと思う。
自分の分ある程度確保して後の残りは全部ファンファンさん所に売ってしまおう。
今回は近代兵器をあきらめさせるために一度使わせてみました。
威力があっても大砲1つじゃ無理です。
そんなわけで拠点防御等にはある程度威力発揮してもファンタジーの世界には銃というのが以下に役立たずかを検証してみました。
それでも書いてて気がついたのですがある程度威力があると素材狩りには便利そうです。




